vol.219 ボーダーレス社会をめざしてvol.78

NPO法人オープンハウスCAN 理事長 伊藤佐代子

住まいと意思決定

障がいのある人はどのような所で暮らしているのでしょう。まず、入所施設と言われる所があります。20年ほど前に「障がいがある人もない人も、同じように地域で暮らす」という「ノーマライゼーション」の考え方が主流になり、入所施設が建てられなくなりました。
次に現在多く利用されているグループホーム。高校を卒業後、そのままグループホームへという流れはできてきているようです。都会では、シェアハウスもあります。あとは、自宅です。親御さんの年代により大きく動きが違ってきています。放課後デイサービスなど多くの公的サービスを使い慣れてきている親御さんたちは、スムーズにグループホームの利用を考えられます。 私の年代の親は、子どもとなかなか離れられずにいます。そんな中、親と障がいのある人が一緒に暮らせる施設というものがあるというのを紹介したいと思います。
因島にある高齢者・障害者地域生活総合支援センター「はばたき」です。他の地域でも障がいのある人と親とが一緒に支援を受けられる施設というものが少しはあるようです。しかし、なかなか全国的には広がっていかないようです。国の制度では、経営・運営が難しいのだろうと思います。昔は施設か自宅かの二者択一でしたが、今は多様化してきています。しかし、親御さんと一緒に暮らしていらっしゃる方は多いと思います。 障がいのある人が高齢になれば、当然、親はもっと高齢です。家族そのまま地域で支援という事が、これからは増えてくるだろうと思われます。先日そのような会議がありました。高齢者の支援者と障がい者の支援者との顔合わせがありました。家族支援となると当然の成り行きですが、初めての経験でした。親が介護保険を利用し、障がい者が障害福祉サービスを利用するというケースです。
障がい者に携わっている人が、高齢者支援のノウハウを知らないのと同様、高齢者を支援されている方は、障がい者についてほとんどご存知ないのが実情です。これからは何度も話し合いの場を持って理解を深めていくより仕方がないのかなと思います。果たして障がいのある人の事をどれだけ、高齢者支援の方々が理解していらっしゃるのか・・・?興味津々でした。
話し合っていくと障がい者が、よく分からないようでした。
① 経験したことは、理解できますが、経験していないことは、分からないのではないでしょうか。
② 選択肢は3つくらいまでで、ことばだけでは多分理解できないでしょう。
③ 「今後どうしていきたい?」という質問は、難しく、具体例がないと分からないと思います。
④ ゆっくり分かりやすいことばで話してほしい。など、本人を交えての会議では知っていて欲しいことを4つほど障害福祉サービス側からお話ししました。
「分かりませんか??どう話したらいいでしょう?」と困っていらっしゃる姿は印象的でした。本人主体と言っても、ご本人がどうしたいと言えない人がいるという現実に愕然としていらっしゃるようでした。
障害福祉サービス等の提供に係る意思決定支援ガイドラインというものがあります。
① 本人への支援は、自己決定の尊重に基づき行うこと。
② 職員等の価値観においては不合理と思われる決定でも、他者への権利を侵害しないのであれば、その選択を尊重するように努める姿勢が求められる。
③ 本人の自己決定や意思確認がどうしても困難な場合は、本人をよく知る関係者が集まって、様々な情報を把握し、根拠を明確にしながら意思及び選考を推定する。
高齢者支援の方と一緒に、できる限りご本人の意思を推定し、物事を進めていくことが大切になります。