Kさん:自分や家族の言動が気になる時、何科の病院に行けばいいんでしょう?
田辺:脳神経内科というところに行くのが一番いいと思います。近くになければ、物忘れ外来というのが、いろんな病院に作られていて、脳のいろんな検査をしてくれます。はっきりと脳や脳の血管の萎縮が画像にみられるまでは診断がつかないかもしれない。でもその時にMRIを撮ったなら、後でどこの病院で診てもらっても比較はできるのでMRIのデータは保存しておいた方がいいです。
Mさん:認知症は遺伝や生活習慣、食べ物などと関係ありますか?
田辺:食事の影響や様々な要因が組み合わさって現在のその人の状態なのですから、それをしたから良いとかは言い切れないです。ただ、運動するとか、外に出て行くとか、そういうのはすごく大事なので、家に閉じこもりがちな人はデイサービスなどに行くと良いのかな。
私は今、認知症予防ゲームをやっているんですけど、そこで見ていると予防ゲームに参加する人の方がしない人より認知症の進み具合がゆるやかになる、と私もスタッフも実感しています。でも、ゲームに来ていても、家族との関係などは家庭によって違います。周りの人の対応も大きいです。特に、「あんた駄目だね」「できてないよ!」って出来ない事ばっかり言われるとだんだん萎縮して、転がるように落ちてどんどん悪くなります。本人ができることを見つけて「これやってほしいわ」と言うとやれることも多いんです。周りの人は心配のあまり本人ができることを先回りしてとりあげずに、できる事を増やすように関わってもらいたいです。
Tさん:それは認知症に関係なく人間関係ですね。
田辺:要は関係作りをいかにしていくか、っていうのが一番大事なところだと思いますね。それしかないと思います。
Mさん:認知症から鬱になったり、精神障害になったりすることもありますか?
田辺:動きが悪くなったり沈みがちになったとか、その辺も病院で見てもらわれると良いでしょうね。認知症によって鬱になるということもあるし、反対に、鬱だと思っていた、人格が変わってしまって精神障害かなと思っていたのが実は認知症だったということもあります。その辺も病院で脳の検査をしてもらうとわかります。
Hさん:最近私、物忘れが多いんですけど、加齢によって、みんな脳が萎縮していくんですか?
田辺:そうです。でも、先日ラジオで聞いたのですが、「海馬の萎縮からくるアルツハイマー型認知症は、物忘れではなくて、記憶の玄関である海馬そのものが扉を閉ざしている状態」だそうです。新しく情報が入ってこないからいろんなことがやれないようです。何度言ってもできない、と周りは思うかもしれないけど、言われたことが理解できないという事のようです。昔できていたことは残っているでしょうね。
Mさん:私たちは今はまだ認知症になっていないと思うので、今のうちに自分ができることを増やしておいたほうがいいよね。そういうことならできるね!
1.アルツハイマー型認知症
脳の中にアミロイドβなど「脳のごみ」と呼ばれる不要なたんぱく質が溜まり、それによって、神経細胞が変性し、死滅。そのうち脳の海馬や頭頂葉などが萎縮して、認知症の症状が出てくる。認知症のなかで最も多くみられるタイプで、症状は物忘れなどの「記憶障害」から始まり、自分のいる場所や時間などがわからなくなる「見当識障害」、物盗られ妄想、徘徊などの一般的にイメージされる認知症の症状が出現する。
2.血管性認知症
脳梗塞や脳卒中、くも膜下出血など、脳の疾患が原因で発症。脳の認知機能を司る部分(前頭葉、頭頂葉、側頭葉、後頭葉、海馬など)などで血管が詰まり、十分に酸素や栄養を送れなくなることで細胞が死滅。主な症状は、「記憶障害」や「判断力障害」など。一日のうちでも症状に波があり、認知機能はまだらに低下していく。さらに、感情のコントロールが効かなくなり、すぐに泣きだしたり、怒りだしたりする「感情失禁」も多くのケースでみられる特徴。
3.レビー小体型認知症
レビー小体とは、脳の神経細胞にできる特殊なたんぱく質のこと。レビー小体がたくさん集まる場所では神経細胞が破壊され、命令がうまく伝達されなくなる。後頭葉と呼ばれる視覚を司る部位にレビー小体が集中して発症すると幻視の症状が出る。みんなの「家の中に知らない人がいる」「服の中に虫がたくさん入ってきた」など、現実にはないことを言い出すようなことがあれば、レビー小体型認知症を疑うことも必要。
4.前頭側頭型認知症(FTD)
脳の約4割を占める前頭葉と側頭葉が萎縮し、血液の流れが滞ることで発症するのが前頭側頭型認知症。初期段階では、認知症の一般的な症状である物忘れよりも、性格の変化や異常行動が目立つ。人格の変化や異常行動が現れるため、精神疾患と間違われることも。また、罪悪感がなくなることから、万引きや痴漢を起こしてしまうケースがみられる場合もあるので要注意。 みんなの介護 より抜粋