vol.216 教えてぴーふぁす先生

PFASとは何か。汚染の現状と課題

フッ素って虫歯予防?とよく聞かれますがそれは無機のフッ素で適切に使えば害はないです。
PFASは、人間が作った“フッ素をたくさん持っている有機物”です。フッ素をたくさんつけると熱や光に強く壊れにくくなることがわかってきました。
PFASは1940年代に3M社によって開発されましたが2000年5月、同社はPFOA/PFOS生産を2002年までとし自主的廃止を発表。しかし、PFASの性質である環境残留性により各地で深刻な地下水や土壌汚染が継続しており健康影響が懸念されています。4700種類もある中で、特に注目されている2物質PFOSとPFOA、この二つが各務原市の水質検査で国が定める基準50ナノグラムを超えていましたね。

身の回りにあるたくさんのPFAS用途
私たちの身の回りには撥水撥油コーティング剤としてゴアテックス、テフロン、撥水スプレーなどが使われています。泡消火剤として使用されるのは飛行場、立体駐車場とかいろんな工場。意外かもしれませんが、アリ誘引殺虫剤の有効成分にも使用されています。なじみのあるテフロン(フッ素樹脂)はフライパンを作る工程でPFASを使っています。
化粧品も水をはじくものとか、崩れにくいとか、そういった性質のものが気になります。一部ですがPFASを使っています。ラベルを見るとなんか小さい字でいっぱい書かれています。その中で、…フルオロ…と書かれているもの、それがおそらくPFASです。ポリフルオロリン酸エステル(PAPs)は、化粧品・日焼け止めはじめ、ハンバーガーやポテトフライなどの包装紙などに広く使用されています。ファーストフード店も2025年くらいまでには使用をやめ、別のものに切り替えると言っ
ている。企業側もだんだんPFASを使わないほうがいいだろうという動きが出てきています。
それに加えPFOA/PFOSは野生生物や我々の体に残りやすい性質を持っています。将来的に健康への影響があるのか、今後、しっかり見極める必要があります。

PFAS濃度が高いと影響は確実に出る
我々がPFASを口にするとなかなか体から出ていかず血液に結構残ります。血液を調べると我々が普段摂取しているPFASの濃度がわかるので、血液検査は重要です。データを見るとPFASを作るのをやめて身の回りからなくなっていけば、確かに減っていくことが明らかになっています。
実験動物を使って、調べます。血液の脂質(コレステロールとか、中性脂肪など)こう言ったものが、出てくる。もちろんある一定の量を与えた場合です。動物でそういう結果が出るなら人はどうなのか。脂質異常症、血液中のコレステロールが高いと病気の確率が上がる。甲状腺疾患、喉にある小さい組織なんですが、ホルモンとかを分泌するところです。そこの病気の確率が上がる。
健康被害というと、濃度がやや高い水を飲んだら、体の調子が悪くなって何かの病気になりますとか、病気になる確率が上がりますとか、そういう意味じゃないんですね。リスクは確率です。一人ひとりに対して確実にこうなりますということではなく、血液中の濃度が高い人の中で、そういった病気の人の割合が多いということが今までの研究で分かっています。発がん性と言われていますが、腎臓がんの割合が高くなる。精巣がんの確率も高いです。

泡消火剤とPFAS汚染
 国内の事例で話していきますと、PFASが使われ始めたのが1960年代。この消火剤は必ずしも事故の時に使うだけじゃなくて、日常の消火訓練にも使うし、いざ使う時になって消火剤が作動しないと困るので、定期的にテストします。一度出した消火剤を回収することはできないので、外に流れた状態となる。使った後にそれが土壌にしみこむとそれが土壌の汚染になります。
土壌が汚染されるとどうなるか。工場があるとか、その周辺が汚染されているというイメージがありますが、重金属だったら、あまり汚染されません。なぜかというと、土壌の成分と結合するから、土壌の上から下まで沈み込まない。一方で程よく水に溶け込む性質のものは、この土壌を突き抜けて地下水の層に混ざってしまい、井戸水・水道水の汚染につながります。PFASは分解しにくく、水に溶けやすい性質があるので、土壌の中をゆっくりと進んでいく。いわゆる帯水層、という地下水の層まで入っていくと流れに乗ってさらに周辺に広がっていくわけです。

各務原市の水道水
各務原市で水道水でいくつか水源地でピーファスが見つかった。三井水源地で1Lあたり77ng。一番近い鍋島水源地は26ng。西市場が9ng。三井水源地から離れていくと濃度が下がっている。そして岐阜基地に近いほど濃度が高い。各務原市の発表では国の暫定基準を超えてない所の濃度がいくらだったかわからないので、ハッキリはしないですが、そういった情報も出していけば、本当にこの基地から離れていけばいくほど濃度は薄くなっていく…そういった関係が本来は見えてくるはずです。この地域だと東の方が高く西の方が低い。水は高い所から低い所へ流れますから東から西に向かって流れていってるわけですね。PFASというのは地下の中を動いていると考えることができると思います。

では、どうすればいいのか
対策は?まず発生源を止めないといけない。今後の調査が必要であり重要です。発生源自体を抑えないといつまでも地下水にPFASというのは残ってしまい、除去を続けないといけないという状況になります。除去する方法としては、単純でも活性炭が導入しやすい。浄水器は値段が高いものを必ずしも買う必要はありません。活性炭でも、先程言ったようにPFOSやPFOAは大体8割から9割は除去できます。ここで何が大事かというと、活性炭を定期的に交換することなんです。活性炭はだんだん吸着が落ちていくので一定期間でちゃんと交換しないといけない。それから日用品のPFASはできれば避ける。これはちゃんと意識することです。また、長期的な視点でこれからの対応が重要です。値が低下した状態が続いているかどうかという継続調査は、行政の対応としては必要ですね。

今後とまとめ
2020年 日本に基準は50ng/L。 これはすごく評価できることでした。しかしそのあと欧米諸国がもっと厳しくしようという動きが出て、日本の数字が逆に今高くなっています。(米国環境保護庁の新しい勧告値 2023年3月全国水道基準(法的規制)案は4ng/L(PQL)です。
 水も大事なんですけど、水以外にも、土壌も汚染されます。そうすると食品とかにも部分的に汚染が広がる可能性もあります。私たちにできることは、、まず「そういう製品を選ばない、できるなら避ける」というような流れ、雰囲気を作るということが、企業にとっても取り組みを進めるきっかけになるんじゃないかと思っております。

 

 

Q:日本では科学的知見がないので飲み続けてもいいとのこと。先生のお考えは?
A:摂取量が高い人と低い人という比較の中で研究がされていないのが問題。そういった中で、人への影響というのはありうると。そういうリスクを未然に防止するために目標値を決めて、それを超えないようにしましょうというのをやっているわけ。その中でヨーロッパやアメリカでは目標をどんどん下げてきた流れがあります。ストックホルム条約は、基本的に分解しにくくて、人体とか生物にたまりやすいようなものをまずは優先的に禁止していくとしています。

Q:私以前登山をしておりまして、登山靴、レインウエアを撥水効果のあるゴアテックスを使っておりました。それらを身につけた時、体への影響はあるのでしょうか?
A:衣服に含まれている場合、接触するのは肌。問題になっているものは主に口から入ると体の中に吸収されますが、皮膚からは通過しにくいので、ご安心していただいていいと思います。

Q:アメリカとかヨーロッパ他の地区でもやっぱり活性炭での除去法が一番多いのですか?
A:使い捨てで、その分安く済むので、多くの場合は活性炭が使われます。浄水場だと他の有機物とかも除去しないといけないので、活性炭が処理施設に入っている事が多い。特に川の水を使う場合は、ほとんどは活性炭処理を導入している。もともと地下水はきれいと思われているのでわざわざ活性炭を通さないのですけど、今回各務原市で活性炭を選んだのはとりあえず導入しやすいという背景があると思います。今三井山浄水場の地下水中の濃度が、1リットルあたり70ナノグラム。おそらくこの濃度だと完全に溶けている状態で移動していると考えられています。

Q:測定をするときに資格とか認証とか必要でしょうか?それから、測定をする装置というものはかなり大掛かりなものなのか、実際の数値が実測値なのか、理論値なのかお聞かせください。
A:PFASは環境汚染物質なので、いわゆる病院とかでやる検査、コレステロールとかいろんなものをやる検査とはちょっと扱いが違います。なので、臨床検査場、衛生検査場とかそういった認証とかは必要ありません。多く使われている分析装置は、一台安くても2,000万、高いものだと5,000万するようなものを使っています。民間でやっている検査ですと、水を測るだけでも2万円か3万円くらいかかるでしょう。実際のPFOSとかPFOAとかの濃度がわかっているものに対して量を決めているので、これは全部実測値になっています。

(文責・にらめっこ)