vol.215 ボーダーレス社会をめざしてvol.74

NPO法人オープンハウスCAN 理事長 伊藤佐代子

違う世界

6月に大阪にいる娘の所に行きました。娘婿が出張で5日間いないので助けてほしいと。娘は小学校の先生をしていて、大忙しのようでした。子どもが3人いて、2歳の子がまだまだ手がかかります。コロナが収まったようなので2年ぶりに、電車を使い出かけました。
大阪はやはり人が多いです。都会は違うなと再確認しました。娘の家に着いてからは、食事の用意・子どもたちの宿題を見る・習字を一緒にする・トランプやカードで遊ぶなど普段できないことをたくさんしてきました。子どもたちを相手にしていると少々若返ったような気がします。3人の子どもは、我が家の障がいのある息子とは違い、手がかかりません。泣いてもすぐ元に戻ってくれます。小学6年生ともなると大人です。何の手もかかりません。可愛いばかりです。障がいのある人は、ひとつこじれたらなかなか元には戻れません。本当にこだわりがないって楽だなと思います。障がいのある子どもがいない生活ってこういうものなんだなとつくづく感心してしまいました。
こんな平和な生活をしている人が、世の中のほとんどなのかなとその時は考えてしまいました。(実際は、貧困家庭が多くなってきていて大変な世の中になっているようですが。)そしてこのような生活をしている人に、障がいがある人を理解してほしいと訴えても無理なんじゃないかなとも思ってしまいました。娘は道徳の本を見せてくれて、障がいのある人の事も勉強するよと言ってくれましたが、身近に障がいのある人がいない場合、そのような人の事を子どもたちは想像できるのでしょうか?私はどうしたら、障がいを理解してもらえるのか?考えてしまいました。息子からの何度も繰り返されるメール・電話で、あ~我が家には障がい者がいたのだったと我に返る5日間でもありました。
人が10人いれば10人が違った生活をしています。娘たちの生活が普通であるとすれば、それとは、かけ離れた生活をしてきました。全く違う世界で私は生きてきたのだなと、フッと思いました。きっと価値観も何かにつけての基準も違うのだと思います。娘が中学を卒業した時、すごく嬉しかったのを思い出します。義務教育が終え、まずは親としてすることはした。後は好きに生きてちょうだいと思いました。高校で少し不登校になりかけた時も、学校を辞めればいいんじゃないと言いました。ハードルが滅茶苦茶低いのです。精神を患うくらいなら学歴なんか関係ないと思ってしまいます。
まず楽しく生きることが一番です。生きていかなくちゃいけないのです。学歴なんか無縁の所で生きている障がいのある人たちを見てきている私には、誰もが、今そこにいるということが一番なのです。人と比べてみても仕方ないことは明白です。自分は自分。好きなことがあればそれで 。障がいがあっても息子のように好きなことがある人は、とても幸せそうです。障がいのある人と接していると、人としての原点に時々戻れます。これは幸せなことだったのかもしれません。
娘が「言われた事をすぐやらない」と6年生の を叱っているのを見ても、そのうちやるのにと内心思い、助け舟を出します。「何でそんなことで叱るの。ちっともいう事をきかなくても私は 君の事、大好きやわ」と言うと は照れて「孫は可愛いいって言うからな」と満面の笑みです。「味方が一人いて良かったね」と娘も笑うしかなく、場は和やかになりました。ひょっとしたらハードルが低いのって、皆が笑顔になれるのかもしれません。





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