vol.203 ボーダーレス社会をめざして vol.62

NPO法人オープンハウスCAN 理事長 伊藤佐代子

情報弱者

 コロナウィルスのワクチン接種で分かったことがあります。情報弱者が生き辛い社会であるという事です。
 ワクチン接種は、ネット・電話予約でするという方針が出されました。高齢者の中には、自分からネットや電話で予約できない人がいるかもしれないのに、平然とそれを押しすすめていった社会。電話で予約ができず、右往左往する高齢者をほかっておき、出来る人が優先される社会。予約できない高齢者が集団接種会場に行っても相手にされず予約もできない。しかし、しばらく時間が立つと、それではいけないと思う人が現れ、いろいろな所で接種予約のサポートがされるようになりました。また、小さな町では、日時指定という高齢者に優しい対応がされたようです。
 では、障がい者のワクチン接種の予約は、どうだったかと言いますと自治体で大きな差がでました。私の知っている4つの自治体が、知的障がいのある人に関しては、自己申請をする必要がありました。ある利用者さんが、接種券が自宅に届いたので、かかりつけ医にそれを持っていき、予約をしようとしました。お医者さんは、「打てないよ」の一言で後のフォローなし。支援に入っている私は、どういうことなんだろうと、その自治体に電話をし確認をしました。「ホームページにある申請書をメールで送ってもらうか、窓口まで来て下さい。送ってもらえたら翌日から接種できるようになります。」と。知的障がいのある人にホームページを見るようにとは?出来る人も中にはおられるかもしれませんが、とても難しい事です。知的障がいの人は、基礎疾患のある人のくくりに入っており、広報で出たのを頼りに申請をしなくてはいけなかったのです。多くの人は広報を細かくは見ていなくて、障がいのある人に周知されない状態でした。知的障がいのある人が広報を詳しく読めるでしょうか??
 基礎疾患のある人のたくさんの項目の中で一番最後に知的障害(療育手帳を所持している場合)と書いてあるのが分かるでしょうか?私自身、これって知的障がいの人が該当するの?と頭を抱えるような表現でした。
 しかし、私が住んでいる自治体と高山市はそうではありませんでした。療育手帳を持っている人に、何の申請もなしで接種券を送って下さったのです。障がいのある人の事をよく理解されていました。情報弱者と言われる高齢者や障がいのある人のことを決して置き去りにしてはいけないのです。
 今回の事から、情報弱者と呼ばれる人の周りの人が、彼らに分かりやすい情報を伝える、できれば積極的にその人達の手助けをするということが必要なのだと痛感しました。