Color of Soil
大地のエネルギーを感じながら
ことばにできないイメージを絵画に
オーストラリアに移り住んで10年。アート活動の傍ら、畑で作物を育て、雨水を循環し生活に使用するなど、できる限り自給自足に近い生活をしてきた。その暮らしぶりを本誌でも「未来に続く暮らしの学び」で約8年間リポートしてもらった人でもある。
「絵画の制作がメインですが、トリオのパフォーマンスチームの1員として、劇場、シアター、イベントなどで1時間ほどのビジュアルアートの展開もしています。音とダンサーの動きに合わせ、わたしがオーバーヘッドプロジェクターでライブペインティングのように抽象的な絵を描いて、独特な世界観を作り上げていくパフォーマンスです。だんだん需要も広がり、こちらのウエイトも大きくなってきました」。
3年ぶりに帰国し、友人たちの縁で各地で個展を開催した。オーストラリアで描いた作品は、地元の土とか石を採取するところから始まる。それを砕いて色粉にし、テンペラ(乳化剤)とメディウム(希釈剤)を混ぜて天然絵の具を作る。まず遊ぶ感じでレイヤー(背景)を作って、そこから見えて来る世界を油絵の具で描きこんでいく。
今回は『土』という要素から出てきた世界を描く、と言うテーマで展示をした。油絵の具の色数を抑え、アースピグメント(顔料・色粉)も土から取れる物を使用。
「『Color of Soil』というのが展示のタイトルです。オーストラリアの土地のエネルギーとか土の色を感じてほしい。芸術って人間本位のものだけど、実は自然からいただいたもので作画できるということに気づいたことは大きかったです」。
日本での個展は徳島、愛知、静岡、岐阜、兵庫の5箇所。各会場では展示とワークショップをセットにした。絵の具の作り方を見せると、「あ、絵の具ってこうやってつくれるんだ」って関心度が一段とアップしたそう。観覧者からは「オーストラリアの風を感じる」、「動いてる感じ」、「あ、魂が入ってるね」、「エネルギー的に動いてる感じがする」といった感想がとても嬉しかったという。天然絵の具というキーワードが観る人を惹きつけたのだろう。自身の描いた絵が色々な人と繋がらせてもらえたことに感謝しかないという。中でも京丹波に工房を構える陶芸家との出会いは衝撃だったそう。ストレートな問いかけにドギマギしたことは、今後の自身の生き方に大きなインパクトがあったという。
「その方は、土から釉薬に至るまで地場にこだわり作陶されています。変わらないスタンスというか、その方の覚悟に感銘を受けました。自分にその覚悟があるのか、本当にどきっとしました。私も自然界から採れる色を使ってもっと描けるようになりたい。そして作陶や草木染めを手がけている方たちともつながって、絵の具の可能性を探りたいと思っています。いろんなジャンルの制作者同士が繋がって、それぞれの良さを生かした作品作りができると面白いだろうな。今後、アートの世界はそういうコラボ制作が広がっていく気がするんです。そうすることで世界観が広がっていくだろうし、感謝も生まれそう。土集めてくれてありがとうございます!興味あったんですよ、みたいなね。」
天然の色をもっと知りたい。作陶に使う土も、草木染めの植物も可能性に満ちている。染料を顔料にして、顔料が色粉になるにはどうしたらいいのか日々模索中というYAOさん。
「科学的な物を使いたくないわけじゃないけど、自然の中にはどれだけの色があるんだろうって考えるだけでもワクワクします。」と笑顔で語ってくれた。
(各務原市出身 オーストラリア バイロンベイ在住)