vol.215 やってみた 小栗 秀子さん

やってみたシリーズ第18弾 木版画
イメージが湧いてくる、その瞬間が好き!
小栗 秀子さん(70代)

小学校の時、授業で木版画があって、江ノ島(行ったこともないのに)をなんかで見て、それを題材に版画を作ったんです。それが校内に張り出されて…がきっかけかな?とにかく図画工作の授業が面白くて、その時間がもう楽しくって。それと中学の時、美術の先生に褒められたのも大きかったかなぁ。そんな記憶が社会人になってから呼び覚まされたって感じかな。
働き始めた会社では山岳部に所属しましたが、そこにいたTさんに、「美術部もあるよ」と誘われて両方に所属。スケッチ旅行とかしてました。
退社後、街で偶然Tさんに出会って、近況報告。 岩田覚太郎先生(風景や動植物を、自然な親しみ易い画風で表現した木版画家・1902-1999)の弟子であるTさんと、覚太郎先生が主宰されていた淡虹会の版画展を観に行きました。それを見たら自分もやりたい!と思ったんです。それからTさんのところに通って木版画を始めたら、版画の持つ世界観に魅了されてしまいました。

木版画
まずデザインを考えます。題材はふと思いつくことがほとんど。彫るのが一番大変で、まさに体力勝負です。版木に版分け(色分け)して彫るんですが、イメージを常に思い浮かべて彫り分けないといけなくて頭がくらっとしてくるの。でも面白い!この作業はほんと脳トレになりますね。
木版画の工程で「彫り」はいつでも休憩できるけど、「刷り」は途中でやめられません。絵の具を多めに作ってそれを使い切らないとね。途中で足らなくなって絵の具を足すと色が変わっちゃうし。後からもう一枚刷りたいと思っても、それはできないの。もちろんバレンで刷るんだけど、見当合わせに苦労するし、面積が広いと大変。だから1枚か2枚くらいしか刷れないんです。
江戸木版画は、「絵師」「彫師」「摺師」と分業ですが、私は一人でやるしかない。まず、イメージ画を書いて、どういう版画にしようか下絵を描きます。一旦分解して色分けを考えながら彫る。版別に着色して刷る。がんばって刷って2〜3枚かな。最初から最後まで一人でやらないといけないから、やっぱしんどいね。しんどいけど楽しい。
油絵をやっていた時より大変だけど楽しいですね。何が楽しいかって?だんだんと積み重ねていくところかな。それと油絵は描いたら終わり。でも1点もので世界に一枚しかない。だけど、修正は可能。一方版画は何枚も刷れるイメージがあるけど、私の場合は2〜3枚が限界。それでも、一枚一枚風合いが違うので、やっぱり1点ものといっていいのかもね。木版画は、体力と視力が必要だとつくづく思いますね。
3年前に「ワルツ」を町民展に出した時、観てくれた人から「色がいいね」と言われました。Tさんから色彩感覚を学んだことで色の使い方が変わってきた。初期の作品と色使いが全く違うことに、自分でも驚いています。

シルクスクリーン
この作品は「マーシーストリート」(ハービー・ハンコック)っていう曲を聴きながらイメージを膨らませてデザインした4色刷りです。シルクは木版に比べ刷りが楽ですね。配色を変えたり、紙を変えたりできるところも面白い。何枚も印刷できるから、クリスマスカードや年賀状を作っていました。このてんとう虫は私のお気に入りの一枚です。