vol.183 環境特集Part-1 森・川・海 つながるいのち

私を自然と呼ぶ人もいる
私を母なる自然と呼ぶ人もいる
私は45億年以上も昔からここに存在している
あなたたち人間よりも2万2,500倍も昔から
人間がいなくても私は困らない
でも人間は私が必要
そうあなたたちの未来は私しだい
私が繁栄すれば あなたたちも繁栄する
私が壊れれば あなたたちも壊れる
さらに悪いことも
でも私は太古の昔からここに存在している
私はあなたたちより大きい
そして私は多くの生き物たちを飢えさせてきた
私の海
私の大地
絶え間なく流れる私の川
私の森
みんなあなたたちを受けいれてあげられる
でも見放すことだってできる
どのような生き方をあなたが選ぼうが
私のことを考えてくれようがくれまいが
どちらでも構わない
あなたたちの行動が あなたたちの運命を決める
私が決めるのではない
私は自然私の営みは続く
私は進化する覚悟ができている
あなたたちにはその覚悟があるのかしら?
NATURE DOSEN’T NEED PEOPLE
自然は人間を必要としない
PEOPLE NEED NATURE.
人間には自然が必要
ジュリア・ロバーツ/ Nature Is Speaking
「母なる自然 / Mother Nature」

森と川と海はつながっている。では森と人、川と人、海と人がどんな関わりを持っているのか、思いを馳せたり、考えたことがあるだろうか。180号の「平和特集」で、映画「カンタ!ティモール」の監督が、東ティモールの人とあいさつを交わすときに、「あなたの山の名前は?」と聞かれるとか。私たちの暮らしを支えてくれる「水」の出所。その山に感謝して暮らすのがあたりまえという文化。
私たちは水道から飲み水に適した水がいつでも出ることに、慣れてしまった。自然の恵みに感謝する気持ちを忘れないでおこう。森や川や海が元気でないと、私たちはその恩恵を受けられない。
NATURE DOSEN’T NEED PEOPLE
自然は人間を必要としない
PEOPLE NEED NATURE. 人間には自然が必要


萩原・ナバ・裕作さん

森と人をつなぐ
森には人間に必要なものがすべてそろっている。木々は家や家具、燃料となり、また、きのこや動物(肉)を育て、朽ちては肥料に。植物や木の実は人や動物の食料に…。森や里山はわたしたちの衣食住をまかなってきました。
ところが今、私たちの生活では手間を省くことが注目され、時短などがもてはやされています。手間を手放した分、森と人のつながりがなくなってきました。大事にしなくなり、気にしなくなってきた。さらに生活にかかわらなくなって森からどんどん遠ざかってしまった。子どもたちにはせめて、庭木に登ったり、垣根の根っこに潜るだけでもしてほしいです。子どもたちにとってはこれも「森」なんです。身近なところからまず「木に触れてほしい」とナバさん。(写真)
昔はちゃんと上手に木を育て、木を切るときにはお祓いなどをして、木を敬うことを忘れなかったんですね。でもその後、木がお金に見える時代がありました。お金のために次々と植林したものの、木材価格下落が原因で放棄されるようになったんです。そして、昔の人は木の性質もよく知っていて、それは伝統工芸とか曲げわっぱなどに活かされてきたのですが、職人さんが減ってきて、伝承していけるかどうか心配です。

里山の環境が気になります。
便利を覚えると元に戻れない。それは動物だって同じ。暮らしのために毎日森を活用しなくなって、人里との境界線がわかりにくくなりました。そうするうちにだんだん人里に降りてきて、ついに見つけた!食べ物がずらっと並んでいる!!しかもおいしい、となれば、もうその味を覚え何度もやってくるのは、当然の成り行き。来るな!と追い払っても、来る!しかし原因を作ったのは人間の方。甚大な被害に泣く前に、なぜ動物が人里に降りてくるのかという根本的な問題をとらえて対応しないとね。

森は”つくる、生み出す”場所、森とどうつながるか…今後の課題
きっかけ作りと継続的な活動が重要です。子どもに限らず、私たちも木というと木材となってからしか見ていないでしょ。まず生木に触れることだけでもいいから始めて欲しい。そしていろんな切り口で自然体験を積み重ねていく。「一本の木を切る」ということからでも算数、国語、理科、社会をはじめ全ての教科を学べますし、木工、染色、ライブ、アートがあったり、と木を絡めた学びの場はいっぱいあります。
そして遊び場としての森!森で暮らすとか、森の暗さを体験するとか。自分で確かめ、森の中に入っていくことをしてほしいです。頭の中だけでわかっていても、行動しにくいですし、感情を動かすのは体験です!
もう一つ、身近なビタミンN(Nature=自然)を取り入れることが大事。岐阜県は約80% が森林。他県を突出しています。気が向けばハイキングをしたり、自然を楽しんだりできる環境で恵まれています。出かけるのがおっくうだったら、公園や自宅の庭の木でも、とにかく触ってみて欲しい。そこからスタートしましょう。

はぎわら・なば・ゆうさく● 岐阜県立森林文化アカデミー准教授。自由な遊び&自由な学び 環境教育 インタープリテーション。「森と子どもをつなぎたい」「遊びと学びをつなぎたい」「自由と責任をつなぎたい」と思い、アカデミー内にプレーパークや森のようちえんといった実践現場を設け、毎日子どもたちから教わっています。2009年、野外自主保育「森のだんごむし」設立、2012年「みのプレーパーク」設立の仕掛け人。


長屋泰郎さん

自然の中に人工物が立ちはだかると生態系が狂う
川といっても上流、中流、河口と条件は違うけれど、生活排水の影響は、昔とくらべるとそんなに影響はあまりないと感じるよ。汚水処理場ができてから、キレイにしてから河川に流す仕組みになったからね、そのちからは大きい。それに、そこに生息する魚が水を浄化してくれている。でも、その魚も少なくなった。それよりも、河口堰だなぁ。あれができたおかげで、カワウが板取川上流まで上ってくるようになった。エサを求めて上流にやってくるんだ。鮎釣りのシーズン前に漁場に稚鮎を放流すると、すごい勢いで食べてしまう。カワウはグループで漁をする、賢いんです。鮎釣りシーズンになっても、成長した鮎の個体数が少なくて・・・。カワウの駆除に悩みが尽きない。生態系に狂いが生じた証拠だね。

にしても、川ガキがいなくなったよなぁ。小さいころから川で遊ぶっていうこと、しなくなった。親のせいかな。あぶないとか、先回りして禁止してしまう・・・そういう世代が「あそこにダムができるってよ!」っといっても、ピンとこないんじゃないかな。俺らは、早かった。自分たちが慣れ親しんだ自然(板取川)の中にダムができる話が持ち上がったとき、「ダムができるって知っとるか!?」とみんなが騒ぎ始めた。そして直ぐに運動が始まった。若者も含め地元板取の有志で「大釜倶楽部」を作ってダムを考える会として自然は自然のままにと、啓蒙活動も始めた。運動は闘争に変わっていった。それこそ巨大マンモスに竹槍でつついていくような状態。それでも粘り強く反対運動をしたが、ダム工事は進み、正式な調印までされてしまった。だけど大釜倶楽部の運動の成果として、工事の引き延ばしまでこぎつけた。その間に世の中が変わったんだ。原発があちこちに建設され、状況が変わった。需要の低迷などもあり、2006年に中部電力は建設中止を発表した。
われわれはソフトにやんわりじりじりと攻めたよ。マスコミにも何度も足を運んでもらって、紙面や映像として取り上げたもらった。大規模なダムの建設が止まるってめずらしかった。結局、中電は300億円くらいをばらまいたね。いくらお金をばらまいても結局は人口が減って地域の活性化にはつながらなかった。
[ダムで活性化ではなく、自然で人を集めていくべき。多くの人に川浦渓谷の美しさを知ってもらい、守ることの大切さを感じて欲しい]当時、泰郎さんが語ったことば(岐阜新聞)

ハンタイ!!と声をあげる前に
川浦渓谷の案内人でもある泰郎さんは「こぶしをあげて声を荒げてダム建設反対!ってやるのは好きじゃねぇんだ。それより、この渓谷の美しさを体感した人が、自然は守らなきゃ、と口々に伝えてくれる。草の根的だけど、それが大事」と話す。川浦渓谷には貴重な動植物が発見されており、保全対策も懸念されている。特に険しい岩場の水がしみ出す急斜面で長野県が西限とされている希少種のビランジ(ナデシコ科)の群生地、高山性の食虫植物・ムシトリスミレ(タヌキモ科)の発見者はいずれも泰郎さん。中電が計画していた川浦水力発電所について「環境アセスメントにこの2種の花は入っていない。よく調べて保全して欲しい」と訴えた。また水のきれいな渓谷に生息するナガレタドガエルやナガレヒキガエルもいて、まさに生物多様性が認められる渓谷だ。手つかずの原生林は豊かな暮らしを私たちに与えてくれる。
暮らしの中に川があり、川で遊び、川の恵みを受けて育った泰郎さんと共に運動を続けてきた人たち。その川が、経済の仕組みで川らしさがなくなることだけは避けたかった。ひたすらに生まれ育った土地を愛し、川を愛した泰郎さん。
「まぁ、あれがオレの青春だったなぁ。」と最後にひと言、感慨深げにつぶやいたのが印象的だった。
ながややすろう 庭師のかたわら、炭焼き小屋を建てて趣味の炭を焼く。アーティチョークや竹など思いも付かないものを炭にして楽しんでいる。写真家でもあり生粋のナチュラリスト。板取在住。

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7月21日は海の日

地球の7割は海です。そして地球の酸素の70%は海から作りだされている事、ご存じでしたか?森林はCO2を吸収し、光合成をして酸素を作っていますが、海の中でも光合成は行われ、太陽の光が届く海面に近いところに住んでいる植物プランクトンや、海藻が光合成をして酸素を供給してくれています。
外から見ているだけでは、一見きれいに見える海も、近年、地球温暖化や、開発、環境汚染などによって、悲鳴を上げています。ほんの数10年前まで、キラキラしていた海中は、人間の便利な生活と引き換えになくなってしまいました。
自然は、簡単に壊れてしまいますが、再生するには何十年もかかります。生態系にはかかせないサンゴは90%が死滅。海のゆりかご、アマモも90%が消えました。サンゴの天敵であるオニヒトデも大量発生。そして、漂流ゴミの山!
今まで散々自然を壊してきた人間としての償いとして、昔のイキイキとした海を取り戻すために私達ができることはなんでしょう?海での遊びを通して、海の生き物たちのことを話題にしてみましょう。自然の恵みによって私達は生かされていることを教えてあげてください。
身近にできる具体的な事を3つ上げるとすれば……
① 自分で出したゴミはもちろん、周りに落ちているゴミも積極的に拾おう。拾ったゴミは持ち帰るか所定の場所に捨てましょう。
ゴミは、街から雨に流され→排水溝を通って→川→海へたどり着きます。
② 日焼け止めは、海を汚します!自然環境に優しいオーガニック系の日焼け止めを!もしくは、海に溶けないウオータープルーフのものを。
③ サンゴがある海で泳ぐ時は、サンゴに触らない。蹴らない。立たない。砂地か岩場で立ちましょう。
ひとりひとりの小さな心掛けが、美しい地球を作っていきます。
mama_koeより

お二人のお話を伺って、森・川・海、そして人。「つながるいのち」を感じました。そして、共通する、自然に対する畏敬の念。まずは、それぞれのフィールドに親しみ、自然は私たちの生活と深くかかわっていることをしっかりと意識し、毎日感謝の気持ちをもって暮らしたいと思います。次回は海のエキスパートにお話を伺います!(編集部)





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