多くのプラスチックからホルモンに影響を与える物質が・・・
「えー!プラスチックのどこが問題なの?」と、多くの人は考えるでしょう。ホームセンターに行くと色とりどりのプラスチック製品が目につき、豊かそうな消費生活がみられます。しかし、多くのプラスチックからホルモンの正常な働きを妨害する化学物質(内分泌かく乱物質)が溶け出します。どのように心配なのでしょうか。
内分泌かく乱物質の研究は増加中
世界中の内分泌かく乱物質研究論文は増加しています。代表的な物質、ビスフェノールAやフタル酸エステルの研究論文数は急増中で、2014年にはビスフェノールAに関する833論文とフタル酸に関する662論文とが発表されました。この事は内分泌かく乱物質が強く心配されていることを示しています。農薬に関する関心も高いのですが、身近にある殺虫剤フェニトロチオン(商品名はスミチオンなど)の研究数は50編程度です。
内分泌かく乱物質の種類は多く、全てを一度に説明するのは困難です。今回はビスフェノールAについて触れます。
ビスフェノールAは安全?
最近はマスコミでほとんど取り上げられませんが、18年前、ポリカーボネート製哺乳びんから溶け出すホルモンかく乱物質、ビスフェノールAが心配されましたが、規制されず、業界の自主規制にまかされました。
ビスフェノールAはプラスチック容器(たとえば、カラー携帯マグカップ、クールビアジョッキ、PC メジャーカップ、コーヒードリッパー、食器類、はし、化粧品ボトル・・・など数え上げたらきりがありません)など実に多くの製品に使われています。飲料や食品の缶の内側にビスフェノールAで作るエポキシ樹脂が塗布されていることもあり、食品や飲料にビスフェノールAが入り込みます。レジで受け取るレシートの顕色剤にも使われています。
ビスフェノールAをマウスやラットに与えると、がんが発生したり、雌雄の生殖器系、代謝、脳や行動に悪影響を与えると報告されています。人間でも似たような異常が増加していると報告されています。健康への悪影響の原因全てがビスフェノールAではないのでしょうが、一因かもしれません。
解毒されても悪影響は続く
体に取り込まれたビスフェノールAが速やかに体からなくなるので安全だと業界は宣伝します。体内に異物が入るとグルタチオンやグルクロン酸と結びつき(抱合 ほうごう)、体外に排出されます。しかし、人間やネズミの培養細胞にグルクロン酸抱合されたビスフェノールAを与えると細胞は脂肪を蓄積したと、カナダの保健省の職員は今年報告しました。ビスフェノールAは抱合されても肥満を起こすと心配されています。
どうしましょう・・・
子どもはこの様な物質の影響を強く受けるかもしれません。子どもたちが、できれば大人も、この様なプラスチックや缶に入ったものをなるべく飲食せず、財布にレシートを入れっぱなしにしないようにしましょう。
容器にはガラスや陶磁器製もあります。
165号の「除草剤について」を読まれた方から質問が届きました。
質問:10年間、ラウンドアップを使って年2回除草し、その後、除草剤を使わなくなって7年経過した畑を借りて自然栽培を始めました。育てた野菜は食べています。グリホサートの影響は何年ぐらい草や畑の土に残るものでしょうか ? この畑を利用するのはやめたほうがいいでしょうか? ご意見をお聴かせください。 (岐阜市・桑原)
返事:環境省はグリホサートの土壌残留の調査をしています。それによると散布後30日後まで土壌残留濃度が減少しません。どのくらいの期間残るかはデータがないので分かりません。グリホサートを散布した畑を使用しても良いかどうかという問題ですが、除草剤を7年間使わなかったので、グリホサートが残っていたとしても、作物が正常に収獲できるのであれば、残っているグリホサート量が作物に影響を与える量ではありません。毎年何度も除草剤を使う他の畑と比較すれば相対的に「はるかに」安全だろうと思います。作付けは継続なさったらいかがでしょうか。
わたなべかずお:福島県生まれ。新潟大学卒。浜松医科大学勤務(脳研究と教育に従事)医学博士、各務原ワークショップ主催(毎月第4木曜日13:00? 渡部宅(各務原市蘇原東栄町)主に健康と環境に関することの勉強会)参加希望者はbandaikw@sala.dti.ne.jpまで