vol.210 人生これから!やってみたシリーズ第13弾


“ぼやき川柳”に大賞2回の快挙

高井 浩さん(60代)

川柳を始めて丸3年。その間、採用が6回。そして大賞が2回。
毎回の応募点数は多い時で2,000作品くらいあるというから、もう「やってみた」の域を超えている。

「バンドの仲間5人で始めました。妹にも勧めたんだけど、半年でやめてしまった。始める時って、すぐ採用され読まれる気になるんでしょう。自分では「これは傑作だ」と思うんだろうけど、なかなか読まれないと、やる気が出ないのか、今も続けているのは僕一人です。やっぱりラジオで採用(詠まれる)されるとやる気になるし、大賞はすごく励みになりますね。」

川柳は俳句とは違い季語はない。いつもお題があって、日常のちょっとしたシーンを5・7・5に乗せる感じ。川柳のどんなところが魅力なのか?
「年に一度新聞に載るサラリーマン川柳が有名ですよ。サラリーマンの悲哀とか、嫌なことでも「はい」と言わないかんとかね。クスッと笑える。わかるわかる、みたいなね。あれが理想で、いちばんの目標です。」

大賞をもらった時のお題は「欲」でした。生前葬の話を聞いてひらめいて、イメージしたらこういう句になった。
・ 香典を生前葬で取り戻す 採用 大賞
コロナでお葬式がなくなりつつある。できなくなったというか、身内だけでやる家族葬とかに移行しています。でも香典だけは相当包んでるよなぁ。葬式がなくなったら多分出費の方が多いんじゃないかって思ってできた句だという。
寸評は:生前葬、流行っているんでしょうか。最近はお葬式も様変わりしているようですけど、“取り戻す”の意気込みが凄い。
「シャレを入れて絶対いけると思ったのがボツだった。こんな句です。<お題「魚嫌い」帰省中食べてしまったアニサキス>。どんなのが採用されるか本当にわからない。似たような作品がいっぱいあるから、その中で印象に残るということですかね。短い言葉の中に、ありありと情景が浮かぶような句っていうのはいいんじゃないかな。でも、毎回なぜか自信がないのばっかりが採用されたり大賞になったりするんだよね。まぁとりあえず出しとけ、みたいなやつが良かったり。それがほとんど採用されてる。不思議なところだわ」と屈託なく笑う。

ぼやき川柳は<関西発ラジオ深夜便>の人気コーナー。大賞受賞句を選者:大西泰世さんの寸評と合わせて放送される。
「月に3回あるこの放送は金曜日の夜、11時15分から。しかも生放送なんですよ。僕はすぐ寝てしまうんでアーカイブで聴いてます。採用は放送を聞かないとわからないんです。「応募した人はみんな聞いていると思うよ。最初県名から読み上げるんで、岐阜県、っていうとドキッとする。」大賞は通知が来る。そして「ラジオ深夜便」(毎月一日発行)に掲載される。

 

今回のお題は「太る」。日常のちょっとしたこととか、お題に対していつも考えているという高井さん。
パソコンに思いついた句を書き出し、並べてみて、言い回しを変えてみたり試行錯誤している。嘘はかけない、架空も書かない、そんな暗黙のルールの元、毎日の暮らしが川柳のネタになっているそうだ。

俳句と川柳の違い。
俳句には季語が必要だが、川柳に季語は必要ない。 俳句には「や」「かな」「けり」などの切れ字が必要だが、川柳に切れ字は必要ない。俳句は主に文語表現を用い、川柳は主に口語表現が用いられる。