vol.195 しょうがいをみつめる-6

初めまして。特別支援学校に勤め、障がいのあるたくさんの子ども達と接している中で感じたことや考えたこと、そして彼らから学ばせてもらったことなどをを綴っていきたいと思います。よろしくお願いします。

シンプルで、大切なこと

 私の働く特別支援学校には、居住地校交流といって支援学校に在籍するお子さんが、自分の住んでいる地域の小学校で同学年の子ども達と一緒に勉強するという取り組みがあります。
 ある日、私は重度の自閉症で、分からないことや嫌なことがあるとパニックを起こし、自分を叩いてしまうこと(自傷)もあるAさんの居住地校交流の引率をしました。授業の前に自己紹介をする時間がありました。自分で話ができないAさんの代わりに私は何を話したらいいだろうか、どうしたらAさんのことを子ども達に伝えられるだろうかと迷い、ならばと交流学級の子ども達から質問を受けることにしました。
すると、
 子ども 「Aさんの好きな食べ物は何ですか。」
 わたし 「パンとお肉が好きだよ。野菜は苦手だけど、給食は頑張って食べているよ。」
 子ども 「わあ、俺と一緒や!」
 子ども 「じゃあ、好きな勉強は何ですか。」
 わたし 「音楽が好きだよ。だから今日みんなと一緒に音楽ができるのをAさんも楽しみにしてるんじゃないかな。」
 子ども 「私も音楽好きが好きです。」 「私も〜」

 Aさんとの共通点を発見した子ども達は、担任の先生が制止するまでAさんのことを興味津々に尋ねました。そしてそのことをきっかけに、それまで何となく張り詰めていた空気が一瞬にしてほぐれたような感じがしました。
 いよいよ音楽の授業が始まりました。「Aさん、一緒にやろう。」と方々から声がかかり、「こっちだよ。」とあちこちから手を引かれるAさん。私は、その賑やかで少々強引な子ども達の様子にAさんが嫌がってしまわないかとヒヤヒヤしながら見ていましたが、Aさんはまんざらでもない様子。横目で友達の言動を伺いながら、終始穏やかな表情で音楽を聴いたり、一緒にゲームに参加したりすることができました。
 そして授業が終わると、子ども達はAさんを囲んで「一緒にできて楽しかった。」「Aさんまた来る?」などと次々と話しかけてくれました。

 私たち大人はどうしても自閉症児と健常児という分け方で子ども達を見てしまいがちです。どうしたらお互いに上手く関われるかなとあれこれ考えすぎてしまう傾向があるようにも思います。けれども子ども達にとって障がいの有無などは関係なく、ただ同い年の子の一人として接してくれました。好きなものが同じだという共通点を見つけ、楽しい時間をともに過ごしてくれました。さまざまな違いはあろうとも、『相手を知り、同じ時を過ごすことで仲良くなれる』、こんなシンプルで大切なことをAさんと交流学級の子ども達から教えてもらった出来事でした。S.I
 





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