vol.188 ボーダレス社会をめざして  vol.47

          NPO法人オープンハウスCAN 理事長 伊藤佐代子

障がい者のアートと権利
障がい者のアート活動を支援してくれる岐阜県障がい者芸術文化支援センター「tomoniアートサポートセンター」という所ができました。やっと岐阜にこのような施設ができました。平成30年6月には「障害者による文化芸術活動の推進に関する法律」(障害者文化芸術活動推進法)が成立しました。
基本理念として、(1)文化芸術活動の推進 (2)芸術性の高い作品の創造に対する支援強化(3)地域での作品発表の促進 を掲げています。また、障がい者が芸術を鑑賞する機会を増やすよう、音声や手話による説明を促進、障がい者が福祉施設や学校で芸術を創造するための環境整備も盛り込まれました。障がい者作品の所有権や著作権など権利に関する契約締結の指針を作成するように求めています。
この促進法がつくられた背景には、2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催により世界から注目されることが大きな要因になっているようです。これを機会に、障がい者作品の著作権について、施設などの意識改革が出来るといいのになと思います。
障がいのある人の絵や書は、一般にぞんざいに扱われています。20年くらい前は、欲しかったら持っていってという世界でした。私も淳司がデビューした頃は、皆さんに見てもらえるだけでいいと思っていました。そうではないのです。仮に、私が一生懸命制作した作品を「好きに持って行って」と言われたらどんな気分になるでしょう。障がいのある人が作った織物を一部だけ切り取って額に入れ、売るというやり方もされていました。また本人の了解なしで、絵の一部だけ切り取ってポスターにされたりもします。息子の絵をそのように扱われた時は抗議をしました。一枚の作品として出して欲しいと。立場を自分に置き換えて、嫌だと思うことはやってはいけないのです。そういう私も書道を始めた頃は、障がいのある人の作品に印を押すのを、私がやっていました。ある展覧会でそれはいけないと指摘を受け、すぐにご本人に押してもらうようにしました。すると、歪んで押す人、薄く押す人、書道をやっている人では考えられないような所に押す人が出てきました。しかし、出来上がると妙にいい所に納まっているのです。
彼らの作品は、彼らのもの。誰も邪魔をしてはいけないのです。障がいのある人に関わる人は、彼らの権利を守らなくてはいけないのです。