vol.200 トンガからこんにちは! 最終回

生き方を考える

トンガはキリスト教の敬虔な国です。日曜日の礼拝だけでなく、トンガ人の日常生活、考え方、能力、全てにおいてキリスト教の影響を大きく受けているように思います。宣教師が到来したときに、何がそんなにトンガ人の心を捉えたのかは分からないし、今まで会ってきたヨーロッパ人のキリスト教徒とも違うように感じるけれど、トンガ人の生き方は、素敵だと思います。

お祈りの歌を歌う

 朝のミーティングの前や授業の前、宴会の前など、必ずお祈りと聖歌の合唱があります。みんな歌が上手で、誰でもすぐにハモることができます。 音楽の授業がなくても自然にハモる歌唱力を養っているのは聖歌だし、文字を持たなかったトンガ人に読み書きの文化ができたのは聖書を理解するためではないかと感じています。子供のうちから最低週に1回の聖歌を人前で大声で歌っていたら上手くならないはずはありません。私は、月曜日のミーティングのたびに同僚の合唱に(特に男性の歌声に)感動してこっそりウルウルしてました。日本に帰ってきた今、一番恋しい時間の一つかもしれません。
 何と、お葬式でも音楽が欠かせません。お葬式前夜からご遺体をお墓に入れるまで2グループの音楽隊が音楽を絶やさないように交代で奏で続けます。お葬式関連の他の違いは火葬か土葬か、お別れのご挨拶に線香をあげるかキスをするかくらいな気がしますが、徹夜の合奏は見ものです。

 何と、家族の死後、1年間の喪の期間中、毎日毎日黒い服と特別なタオバラ(パンダナスの繊維で編んだ腰巻。男性は日常から。女性は特別なときに。)を身につけます。タオバラやキエキエ(同じく腰に巻く女性用のアクセサリー)はトンガ人のお洒落アイテムでもあり制服でもありと言った感じですが、タオバラにも喪用があるんです。そんなこんなで、街や職場、黒い服を来た人を見ない日はありません。こうして伝統工芸を生活から切り離せない使い方をしているということが伝統を継続させるポイントなのかもしれません。他にも、ご遺体を包む「タパ」(植物の繊維から作った布(見た目は和紙))があるのですが、赤ちゃんが生まれたら包んであげ、セレモニーのときには伝統舞踊のタオルンガの衣装にしたり、マットとして使ったり、と用途は多種多様。伝統が昔の特別なものではなく、「日常」に根付いています。

喪服の人

 そんな一見古風なトンガ人と今まで出会ったキリスト教徒との根本的な違いは、何とも他人任せ、、、いえ、全てが神様任せ!なことでしょうか。病気や死に対してもに「神様の決めたことだからしょうがない、、、」と明るく開き直ります。死は神様の元に行くことを意味することで、特に嫌な感情がないと言うのも聞いたことはありますが、そういう感情を通り越した力の抜け方があります。

 「神様のせいではないよ!生活態度で健康は手に入るんだよ!」と思うと声を張り上げたい時は何回もありました。ただ、その「死や病気を受け入れる」姿勢は、人の生き方として良いなと思う面もあります。例えば、糖尿病が悪化したからと言って透析をすることはありません。日本で透析をしたら約10年は余分に生きられると言われていますが、トンガ人は10年間病院に通い続けるという選択がありません。もちろん、途上国なので医療設備の不備、国や個人の経済的理由(トンガは医療費無料です)はあります。それでもやはりキリスト教の影響を考えると透析も延命になるのかなというのが、日本人同士で考えた答えです。 10年間で環境や経済に与える影響を考えたり、日々のトンガ人の明るい態度を見ていると、健康になることに無関心でもトンガ人みたいに過ごす人生、悪くないなと思えます。何を持って「命の操作」とするかは人によって違うだろうけれど、個人的には過度な医療介入は、道徳、環境、経済的に色々疑問が湧きます。これくらい死に対してさっぱりしているのも、いいなと思うようになりました。

底抜けに明るいトンガの人たち

加藤美希(かとうみき)農的暮らしに落ち着きたいと思いつつ、ついつい旅人人生を送っている管理栄養士です。旅するうちに、「伝統料理と健康の秘 密」が人生の研究課題に。今回のミッションはトンガで蔓延する肥満や生活習慣病の改善。伝統料理の推進と学校菜園を通して、将来トンガの人々が世界に有す る健康大国になることを願って日々奮闘中です。





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