vol.201 続・ぎむきょールーム

「お手伝い」から「家事労働」までの道のりとヒント!

就学前後 生活のごちゃごちゃ感に「待つ」を混ぜる
       山下桂子(保育士)

 「いっしょに暮らす」ってどういうことなのかを生まれたての子どもたちは、肌感覚・におい・見る・聞く・話すなどといったことから吸収していきます。それもすごい勢いで。なんてたって、世のほとんどが「珍しい!」「これって、なに?」の連続なのです。

「完成」を目指さない
 大人たちの手仕事の料理、洗濯、掃除、赤ちゃんの世話、おじいちゃん、おばあちゃんのせわ、など限りがありません。この限りない家族の営みが自分たちのなかで成り立っていて、ごちゃごちゃ感に溢れていることが「お手伝いをする」ということのベースにないと、表面上だけのことになってしまうと思います。ハートが動く・・・そこが先です。
 「うまくいかない」のは、「完成」を目指してしまうから。この年齢の子供たちの「やってみたい」を尊重して、「ニンジン一本丸ごと預けて、ピーラーで皮をむきすぎて小さくなっちゃっても、それを使って料理しよう」と思うくらいの心がまえのほうが大事だと思います。

保育園園長:自然豊かな環境で、「みんないっしょにくらそうよ」をモットーに子どもが主役の保育を実施。

10歳前後 ここが分かれ目?
       岡崎 勝(小学校教員)

性差についての語り方       

男性の家事を頼りにできる日常があれば
母親にしてもらうことに慣れてしまうと・・・

 10歳の頃の子どもたちはある部分については家事への興味関心は高いので、いっしょにおかし作りなどをすることにはやりたい気持ちを持っています。大人と同じことができるという喜びだったり、親といっしょに過ごす時間が楽しかったりします。
 男性が家事労働を忌諱し、妻など女性にそれを「してもらう」ことに慣れてしまうと、あきらかに自立から遠ざかります。母親依存、妻依存という男子・男性にいいことはなにもありません。
 「お父さんが家事をしている日常」があれば、そのなかで育った男の子は、家事が好きかどうかは別ですが、「家事は家族誰であっても、やって当たり前」ということが理解できます。
 お父さんがいなくても、家族の協働性はとても大事です。「とても嬉しい」とか「大きくなったから助かる」と頼りにしていることをきちんと伝えるべきでしょう。イクメンなどという言葉が一人歩きしていますが、男が家事をやるのは普通の時代なのです。

<お・は>編集人/小学校教員

思春期前後 ここがこらえどき?
   山田 真(小児科医)

働ける環境をつくることから

 「昔の子どもはお手伝いをしていたのに、このごろの子どもはしない。お手伝いさせるべきだ」という人がいます。それで「お手伝い」が学校の宿題になったりします。宿題として出されると、お母さんが「何か手伝うことないかしらね」と探すことになります。親が手伝って欲しいと思っていないのに無理に手伝いをさせても、子どもが手伝った喜びを味わうこともないでしょうし、こんな手伝いに意味があるとも思えません。
 僕自身は田舎の開業医の一人っ子で、家族は三人でしたが、小学校の頃から食材の買い出しをしていました。このおかげで、ぼくは買い物が好きになりました。

子どもの仕事は勉強?

 子どもは労働などせず、勉強をしていればいい、子どもの仕事は勉強と考えられているのが、今のこの国の状況と思いますが、ぼくは少し違うと思います。
 中学生の年齢だったら、学校へ行きたくないとき、学校がつらくなったとき、働けるといいと思うのです。
 ですから、ぼくは「お手伝い」ではなく、子どもが対価がもらえるような「労働」をできるようにすることを提案しておきます。

やまだ・まこと:八王子診療所所長。「子供たちを放射能から守る全国小児科医ネットワーク」代表。

始めどきには「忍耐と時間」が必要
    内田 良子(心理カウンセラー)

親の笑顔がうれしくて

 以前は、乳幼児に向かって「〜をさせよう」と言う教育的発想をもつ大人はとても少なかったのです。けれど、今は就学前どころか、1〜2歳の頃から「小学校に入学して困らないように」「〜をさせよう」という親が多いことに驚きます。早期教育やしつけがあたりまえ、子どもの将来を考える親なら当然のこと、そんな風潮が主流になって疲労困憊する子どもたちのことが問題になっているにもかかわらず、その流れは強まる傾向にあります。
 就学前後のこの時期は、圧倒的に親の力が子どもに勝っていて、「〜をさせよう」と親が思えばたやすくでき、子どもは親の笑顔がうれしくてがんばってしまいます。ここで親や先生の意のままにならない子たちは、「発達障害」を疑われてしまうといったことすらあります。

多忙で両立は難しい

 もし、今の親子の時間を楽しみたい、家族の一員として暮らしをともにしたいと願うとしたら。お手伝いを「教育」や「しつけ」のように「させる」という発想はNGです。子どもは親のする家事をモデルにして「お手伝い」を始めます。
 ただし、そこには「忍耐を時間」が必要。遊び心で楽しむ子どもたちが、これならできると思うまでの時間。急かされることなく、試行錯誤で取り組む時間。親が自分の相手をしてくれる充実した空気が家の中に感じられる、その前提が必要です。さて、ここが現状では一番難しいところではないでしょうか。
就学前の「お手伝い」を習い事や親の多忙が邪魔をします。どう考えても両立は難しい。されどお手伝い。親の覚悟が必要なことになってしまっています。

うちだ・りょうこ:子ども相談室「モモの部屋」主宰。著書に『登園しぶり 登校しぶり』(小社刊)







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