vol.214 ボーダーレス社会をめざしてvol.73


NPO法人オープンハウスCAN 理事長 伊藤佐代子

障がいを知る

「交通事故にあったの?」「ばあばって、ガンもして交通事故にもあって、大変やなぁ」と孫が言った言葉に笑ってしまいました。
確かに大変でした。11年前に胃がんになり、4年前に車にはねられました。ちょうど今頃です。その頃の気持ちを忘れないように記録を残しておきました。今は気持ちの整理ができているので、書いてみようと思います。
『自転車に乗っていた私は、乗用車にはねられた。足が動かない。救急車を呼んでもらい、病院に運ばれた。レントゲン検査では、骨に異常はないとのこと。簡単な手当で、自宅に帰ることになった。帰りは車いすに乗らないと動けない。両足が動かない。家に帰り、寝て動かしてみても、両足とも動かない。腰が痛く、動けない。右にも左にも動かせない。一晩過ぎて、朝起きるのにも15分以上かかったが、動けた。しかし、腰が痛くて、起き上がれない。腕の力を使い、起きてみると足は動いたが、一人では立てない。何かにつかまってだったら、動ける。足が動いたことに感謝する。キャスター付きの椅子を杖替わりにする。椅子がないと動けない。左の腰を強く打ったため、整形外科で左膝に電気を流す電気治療をしたためか、痛みが少なくなった。しかし、右足は、特に悪くないだろうということで、そのままにしておいたら筋肉が収縮してしまい、股関節に激痛が走り始めた。約3週間歩けなく、右足の筋肉は衰えていった。お医者さんに右足も電気治療をしてほしいとお願いすると3日ほどで激痛はなくなった。が、筋肉の収縮はすさまじいのと、筋肉の衰えで足が動かなくなっていた。理学療法士さんにつき、筋トレを始める。両足とも衰えていたため、膝がぐらぐらする。毎日スクワットなどをし、鍛えなおす。日にち薬で徐々に歩けるようになる。足元に落としたものが拾えない。階段が上がれない。身体障がいの人の辛さが分かった。また、車に乗せてもらうのも、自由ではない。遠慮しつつ、運転手に気を遣う。なんて自由がないのかと思う。きっと知的障がいの方もこんな思いをしているのだろうと思う。遠慮しつつどこかに出かけるより、自転車、歩きで自由にと思うのも分からなくない。今回の事故は、まだまだ修行が足らない私への試練だったようだ。弱者の気持ちが十分わかり、人の優しさが分かったのは間違いない。』と綴られていました。
自分の行きたい所へ行けない。なんて辛いことなのでしょう。一度、どうしても本が読みたくて、本屋に行きたいのに行けないことがありました。自分の思いは封印せざるを得ない。諦めるしかありませんでした。 こんな生活は、ひょっとしたら障がいのある人は、日常茶飯事なのかもしれないです。支援者が、嫌だと拒否したら、障がいのある人は自分の意思があってもその通りにはならないのではないでしょうか。自分自身が、障がいのある本人になって初めて分かりました。もちろん頭の中では、今まで十分、分かっているつもりでしたが違っていました。本当の辛い気持ちを、体で、感覚で知りました。人の気持ちは、想像はできますが、本当に想像していることが合っているかどうかは全く分かりません。
今では、痛みはもちろんありますが、歩けるようになりました。自分の体は、自分で治すという体操に巡り合ってからは、毎日15分程度の体操と    のトリセツショーという番組で紹介されていた「血管のばし」を朝晩10分やることで健康な体を取り戻しつつあります。限りある人生、健康が一番です。