vol.200 熱中人 井上 愛さん

人•モノづくり•地域•つながる•広がる

愛知県豊山町にFLAM(フレーム・ 生活介護施設)を開設する
NPO法人motif理事長 井上 愛さん

 「まず最初に、この商品かわいい!って思ってもらって、調べてみたら、『あ、障害のある人が作り手だったんだ!』そんなふうにお客さんと作り手が自然な形でつながったらいいな」。
 福祉施設ではあるけれど、フレームは「モノづくり」が先にある。そうして生み出されたものをキチンと商品化し、社会に送り出していく。そんな生活介護施設「フレーム」での対象となるのは、18才以上の障害者手帳をもっている人。知的、身体、精神、発達、難病の支援区分3以上と、比較的重度とされる人たち。
 「生活介護事業というのは、就労とは違って、働いてもいいし働かなくてもいい。お話しに来るということでもいい。リハビリ的要素のある事業所もありますが、うちはモノづくりがまずあって、そこに障害のある人の手仕事を絡めていけたらいいな、と思っているんです」と井上さん。

思いがいっぱいの「FLAME」完成予想模型

 フレームに来られる人には、絵を描く人がいるかもしれない、染色、陶芸、刺繍などモノづくりをする人もいるだろう、などを想定してそれぞれスペースも設けた。
 「ギャラリースペースも用意しているので、地元の様々なジャンルの作家さんたちに展示や作品展などを開いていただこうと思っています。そして、あら、ここには障害のある人もいるの?では一緒にコラボレーションしようか、などと展開したり。そこに、思ってもいなかったような化学反応的な素敵なものが生まれたらいいな、と思っています」。
 地元作家だけではなく、障害の有無にかかわらずモノづくりが好きな人にも来てほしい。モノやアートを通して、多様な人たちと自然な形で関り、つながっていく空間にしていきたいという。さらに豊山町に住む障害のある人、若い人、学齢期の子を持つお母様たちに気軽に来ていただいて、相談できる場でもありたいという井上さんの強い思いがそこにある。
 そして、かねてより地場産業に興味があった井上さんは、尾州の毛織物などの地元の素材や技術、人、というのを大事につなげたいとも。ゆくゆくは有松絞りのような地元の産業、九州にある障害者施設で作られた木工など、各地の伝統産業や障害者施設ともつながって一つのブランドとして多くの人に手にとってもらえたら、と構想は広がる。

 障害のある人の生活を思った時に、選択肢が少ないと常々感じているという井上さん。本当はこんなこともできるよ、こういう物差しだってあるんだよという選択肢をたくさん用意したい。そんな思いから、モノづくりの好きな人が集える場所として生まれたフレームは、その中にたまたま福祉事業というサービスもやっている、そんな位置付けだ。
 「先を見通すのがすごく苦手という人も結構いて、障害の有無に限らず、いろいろなニーズにじっくり向き合いたいと思っているんです」。だからフレームは最初に人ありき。
 「始めに『こんなことをやります』ではなく、集まった人の思いをすくって、そこで私はなにが出来るか、集う人によって柔軟に対応できるようにしたい。一人ひとりの声を大事にしたいから。福祉に入ったきっかけがそんな思いなので。だから始めに来た人は得ですよ(笑)」
 人がモノやアートを目にしたとき、その作り手と背景に思いを馳せ、作り手とつながり共に広がってゆく…。そんな役割を果たしていくフレームは、今年6月に始動する。

NPO法人motifの事務所(名古屋市)に置かれた3Dプリンターで作られた自助具など。「障害のある人の、例えば『座る時にここがちょっと痛いんだよね』という声にみんなで『どうしたらいいんだろう』って考える。

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いのうえ あい
障害者入所施設勤務時代に手織りを趣味として始め、その後手織り教室を3年経営。NPO法人ひょうたんカフェを設立。手織りを仕事にするべくショップや作家、ブランドやメーカーなどに繋げる(ふりや)役割を担う。 2020年8月NPO法人motifを設立。2021年6月開設に向け愛知県豊山町にFLAMEを只今建設中。https://www.motif