体内水は、絶えず体内を駆け巡り循環している
私たちの体の約6割は水分であり、筋肉は約80%、皮膚は約70%、骨でさえ約30%が水分です。この水分は、主に口から食物や飲料として体内に入り、胃腸で吸収され、血管に入って血液として全身を流れ、体の各部位に分配されます。このように体内に分配された水分を“体内水”といいます。
体内水のうち、その3分の2は、細胞の中に存在する細胞内液です。残りの3分の1は、血液の中、リンパ管の中、組織の隙間などに取り込まれ、体のさまざまな働きを助けます。
全ての体内水は、特定の場所に留まっているわけではなく、各部位から常に移動して、絶えず体内を駆け巡りながら循環しています。
毎日、3リットルの水分が入っている
1日に体を出入りする水の量は、約2,000~2,800ml。私たちは、毎日これだけの水を摂取し、同じ量を排出しています。
水が体に入る経路は、飲料水から1日1,000~1,500ml、また食べ物に含まれる水分が約800~900ml、代謝(体内で脂肪などが分解され、エネルギーに変わる)時に作られる水分が約300 mlです。
体内水が体から出ていく経路は4つ。最も多いのが尿で、1日に体内水の約半分にあたる1,000~1,500mlが排出されます。次に多く排出されるのは汗で、約600 ml。また吐く息からも体内水は排出されており、1日の呼吸の回数は約2~3万回で、その排出量はコップ2杯分の約400 ml。そして、便にも体内水が含まれ、これが約100~200mlです。
水が体内に入り出ていくまでの循環が、私たちの健康を支えており、体内水がスムーズに循環し、水分の代謝がきちんと行われていれば、臓器の新陳代謝も正常になり、また不要な老廃物も排泄されるので、体は健康を保つことができます。
体の不調の主な原因は、水分不足
しかし、この体内水の循環がうまくいかなくなると、血液やリンパの流れが滞ったり、体温の調整や細胞に含まれる水分量などが乱れ、私たちの体はたちまち不調をきたしてしまいます。体の不調の多くは、体内水の循環バランスが崩れることから起きます。その原因は主に2つあります。
1つは、水分不足です。
水分の補給が十分でないため、脱水症状を起こしてしまうのです。脱水症状には、激しい運動で大量に汗をかいた後などに起こる急性脱水症と、生活習慣によって起こる慢性脱水症があります。
例えば、高齢者は加齢により筋肉が落ちるため、若い頃よりも筋肉に蓄えておける水分量が少なくなり、新陳代謝も腎臓の機能も低下するので、老廃物を排出するのにより多くの水分が必要になります。また、喉の渇きも以前より感じなくなってくるため、意識的に水分を摂る必要があります。
もう一つの原因は、体内水の“滞り”
体内水の循環バランスが崩れるもう1つの原因は、滞りです。これは、水のめぐりが悪くなり、老廃物がスムーズに排出されていない状態をいいます。体内水が滞っている場所ではむくみが起こり、不調が現れます。
例えば、筋肉がむくむと体がだるくなったり、手足がこわばったり、肩凝りや腰痛が発生することもあります。水不足も滞りも、放っておくとドンドン悪化し、長期に渡る不調や、深刻な病気を引き起こす可能性があります。ですので、そうなる前に、早めにその兆候に気付いて、体内水のバランスを整える必要があるのです。体に入った水分=体内水は体内を循環し、日々入れ替わっていること、また体内水の正常な循環により、体は健康を保つことができるということです。
そこで気になる水道水
クイズ 世界で水道水をそのまま飲める
国は何カ国?
①11カ国 ②51カ国 ③101カ国 Q1 答え ①
日本のほとんどの水道水は、そのまま飲むことができる世界でも類まれな国です。緒外国では、そのままでは飲めない「硬水」が多いようです。硬水は、マグネシウムやカルシウムを多く含んでおり、料理に使えば、タンパク質を硬くし、料理に影響します。(硬度:ミネラルの中で含有量が多いカルシウム、マグネシウムの量を示し、硬度の低い水は癖がなく、高いと好き嫌いが大きく分かれる。マグネシウムが多いと苦い。ミネラル分を酸化カルシウムに換算して、水1立方メートル中に10グラム含むときを1度とする。硬度20以上を硬水、10以下を軟水という。お茶や料理には軟水が適しているとのこと)
橋本 淳司 水ジャーナリスト 朝日新聞 2023年9月2日
水道水飲む?映す価値観
飲み水についての感覚は、人によってかなり異なります。
水道の普及率は1959年には約26%でした。飲み水は井戸水から水道水へ。災害による断水を経験した地域などでは、水を大切にする感覚が強い傾向がある。生きてきた時代や場所により、価値観は変わります。
日本の河川は、70から80年代には工業化の影響などで汚れていました。下水道も普及しておらず、水道水が臭いと言われました。しかし下水道の普及などで水質が向上し、90年代以降は味が回復していきました。
ただ、依然として水道水に不信感がある人がいたり、便利だったりで、ペットボトル水の需要は増加傾向です。ミネラルウォーターの生産・輸入量は40年間で約50倍になりました。
駅などに置かれている冷水機が減ったのも、ペットボトルの普及が一因でしょう。コロナ禍では、感染防止を理由に利用停止された冷水機も。
味とは別に安全性の問題もあります。これまでも寄生虫の検出や原発事故など安全性が脅かされるような事態がありましたが、最近は有機フッ素化合物(総称PFAS)の検出が問題になっています。高濃度で検出された地域では、家庭で浄水器を設置したり議会で議論されたりしています。
どのように水を飲むかは各自の価値観に基づく選択ですが、飲んでいる水がどこからやってきているかはぜひ意識してほしいと思います。ペットボトルにつめる地下水はくみすぎると枯れる場合もあり、メーカーには水源保全の活動やその公表が求められる。消費者にも「飲む責任」があります。