廃棄される野菜たち
にらめっこ編集部でも過去に何度も足を運び、膨大な量のキャベツや小松菜、ほうれん草などを収穫させてもらったことがあります。車いっぱいに積んだそれらの野菜は、編集室に置きその場で公開。欲しい方にもらっていただきました。収穫しないとその野菜たちはどうなるのか?
「はい、トラクターで踏み潰し土に混ぜる」のだそうです。有機物として土に還るとは思いつつ、野菜たちの本望ではないだろう…。複雑な思いで事務所から一時間以上かかる畑に、何度通ったことか。こういう現状の裏には、農家さんの忸怩たる思いがある。大きくなりすぎたのは市場に出せない、のだそう。適度な大きさに育ったものを収穫して市場に出せばその畑の役割は終わる。だから、それ以降の野菜は、次の野菜を植え付けるのに邪魔なだけ。さっさと土に混ぜるか、何日かの猶予を残し、その間に欲しい人が好きに収穫する。そういう現実にびっくりすると同時になんとかならないものかと思っていました。
こども食堂や、独居の方など必要としているところへ配る。「世の中には不必要な命など一つもない」という吉田先生(菌ちゃん先生)の言葉に後押しされて、命を活かす方法を選んだボランティアの人たち。それでも限界はあります。そんな折に希望につながる記事を見つけたのでご紹介します。
廃棄野菜がクレヨンに!?紙に!? TOPCONより
いま、廃棄野菜へ温かな目が注がれています。これまで農作物の世界では、取引や出荷の簡素化、流通の合理化によって定められた規格に適さない野菜が、「規格外」というレッテルを貼られ捨てられていました。いわゆる「食品ロス」です。 食品の廃棄は、「もったいない」だけではなく、捨てて燃やすことにより地球環境への負荷が増大します。そのため、日本では法整備され、SDGsへの取り組みとしても廃棄削減が強化されている最中です。つまり、不当な廃棄はNGへ。そこで、新たな付加価値を持たせる流れが盛んになりました。野菜を全く別のジャンルへと製品化させるのもその一つ。なんと、クレヨンや紙、洋服の染料へアップグレードさせる「アップサイクル」という方法が注目を集め、ヒット商品が続々と誕生しています。
隠れ食品ロス問題が2021年に浮上
食品ロスとは、「本来食べられるのに捨てられてしまう食べ物」のこと。売れ残り、規格外品、返品、食べ残し…。実は、ここには、出荷前に畑で廃棄される農作物は含
まれていません。畑で規格外と確認できる、曲がったキュウリ、丸くないトマト、先が分かれたニンジンやダイコンなどの変形野菜は、SNS映えはしますが、市場では廃棄されるとわかっているので、産地で処分。ダメージを受けている野菜も、同じく処分。また、豊作の場合も、価格を維持するための生産調整として産地で処分。これらは「畑の食品ロス」とも「隠れ食品ロス」とも呼ばれており、現状が見えにくくなっていました。
モノづくりにも廃棄野菜を活用
代表的なモノといえば、「おやさいクレヨン」(mizuiro株式会社)。廃棄された野菜(果物も)をパウダー状にして配合し作られています。それぞれのクレヨンには、色の名前ではなく、「きゃべつ」「ねぎ」「ごぼう」「ながいも」「とうもろこし」「雪にんじん」等と材料名の表記。
越前和紙の老舗工房「五十嵐製紙」が手掛ける「Food paper」も野菜のアップサイクルです。和紙職人の息子による5年間もの夏休みの自由研究『食べ物から紙を作る研究』がヒントとなり、地元の福井県で廃棄される野菜や果物を使用して紙類などが作られています。使用する野菜は、ニンジン、玉ネギ、ジャガイモがメイン。その他、オクラ、パプリカ、ショウガ、ナス等、収穫できる季節に合わせても製品化。
環境負荷が最も深刻とされるファッション業界でも、新しい価値が生まれています。野菜を中心とする廃棄食品に含まれる成分から染料を抽出し、素材や商品を提供するプロジェクトブランド「FOOD TEXTILE」(豊島株式会社)が名だたる企業をサポートしています。化学染料ではなく、野菜等による天然染料90%を使用したTシャツ、ネクタイ、シューズ、ハンカチといった洋服や雑貨に驚きを隠せない消費者が続出しています。トレーサビリティを徹底し、タグから読み取れる商品の背景や生産の過程を大切にしていることも大きな試み。持続可能を目指す社会では、ファッション業界でさえ取り組みが問われることを、このブランドは教えてくれています。
そもそも規格外野菜とは? なるほどSDGSより
市場で決められた大きさや形、品質、色の「規格」から外れてしまった野菜のことで、規格に合わない野菜や、傷がついた品質の良くない野菜は規格外野菜となるのです。
これらの規格外野菜は、商品として出荷はされません。カット野菜や加工品として商品になることもありますが、ほとんどが廃棄されているのが現状です。規格外野菜として廃棄される量は、生産された野菜量の約30%〜40%にものぼります。
では、なぜ規格が存在するのでしょう
規格を設ける主な理由としては、取引と流通を効率化するため。トラックで野菜を運搬する際、野菜はダンボールに詰められます。しかし、形がバラバラだとたくさんダンボールに効率よく野菜を詰めることが出来なくなります。
また、レストランなどの飲食店から野菜の形やサイズを指定されることも。それは、形の良い「きれいな野菜」を買いたいという日本の消費者の意識も関係しているでしょう。しかも、規格に合わせるように、必要以上に農薬が使われているのです。
食品ロスを減らす!私たちにできること
エシカル消費に徹すること。その取り組み例からできることを考えます。エシカル消費とは「人や地球環境、社会、地域に配慮した消費行動」のこと。このとき、・価格・品質・安全性・倫理性の4つのポイントで、「人、地球環境、社会、地域」に優しいものを選びます。