正常性バイアスの「バイアス」は偏見、先入観といった意味です。つまり正常性バイアスとは、多少の異常事態が起こっても、それを正常の範囲内としてとらえ、心を平静に保とうとする働きのことです。この働きは、人間が日々の生活を送るなかで生じるさまざまな変化や新しい出来事に、心が過剰に反応し、疲弊しないために必要な働きです。しかし、この働きの度が過ぎてしまうと、本当に危険な場合、例えばイラストのように、警報装置が鳴っているといった非常事態の際にも、それを異常と認識せず、避難などの対応が遅れてしまうといったことになりかねません。
実際、避難が必要となった人びとや避難を誘導・先導すべき人たちに正常性バイアスが働いたため、被害が拡大した災害は多い、と指摘する専門家もいます。日頃から災害時にはどう対応すべきかを考え、異常が発生した場合には楽観視せず、冷静に行動することが大切なようです。
「これくらいなら大丈夫」
正常性バイアス
上の質問で回答(1)は「非常ベル」=「点検」という過去の先入観から自分にとって危険な状況と認識できない正常性バイアスが働いています。また、(3)は「非常ベル」=「火事」=「煙が見える」という固定観念から、火事以外の危険の可能性があることを認識しない正常性バイアスが働いています。正常性バイアスは、異常なことが起こった時に「大したことじゃない」と落ち着こうとする心の安定機能のようなもの。日常生活では、不安や心配を減らす役割があります。しかし、緊急事態では逃げ遅れなど、危険に巻き込まれる原因にもなります。
「皆と一緒だから大丈夫」
同調性バイアス
上記の回答(2)は非常ベルが鳴って危機的状況が知らされているにもかかわらず、周囲の人の行動に合わせる同調性バイアスが働いています。同調性バイアスは、集団の中にいるとついつい他人と同じ行動をとってしまう心理で、日常生活では協調性につながります。しかし、災害時には周囲の人の様子をうかがっているうちに避難が遅れる原因にもなります。その反対に周囲に率先して避難する人がいれば、より多くの人を避難に導くことも可能です。
災害時に働くこの2つの心理を知っておくことが、逃げ遅れを防ぎます。
揃えておきたい基本の防災グッズ
実際に防災グッズを揃える場合、どんな物を購入すれば良いのでしょうか?防災グッズは、非常時・避難時など、それぞれのシーン別に用意しなくてはなりません。シーンごとに揃えておきたい基本防災グッズを紹介します。
(1)非常時のために備蓄しておきたい物
避難所ではなく、自宅で過ごす場合には、持ち出す必要が無いため比較的多くの物が備蓄可能です。最低限、以下の物を人数分、日頃から揃えておきましょう。
・1人当たり3リットルの飲料水 ・食料 ・カセットコンロやボンベなどの調理用品・ホイッスル・懐中電灯・携帯ラジオ・携帯電話と予備のバッテリー・生活用水・トイレットペーパーやティッシュなどの紙類・ゴミ袋・救急セット・防寒具とレインコート・タオル
(2)避難時の持ち出しで用意しておきたい物
避難時の持ち出しは、食料や生活品などを家族の人数分のリュックに分けて、スムーズに持ち出せるようにしておきましょう。持ち出しで用意しておきたい物は以下のとおりです。
・1人当たり1.5Lの飲料水・缶詰や菓子類などの食品・食品用ラップと簡易食器・ヘルメット・軍手・運動靴・懐中電灯・多機能ナイフ・常備薬や持病薬・救急セット・簡易トイレセット・ティッシュペーパーやトイレットペーパーなどの紙類・マッチまたはライター・敷物・レジャーシート・防寒具とレインコート・タオル・着替え
(3)貴重品もまとめておきたい
避難するとき探しまわる必要が無いよう、保険証やパスポートなどの「身分証明書」と「通帳」などは、コピーをとって保管場所にまとめておきましょう。また、現金・印鑑・車や家の予備の鍵・生命保険契約書・母子手帳などの貴重品も、一緒に保管しておくと安心です。防災グッズをそろえることも重要ですが、実際に災害が起きたときの行動についてもシミュレーションしておくことが大切です。 参考:日本赤十字社