vol.179 夢か悪夢かリニアが通る!-vol.8

あふれる残土 谷を埋める

「JR東海 3兆円借り入れ完了へ」。新聞の片隅に小さな記事が載っていました。「リニア中央新幹線の全線開業を最大8年間前倒しする」という安倍首相の掛け声のもと打ち出された財政投融資による貸し付けが7月12日に完了することを伝えるものでした。国の試算によると、財投活用でJR東海の負担は約5000億円減るといいます。安倍首相とJR東海の葛西敬之名誉会長が会食を重ねる仲であることは良く知られています。国会を騒がせた森友、加計問題とどこか似ていると感じるのは私だけでしょうか。リニア事業が公的資金投入にふさわしいのかどうか、考える材料をこれからもお示ししていきたいと思います。                                       ジャーナリスト・井澤宏明

希少植物の生息地も
リニアは品川―名古屋間の9割近くが地底を走るため、東京ドーム約45杯分、5680万立方メートルの残土が発生すると言われています。JR東海は、受け入れ先がほとんど決まらないまま掘削工事を進めています。

リニアのトンネル出入口予定地。右奥の山林に残土処分場候補地が広がる(御嵩町美佐野で)

岐阜県内の残土処分場候補地の一つが御嵩町美佐野の山林。近くにリニアのトンネル出入口が予定され、かつてはゴルフ場計画がありました。周辺を工業団地にする思惑を持つ町は、県を通じて候補地に名乗りを上げました。
住民らで作る「御嵩町ハナノキ調査グループ」の調査で、周辺にハナノキの成木80本、幼木と稚樹400本以上を確認。ミカワバイケイソウ、シデコブシなどの希少植物のほか、生息数が世界で1000羽以下と推定されるサギ科のミゾゴイが営巣していた可能性が高いことや、猛きん類サシバの営巣も分かっています。
「氷河期の生き残り」として知られるカエデの仲間ハナノキは、岐阜、長野、愛知3県のごく限られた地域に自生する日本固有種です。住宅やゴルフ場開発などで生育に適した里山の低湿地が減少し、環境省のレッドリストで絶滅の危険が増大している「絶滅危惧Ⅱ類」に指定されています。
国立研究開発法人森林総合研究所の菊地賢・主任研究員(42)は候補地一帯について、「ハナノキが広範囲に生息し、比較的自然度の高い状態が維持されている。保全上、重要な地域だ」と評価しています。

群生地は避けられたが…
今年6月、JR東海は地権者に説明会を行い、町有地を含む約30ヘクタールの山林に約90万立方メートルの残土を埋め立て、平地3か所計約10ヘクタールを造成する計画を伝えました。ハナノキが群生する谷は避けられたものの、「ハナノキ調査グループ」の篭橋まゆみさん(62)によると、10本以上のハナノキや多くの希少植物が予定地に生息しているといいます。
隣の可児市では2003年、東海環状自動車道工事で出た残土に含まれる黄鉄鉱による水質汚染で、魚が大量死し、稲作も出来なくなる被害が起きました。御嵩町議会でもこの事件が取り上げられ、処分場下流の河川が汚染されるのではないかという懸念が示されました。市民団体が昨年行った調査で、高い放射線量を記録した御嵩町次月は目と鼻の先。ウラン残土が持ち込まれるのではという不安も消えません。

「谷の上流に残土を置かれてしまうと、下流で生活している者は居ても立ってもいられない」。裁判の後、記者会見する米山さん(左から2人目)ら(東京都内で)

「なぜ綿密に検討しなかったのか」
残土の問題は、沿線住民ら738人が昨年、国のリニア計画認可取り消しを求めて起こした行政訴訟でも取り上げられています。
今年6月23日、東京地裁で開かれた第5回口頭弁論では長野県松川町の米山義盛さん(62)が意見陳述しました。米山さんが暮らすのは、天竜川に沿って南北に細長く伸びる盆地・伊那谷。1961年の「三六災害」で、土石流、地滑り、河川の氾濫が起き、死者・行方不明者約130人、家屋の全壊・流失・半壊約1500戸にも及んだ地域です。
米山さんは法廷で、「残土の最終置き場の候補としてJR東海が検討しているのは、伊那山地の非常に崩れやすい谷や沢ばかり。水が削ってできた谷や沢を人為的に埋め立てるのは元来危険なことです」と指摘しました。
さらに、「JR東海は、残土の活用の見通しや、谷や沢に残土を置く危険性について、計画の立案段階でなぜもっと綿密に検討しなかったのでしょうか。国土交通省は、膨大な量となることが確実な残土の処分方法が盛り込まれていない工事実施計画をなぜ認可したのでしょうか」と疑問を投げかけました。





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