vol.217 土壌には菌ちゃんがいる!


微生物って素晴らしい!!!
微生物は地球を救う
微生物の活躍なしでは我々の生活は成り立ちません。パンや味噌、醤油、酢製造などの食品分野や食材を作るための畑の土壌微生物、さらに、医療分野では、抗生物質生産菌、現在では、バイオマス燃料などにいたるまで微生物の恩恵を受けていることを解説します。
土の中の微生物には、人間にとって特に有用なものもいます。通常、微生物は生物の死骸や枯葉などを好んで分解するのですが、中にはダイオキシンやPCB、残留農薬など、人間が合成した有害化合物を分解する変り者もいます。このような微生物は、化学物質で汚染した土壌を修復するための、バイオレメディエーション(bio=生物,remediation=修復)と呼ばれる環境浄化技術に利用されています。
自然界にはこうした分解されにくい化学物質をも分解してくれるような微生物が存在します。 そのような微生物、「分解菌」をうまく利用して汚染された環境を修復することを「バイオレメディエーション」といいます。

バイオレメディエーションの仕組みは2つ
1つ目は、土壌中の微生物を元気にする薬剤を汚染土壌に投入し、微生物を活性化させる仕組み。2つ目は外部で培養した元気な微生物を土壌に送り込む仕組み。どちらも、微生物の働きを利用して汚染物質を分解しています。

特徴とメリット
バイオレメディエーションの特徴は、他の浄化手法に比べコストパフォーマンスに優れ、生態系に与える影響が少ない技術であること。メリットは以下の通り。
・広範囲におよぶ汚染の浄化が可能・原位置で作業できる(※)ため作業コストが低い。
・常温、常圧のためエネルギーをあまり必要としない。
・浄化に伴う環境負荷が少ない
※ 汚染された土壌を掘り返したり、地下水をくみ上げたりせずに、その場で浄化作業ができる。

食品や医薬品、エネルギーにも有効なバイオ技術
日本では昔から、味噌や醤油、日本酒や漬物などの身近な食べ物で、微生物を利用した発酵醸造の技術が伝承されてきました。このように微生物は、食品の保存性を高めたりおいしさを増したり、食生活を豊かなものにしています。それだけではなく、抗生物質や薬品、バイオマスエタノールなどの新たなエネルギーの生産など、さまざまな分野で、微生物を有効利用するバイオ技術の研究が進められています。

微生物の分解者としての役割
微生物は、地球の生態系にとって大変重要な働きを担っています。中でも「分解者」としての役割は、地球環境の維持にとって最も重要な事柄の一つ。
生物の排泄物や遺骸などは、しばらくすると、その場からきれいに無くなってしまいます。例えば、植物や動物が死んだ場合、それらの遺骸は虫や菌類、細菌などによって処理され最終的には土に還ります。具体的には、死んだ生物の遺骸は、それを摂取した他の生物体の構成成分や二酸化炭素、水、土壌中の諸物質になります。このように、生物の遺骸や老廃物を栄養源として生きる生物のことを「分解者」と呼びます。分解者には、ミミズや昆虫など、肉眼で確認できる大きさの生物の他に、目に見えない微生物が含まれています。これらの働きで、有機物が最終的には二酸化炭素と無機物に変換され、生態系が保たれています。小型動物が大まかに分解したものを最終的に微生物が分解します。
また、微生物は我々多細胞生物よりも遥かに分解できる物質の種類が多いのが特徴です。人間の科学力ではとても分解できないような物質があったとしても、その物質を地球に住んでいるある微生物がいとも簡単に分解してしまう、というようなケースが非常に多くあります。この理由として、「地球上には様々な種類の微生物が存在しており、それぞれが様々な物質の分解能力を持っている」こと、「微生物は他の生物に比べ、新たな化学反応経路の獲得が大変得意であること」などが考えられます。

「永遠に残る」化学物質
ナノテクと微生物で分解を目指す
ここ数カ月で、複数の企業が食品パッケージから「永遠の化学物質(Forever Chemicals)」を排除する計画を発表しました。永遠の化学物質とは、人体に蓄積するおそれがあり、環境中で分解されない物質のこと。

希望のもてる最新研究
PFASをめぐる懸念のひとつは、人体や環境中にいつまでもとどまる点にあります。「永遠の化学物質」は、時とともに蓄積するおそれがあり、取り除くのは難しい。PFASを含む食品パッケージは堆肥化できず、ごみ埋め立て地を汚染します。そうしたPFAS分解をめぐる問題を解決する方法を研究しているのが、ピッツバーグ大学とニューヨーク州立大学バッファロー校の研究者たち。
この研究で焦点になっているのが、ナノテクノロジーと微生物を用いたPFASの分解だ。ナノマテリアルとPFASを反応させれば、微生物が食べられるくらいの大きさまでPFASを断片化できるかもしれない。研究の目標は、環境からPFASを除去する効率的な処理プロセスを開発することにあります。
この研究で調べられているPFASは15種類だけですが、そこから得られる知見は、さらに幅広い用途に応用できる可能性があるのだそう。研究チームは、PFASの分解の仕組み、副生成物の毒性、化学物質を消費する微生物のパフォーマンスを検証する計画です。

参考:農業環境技術研究所、Academic Presentation、JAPAN Forbes