vol.180 半農半Xという生き方-vol.21

2つの方程式
いまから25年ほど前のこと。企業に入社した1年目、京セラの稲盛和夫さんの成功の方程式に出合いました。「人生・仕事の結果=考え方×熱意×能力」という有名なものです。いくら熱意と能力があっても、考え方がマイナスなら結果が大きく異なっていくというもの。この方程式に影響を受けている人も多いことでしょう。最近、こんな方程式にも出合いました。すてきだなと思ったので紹介します。それは「OLD+OLD=NEW(古い+古い=新しい)」というもの。今年は僕にとっては20数回目の米づくりでした。わが家では、縦横30センチ間隔に手植え(OLD)、除草機や手で草とり(OLD)、手刈り&稲木での天日干し(OLD)をしています。こうしたことをフェイスブックなどで都会にむけて情報発信するとどうなるか。都会の若い世代はどう考えるかというと、新鮮(NEW)だということです。100年を軽く超える古民家でつけものなど発酵食をいただく。これもとってもとってもNEWなことです。おもしろい時代ですね。「OLD+OLD=NEW」なことを日本各地で探したり、育てたりするといいかも。そんなことを考えています。

ことば貯金のススメ
2年前、母校の大学で講演の機会をいただきました。母校の訪問は卒業以来です。影響を受けた先生と約25年ぶりに再会させていただき、2つのお礼を言いました。先生の授業で良書をたくさん紹介いただき、本好きになったこと。いいことばをメモするようになったことです。いまの自分を振り返って、特によかったなと感じているのは、「ことば貯金」をしてきたことです。20代のはじめころから、精神を鼓舞されることばに出合うと書き留め、ノートに写したりしてきたのですが、それがいま、いろいろな銀行のいろんな口座が知らないうちに満期を一斉に迎えているように感じるのです。「ことば貯金」がいまの私を支え、エッセイや企画書などを書く際、とても役立っています。最近では書き留めてきたことばを独占せず、みんなにも活かしていただきたく、公開。すると、またしあわせがやってくることを実感しています。放てば満てり、ですね。

塩見直紀(しおみなおき)半農半X研究所代表
1965年、京都府綾部市生まれ。20年前から「半農半X(エックス=天職)」コンセプトを提唱。半農半X本は翻訳されて、台湾、中国、韓国にもひろがる。著書に『半農半Xという生き方 実践編』など。

※半農半Xとは・・・半農は環境問題、半Xは天職問題(どう生きるか)を背景とする。持続可能な農のある小さな暮らしをベースに、天与の才を社会に活かす生き方、暮らし方。ex.半農半漁、半農半大工、半農半看護師、半農半カフェ、半農半絵描き、半農半歌手、半農半鍼灸師、半農半カメラマンなどなど。