vol.217 ボーダーレス社会をめざしてvol.76


NPO法人オープンハウスCAN 理事長 伊藤佐代子

きょうだい児

以前にも「きょうだい」について書いてきましたが、今回はきょうだいの側からの言葉で衝撃を受けましたので書いてみようと思います。
障がい者のきょうだいのためのオンラインの会Sibkoto(しぶこと)(https://sibkoto.org/)の運営をしている白井俊行さんが「全国手をつなぐ育成会連合会」が発行している「手をつなぐ」という本の「ひびき」に書かれている内容です。
『弟の私にいやがらせをする兄(障がいがある)が大嫌いでした。母は、兄を溺愛していました。親は産む、育てる意思があって「なる」ものですが、きょうだいは何の意思もなく「なる」ものです。それで「家族だから」という言葉に一生縛られます。それを当たり前とする価値観がなくなれば、きょうだいがより自分らしく生きられるようになるのではないでしょうか』と。
きょうだいは苦しんでいます。物心ついたころから、家の中には普通の家庭とはちょっと違ったきょうだいがいます。何事もその障がいのある人が中心になって回っています。旅行、遊び事すべてその障がいのある人ができるか否かで決まります。我慢ばかり強いられます。障がいのあるきょうだいを見守らなくてはいけません。いじめられていたら助けなくてはいけません。親には障がいのあるきょうだいの事でいじめられたことなど言わないで我慢します。親が悲しむことが分かっているからです。娘がそうでした。中学3年生の時に初めてそのような話を部活の先生からお聞きました。M子がお兄ちゃんの事で号泣していましたよと。家では一言も言わなかったので何も知りませんでした。知らないこととして今もそのままにしていますが、我慢していたのでしょうね。健気です。 あと、手のかからない自分の事はいつも後回しにされるなどなどいっぱいあります。普通のきょうだいでも同じようなことはあると思うのですが、障がい者がきょうだいにいる家庭では、上記のようなことは頻繁にあると考えられます。「しぶこと」の白井さんのように、親御さんが、障がいのある人を溺愛するのは考えものです。愛情は50:50が理想です。どうしても手を離せない障がいのある子に比重が行くのはやむを得ないのですが、そこでしっかりフォローが必要だと思います。親と障がいのない子と向き合う時間をしっかり意図的に取ることは、かなり重要です。 二人きりでいられる時間を短時間でいいので取ることは、何よりも、何よりも大切です。お母さんと手を繋ぎたかったけれど、お兄ちゃんがいたから繋げなかったとフッと漏らす言葉を聞き逃さないことです。普通のきょうだいにも言えることなのでしょうが、「愛情はどの子にも平等に」が基本でしょう。
大人になると結婚・出産に関しても悩みはつきません。きょうだいに障がい者がいるだけで、結婚話が破談になったという話は聞いたことがあります。どのように結婚相手に話すかも悩ましいところだと思います。娘の場合は幸いにも何事もなく結婚できたのでよかったのですが。出産に関しては、私自身が遺伝はないものだろうか?と不安でいっぱいでした。娘に「出生前診断受けるの?」と聞いたことがあります。すると「受けて、もし障がいがあると分かったら堕ろせってこと?」と言われてしまいました。「受けるわけないやん」と軽くいなされてしまいました。娘は、私が思う以上にたくましかったです。そのように何度も何度もきょうだいには試練があります。きょうだいが生きやすい環境を整えること。大きな課題です。





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