vol.193 ちびっこルーム

鼻とのどの不快な症状 看病の基本はなに?

心配しなくてよいとき、我慢させてはいけないとき、受診する目安って…        耳鼻咽喉科医 水谷 淳子

鼻、つらそうに見えても

鼻がつまるということは、鼻汁が増えて粘膜がはれているということですから、これらを軽くすればいいのです。温度と湿度あたえると手当てがしやすくなるので、入浴後や、あたたかいおしぼりを当ててみてください。粘膜のはれがひいて、鼻汁の粘りも軽くなります。そうすると鼻汁を吸ってあげやすくなり、鼻もかみやすくなります。
 ところで、鼻づまりがあって苦しそうに見えても、当の本人はあまりつらくないことがよくあります。赤ちゃんの場合、おっぱいやミルクを休み休みでも飲めていれば気にすることはありません。  もう少し大きいこどもの場合でも、鼻づまりでズーズーしていても眠れていれば、あるいは本人が気にしていなければ、やっきになって鼻づまりを治そうとする必要はありません。急性副鼻腔炎になっても、二〜三週間で自然に治ることもけっこう多いです。
 ですから、受診する目安は、おっぱいやミルクが十分に飲めないとき、鼻づまりやのどに落ちてくる鼻汁のためにせきが出て、何度も目が覚めて眠れないときでしょうか。あまり起きないことですが、発熱や頭痛が続くとき、頬が痛み赤くはれているときなども受診してください。

からだを守るために必要なせき

 コンコン、ゼロゼロのせきもつらそうです。とくに夜、何度もせきが出て親子ともども眠れない夜が続くと、ほんとうに疲れます。だけど、せきというのは、からだを守るために必要があって出ているという面があり、せきをすることによって、のど、気管、気管支といった空気の通り道にある刺激物を追いだす役目を果たしているのです。

 刺激物というのは、乾いた冷たい空気、ほこり、気道の粘膜のはれ、そのために増えた分泌物である痰、のどへ流れてくる鼻汁などです。せきを強い薬で止めてしまうということは、からだにとってよくありません。重い病気でせきが出ない状態、弱いせきしか出せない状態の人が肺炎になりやすいことでも、せきが出ることがいかに大事かわかると思います。
 せきが出ていても元気に遊びまわっている、少しおとなしくしていればひどいせきは出ない、夜分せきで目が覚めることはあってもだいたいは眠れている。という場合は受診しなくてよいと思います。
 受診する目安は、せきが出て親子ともどもほとんど眠れない、だんだんせきがひどくなってくる、といったときでしょうか。でも最近は、せきがうるさいので医者に行くようにと、学校からいわれて受診するこどもがいるくらいですから、目安といっても確たるものではありません。
 ただし、我慢してはいけないときもあります。赤ちゃんや小さいこどもののどは内径がせまいし、やわらかく、分泌物も多いのです。いちばんせまい喉頭付近がはれると、息ができなくなることがあります。肩で息をしている、くちびるが紫色になっている、話もできない、声がくぐもっている、よだれも多くなっている、せきこんだあとにヒューとかゴーといった音が聞こえるなどのときは、夜中であっても救急に受診してください。

あ゛っ鼻血! どうやって止める?

こどもといっしょに覚えたいその原因と応急処置のしかた 小児科医 山田 真

 こどもは鼻血をよく出します。しょっちゅう鼻血が出るこどももいます。お母さんやお父さんのなかには「鼻血→白血病」というふうに想像をたくましくして不安になる人もいますが、ほとんどは心配のないものです。 
 20分以上も出つづけるようなときや、鼻血以外に歯ぐきからの出血があったときなどは血液の検査をしたほうがいいでしょうが、短時間の鼻血をくり返す場合は、検査の必要もありません。
鼻血が出たときの対処方法をお話ししておきましょう。
 まずこどもを座らせ、頭を前に傾けます。このとき、頭を仰向きにさせると、鼻血がのどのほうへ落ちて、吐き気が起きたりしますから、かならず頭は前に傾けることです。そして口呼吸をさせながら小鼻の部分をつまみ、十分後に指を離すと、たいていは止まっています。もしまだ出血が続いていたら耳鼻科へ行くことにしましょう。
 鼻をかんだり首のうしろを叩いたりするのはやめましょう。鼻を冷やすことも意味がないと思われます。
 また鼻へティッシュペーパーなどをつめることも意味がないようです。綿をつめるのは、奥のほうへ入りこんでとれなくなることもあり、有害ともいえます。とにかく鼻をつまみつづけていることで、たいていの鼻血は止まってしまうということです。

プロフィール 

みずたに・あつこ 埼玉県にて耳鼻咽喉科医院を開業                 やまだ・まこと 小児科医、八王子中央診療所所長。「子どもたちを放射能から守る全国小児科医ネットワーク」代表。ち・お編集委員。