vol.182 ボーダーレス社会をめざして vol.41

NPO法人オープンハウスCAN 理事長 伊藤佐代子

 

一人暮らしって危険

障がいのある息子が一人暮らしの練習をし始めたのは、27年4月からで、もうすぐ3年になろうとしています。

1年程前の話です。アパートにいる息子から夜9時頃に電話がかかってきました。電話はめったにかけてこないので何だろうと思い取ると、「竹下さんがみえました。キャッシュカードがいります」と言います。「はっ?誰その人?キャッシュカード?」訳がわかりません。やられた!!キャッシュカードは持ってないはずなので、サインをしてしまったか・・・。血が引いていきました。雨の中、急いで車でアパートに駆け付けました。名刺がちゃんと置いてあり、その人にお金を払ったと言います。よくよく見るとNHKでした。すぐその名刺に書かれている会社に電話をすると、NHKから委託され集金している会社だというのですが、なんか怪しく、「どうしてキャッシュカードなんていう訳?お宅は変な会社じゃない?これから警察に電話するけど。」と言うと「今はキャッシュカードで手続きができるので、担当者がそう言ったのだと思う」と言い訳をしていました。支払ったのは受信料の1ヶ月分で少ない金額だったので一安心しましたが、知らない人でも簡単にドアを開け、話し、簡単にお金を払ってしまうという事が判明しました。それにアパートに駆け付けた時には、玄関に鍵がかかっていませんでした。「どうして鍵がかけてないの!ハンコ押してない?自分の会社の名前言ってない?」など矢継ぎ早に質問をし、少々私の方がパニックになりました。この部屋の主は、障がい者だ。簡単に騙せると知ったら、息子が勤務している会社に行ってお金をたかることも考えられます。「知ってる人以外は、絶対に扉は開けないこと」と約束しましたが、果たしてどうなることやら???

ひとつ勉強をしましたが、一人で暮らすということはかなりのリスクを伴うのだと実感しました。これから本人がいろいろ経験して、体で覚えていく以外方法はないのでしょう。と思っていましたら、一人暮らしを希望する障がい者に支援をする公的なサービスが、この4月から始まることになったのです。「自立生活援助」というものです。これは障がい者支援施設やグループホーム等を利用していた障がい者が対象で、息子のような人は対象外になってしまうのですが、大きな一歩です。定期的に障がいのある人のお宅を訪問し、食事・洗濯・掃除などに課題はないか、公共料金や家賃に滞納はないか、体調に変化はないか、地域住民との関係はいいか?など必要な助言や医療機関との連絡をするというものです。このようなサービスが増えていくと一般の人と同様に、障がいのある人も一人暮らしを希望する人が多くなっていくのでは?と期待をしています。間違いなく、障がい福祉の世界は、明るい未来に向い進んでいます。

 

 

 





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