vol.206 しょうがいをみつめる vol.17

『This is me』

「The Greatest Showman」という2018年公開のミュージカル映画の劇中歌でもあるこの曲は、私にとってのパワーソング(聴くと元気がもらえる曲)の一つです。
実話に基づくこの映画は、一言で言うとP・T・バーナムという男の波瀾万丈サクセスストーリーといったところでしょうか。

貧しいながらも頑張って働いて、良家の娘チャリティーと結婚したバーナムは幸せな結婚生活を送っていました。しかし、ある日会社が倒産、解雇されてしまいます。家族を養うために思いついたのが、ユニークな人達を集めたショーの興行。やってきたのは、小人症や多毛症、黒人やアルビノのような、その特異な見た目から、人目を避けて暮らしてきた人達でした。
こういった人達を見せ物にするというのは、今の感覚からするとどうなのかという気もしますが、時代は19世紀。家族からでさえ忌み嫌われて、世間から遠ざけられてきた彼らにとって、バーナムの考えたショーは、自分をありのままに受け入れてくれる、認めてくれる家(居場所)となったのでした。
ショーは大盛況となりますが、街では興行に対する抗議運動が起こり、世間からはペテン師扱い。オペラ歌手のジェニーと組むことで、ようやく世間から評価を受けることができました。
その後のパーティでのこと。バーナムを訪ねてやってきたショーのキャストを、彼はなんと追い返したのです。せっかく掴みかけた名声を手放したくないがために。世間体を気にする余りに。
これまで受け入れられている、認めてくれていると思っていたバーナムの裏切りとも言えるその場面で、この『This is me』は歌われたのです。
自分達の居場所を見つけた彼らは、こんなにも強く生まれ変わったのです。
バーナムはその後も、ショーやキャストをないがしろにしていきますが、全てを失う一歩手前で大切なことに気付き、愛と絆を取り戻すことができました。

人は他人と違うことを恐れる生き物です。自分だけだったらどうしよう、他の人から変に思われたらどうしようと。ものすごく不安に駆られることがあるように思います。
そんなときにこの曲は、自分は自分なのだと信じ切る勇気を与えてくれます。

最後に。『This is me』のビハインドストーリーがYouTubeで見られます。この曲を歌うキーラ・セトル(劇中で多毛症の女性を演じる)が、自身のコンプレックスを見事跳ね除けて高らかに歌うその姿に、誰もが心を打たれるでしょう。ぜひ、一度ご覧ください。    S.I