vol.197 トンガからこんにちは! 連載-3

自給自足大国!トンガ王国

Mālō e lelei !! Fefe hake ?? Hau o kai !
(おーい!元気?ご飯食べにおいで!)

 トンガではこんな会話がいつでも飛び交っています。vahevahe(分け合う)文化のトンガでは、いつも誰かが食べ物を分け合ってくれます。トンガの国民は自分たちに何が必要か、どんな暮らしをしたいかを分かっているのか、心にも時間にもゆとりがあるようです。

田畑で作物を作った事がある人は、こんな言葉を聞いた事がある人も多いのでは!?トンガの人は、むしろ、自足しているけれど、自給が難しくなりつつあるように思います。
 私が帰国するときに言われた言葉。「美希、日本に帰る間に体力が下がらないようにしなさい。コロナもトンガより流行っているし、店で買い占めが起こっている国があるってニュースで見た。トンガでたくさん栄養のあるものを食べて、免疫を高めて帰りなさい。私たちのことは心配ないよ、トンガはすごく幸せな国だから。店が閉まっても、畑に行けば芋もバナナもあって、海に魚がある。日用品なんてどうにでもなる。雨がふれば石鹸がなくても汗は流せるし、トイレットペーパーがなくなれば、海に洗いに行けばいい。私たちは店に依存した生活をしていないから、何も困らない。」

 この国の豊かさを改めて感じずにはいられませんでした。実際、1月末に、コロナによる中国人の中傷被害が出ないように、島の理事が中国人経営のお店を全店一時閉店にしました。何のパニックが起こるわけでもなく、もちろん中傷被害も出ていなかったように思います。
 首都でさえ、3階建以上の建物はないし、信号は国で1台。車社会が問題になるほど、人の暮らしは近代化しつつあるのに、裸足で歩いている人もたくさんいます。みんな携帯は持っているけれど、離島の家の住所はまだない。そして、そんな国にみんな誇りを持っています。
 一家のお父さんが畑で家族分の主食(タロ芋、ヤム芋、キャッサバ、サツマイモなど)を育て、お母さんが民芸品を作って現金収入を得る生活が主流です。朝晩は子供も含めて家族で畑に行く姿もよく見かけてました。オフィスで働く人は本当に限られた人で、そんな人でも家族の畑があるから、仕事には遅れ気味。来ても休憩時間が多いし、暑ければ涼みに行って一日が終わる。残業ではなく、畑に行くためのフライング帰宅は日常茶飯事。働き者でもあるし、地べたに座って喋ったり、お昼寝したりしてて、怠け者なイメージもあります。ただ言えるのは、食べ物、食べる事をとても大切にしているということ。

 私のいたハーパイ諸島では、真夏の間、マーケットから野菜が消えます。理由は、暑い中、誰も作りたくないから。元々、トンガは野菜を食べる習慣が古くからあるわけではないので、野菜が食卓になくても大丈夫と言えば、大丈夫なんです。それでも、その中にはもう一つの大きなこだわりがありました。“農薬”です。「暑くなってから無農薬で作るのは大変。誰もやりたがらない。でも、農薬や化学肥料を使ってまで育てたくないし、そうゆう野菜は身体に悪いから、食べない方がいいでしょ?」と言われたことがあります。

 動物の育て方もあくまで、自然に、その辺を駆け回ってます。
(鶏が、あんなに高く飛んで木に登れるなんて知りませんでした。)今は、冷凍輸入肉が安く手に入るから、普段はそれで済ます人が多いものの、豚や鶏の餌はココナッツ、米、人の食べ残し、などなど人と同じものが基本です。人間より健康的に暮らしているかもしれません。特別な日は、そんな贅沢に育った動物を屠殺して、丸ごと料理します。それがまた、柔らかくて、美味しい!日本でベジタリアンを気取っていた私が嘘のような自分勝手具合でした。
 人間が食べる事が基本で、育てるのに何を使うか、使わないかに焦点を当てる日本人。動植物を自然に育てるのが基本で、育てるか、育てないかを選ぶトンガ人。

 面白いなぁ、何でこんなに違うんだろう!?そう思えるのは、体型だけではありませんでした。今日もきっと、Alu ki fē ??(どこ行くの?)と言う掛け声と、大きな笑い声が町中に響き渡っている事でしょう。


加藤美希(かとうみき)農的暮らしに落ち着きたいと思いつつ、ついつい旅人人生を送っている管理栄養士です。旅するうちに、「伝統料理と健康の秘密」が人生の研究課題に。今回のミッションはトンガで蔓延する肥満や生活習慣病の改善。伝統料理の推進と学校菜園を通して、将来トンガの人々が世界に有する健康大国になることを願って日々奮闘中。





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