vol.193 しょうがいをみつめる vol.4

特別支援教育

特別支援教育:2007年4月から学校教育法の一部改正によって、特殊教育から特別支援教育に変わり、すべての幼稚園・学校において、障害のある子どもの支援を充実していくことになりました。特殊教育との大きな違いは、理念として「障害のある幼児・児童・生徒への教育にとどまらず、障害の有無やその他の個々の違いを認識しつつ様々な人々が生き生きと活躍できる共生社会の形成の基礎となるもの」という共生社会の実現が加わったことです。

 今回は、公立小学校の特別支援学級に在籍がある子どもたちの例を紹介します。文中に出てくる交流学級とは、特別支援学級に在籍がある児童生徒が交流している通常学級のクラスのことです。

・小学1年生、情緒障害A君
 A君は、自分の身の回りのことができ、友だちと基本的なコミュニケーションがとれます。愛嬌があり人気者です。語彙が少なく、自分の気持ちを言葉で表現するのことが苦手なため、小さなすれ違いからトラブルになることがあります。
 A君は、国語、算数以外(生活、音楽、図工、体育、行事)は交流学級で学んでいます。
 特別支援学級で学ぶ時間には、国語や算数の基本的な学習をA君に合わせた進度や学習方法で、自主的に学ぶ力をつけていきます。また、交流学級で学んできた他の教科でのまとめや、理解できなかった部分の確認なども行います。
 交流学級で意欲的に学習に向かえるよう、特別支援学級で基本的な力を身に付けています。また、特別支援学級の少人数の中で基礎的なコミュニケーションスキルを獲得しています。

・小学5年生、知的障害B君
 B君は、体験的な学習から気づく力がありますが、それを文章や言葉でまとめることが不得意です。文章を読んだり書いたりするのには、時間がかかります。
 B君が交流で通常学級へ行くのは、理科、体育、英語、総合的な学習、行事です。学習内容により、教師が付き添います。
 理科の実験では、多くの気付きがあり、事象を捉える力がありますが、それをノートに書いたり、人に伝えることは苦手なため、付き添いの教師が書くことの手助けをすることで皆の前で堂々と発表することができます。教師の付き添いが必要かは、授業内容やB君の希望、他の子の授業内容とも相談しながら決めていきます。

 私が初めて特別支援教育に関わったのは、「特別支援教育」という言葉が学校教育法に位置付けられた平成19年でした。当時は、特別支援学級に在籍している児童生徒は、ほとんどの時間を特別支援学級で過ごし、交流へ行き通常学級で過ごすのは、特別な行事のある時間くらいでした。
 現在では、交流学級で学習する上での困難が軽減するために、特別支援学級で基礎・基本的な力を身につけると言えるくらい、交流学級(通常学級)で過ごす時間が増えています。(個人差や学校の取り組み方に違いはあります。)
 障害のある子とない子が共に学ぶインクルーシブ教育の実現に向けて、特別支援学級のあり方も形を変えていることを実感しています。一方で、障害のある子もない子も、その能力を最大限に生かすにはまだ課題があることも事実です。