vol.177 メディアよもやま… 連載 6

メディア題字

“偽ニュース”の正体って何だろう?

 ネットショッピングなどで急成長し、横浜ベイスターズも経営する大手IT企業DeNAの医療情報サイト「ウェルク」に載った、「肩こりの原因は霊かも」など多くのいかがわしい記事や、他人の文章を無断引用した(著作権を侵した)記事が次々と問題化し、去年末DeNAすべての「まとめサイト(キュレーションサイト)」が閉鎖に追い込まれました。この事件だけでなく、多くのまとめサイトなどで同様の「偽ニュース(フェイクニュース)」が問題化しているのですが、たまたまアメリカ大統領になったトランプ氏が、自分に批判的なメディアを名指しして「偽ニュース!偽メディア!」と叫んで、この言葉が注目を浴びるようになりました。「ライオンが逃げた」「移民やイスラム教徒がテロの原因」といった興味本位で根拠のない情報が、今、ネット世界を中心に大暴れしています。

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ちょっと考えればアヤシイと思われる情報が、なぜ最近フェイスブックやツイッター、ユーチューブなどソーシャルメディア(SNS)から大量に出回り、簡単に拡散してしまうのでしょうか? まず第一の背景には、アメリカ大統領選挙でも注目されたように、極端に単純化した乱暴な言葉で大衆を煽る・挑発するという、ポピュリズムと言われる政治家たちのパフォーマンスがあります。今回の大統領選挙では、トランプ陣営はこの方法で終始マスコミをひきつけ、クリントン陣営が投じた広告費(約2億ドル)の20倍以上、46億ドルの広告効果を上げたと推定されています。第二には、欲求不満の人たちが、面白半分、興味本位で世間を騒がせるというのも昔からよくあります。さらにSNSで誰でも簡単に発信できるようになったことが、これに拍車をかけています。第三に何よりも悪質なのは、情報配信サイトを運営するIT企業が、投稿者に報酬を払って、「偽であろうとなかろうと、刺激的な大量の情報を発信する」無責任な商売です。刺激的な記事へのクリックが多ければ、そのサイトの広告が知られるようになり、その広告費がIT企業や投稿者に還元される仕組みです。偽ニュースが、ビジネスとして世界中で成立、営業しているわけです。
スマホ向けに良質なニュースを配信しようとしている日本の「スマートニュース」の関係者らが、ネット配信しているマスメディアにも呼びかけて、ネットニュースの倫理的な基準を作ろうという動きも出てきています。ルールのない競争、無秩序なデジタル社会で繁殖してきた“鬼子”のような偽ニュースから身を守るのは、今後の学校教育もふくめた大きなテーマですよね。

つだまさお 「てにておラジオ」代表
1943 年金沢市生まれ。1966年からNHKで、主として報道番組の制作に従事。1995年から東邦学園短大、立命館大学などで市民社会のメディアのあり方を教えたり、全国の市民メディアを繋ぐ仕事に携わる。2016年から、「みんなの森・ぎふメディアコスモス」で発信する市民による放送局「てにておラジオ」を運営。





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