vol.176 真の文化は山を荒らさず

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真の文化は山を荒らさず

故・高倉健さん主演の映画「駅 STATION」の舞台として知られる北海道・増毛駅。この駅を終点とするJR留萌線の留萌―増毛間が昨年12月、運行を終えました。JR北海道は全路線の約半分について、「もはや自社単独では維持できない」と発表しています。一方、JR東海のリニア中央新幹線建設には、財政投融資を活用した3兆円の国の融資が決まり、5000億円が貸し出されました。国鉄分割民営化から30年、大きな格差を感じざるを得ません。今回は、リニアをテーマにした映像撮影で訪ねた神奈川県相模原市を紹介します。     ジャーナリスト・井澤宏明

移転迫られる「地域の宝」
新宿駅から約40分、JR線と京王線の橋本駅向かいに、神奈川県立相原高校はあります。県内各地から農業と商業を学ぶ生徒が集まる、ユニークな専門高校です。
緑あふれる校内は住民が通り抜けでき、親子連れやお年寄りの姿が見られます。生徒たちは、自分たちが育てたニワトリや豚、牛から生産した「相こっこ卵」「相原ポーク」「相原牛乳」を販売するなど、日々の活動を通じて地域に溶け込んできました。
この高校の敷地に、リニア中央新幹線の中間駅・神奈川県駅が計画されています。それに伴い同校は、郊外への移転を余儀なくされているのです。
「リニア新幹線を考える相模原連絡会」代表の浅賀きみ江さん(67)は、30年余り前に引っ越してきて以来、同校のあるこの街を愛してきました。「知らない土地で、車もないし遠くにも行けないから、子どもを連れて毎日のように遊びに来させてもらったんです」。

市民でにぎわう相原高校の文化祭「相陵祭」(2016年10月30日撮影)

市民でにぎわう相原高校の文化祭「相陵祭」(2016年10月30日撮影)

以前にも、県立高校再編が検討され移転が取りざたされたことがありました。浅賀さんたちは市民団体を作り、校内を巡る散策会を教員らと開いて、「地域の宝」の存在を多くの市民に伝えてきました。
同校は1923年(大正12)に開校。その年に発生した関東大震災の被災地となった横浜に、生徒たち50人余りの自転車隊が農場で収穫した野菜を届けたという話は、今でも語り草です。広域避難場所にも指定され、東日本大震災でも、多くの帰宅困難者を受け入れました。
浅賀さんは「畑の土壌も、90年ぐらい生徒さんや職員さんが一生懸命耕して大事に作ってきた。せっかくこんなすばらしい環境があるのに」と惜しみ、「やれることは精一杯やっていきたい」と移転反対を訴え続けています。

山あいに巨大車両基地
相原高校のある相模原市緑区には、県駅以外にも、関東車両基地、変電施設、4つの非常口の建設が計画されています。
標高1000メートルを超える峰々が連なる丹沢山地の山あいにある鳥屋(とや)地区。住民の栗原晟(あきら)さん(71)が車両基地が計画されているのを新聞報道で知ったのは、2013年9月と最近のことです。

鳥屋地区の航空写真

鳥屋地区の航空写真

車両基地が長さ約2キロ、幅約250メートル、面積50ヘクタールにも及ぶ飛行場のような巨大なものであることや、工事車両がピーク時には1日1000台以上も走行することが分ってくるにつれ、「こんなもののために、町の人間の土地を奪われ、退去させられるのはたまらない」と思うようになったそうです。
車両基地の完成予想図は、2015年2月にようやく公開されました。図を見ると、複数の谷が埋められ、鳥屋小学校の背後に迫るように車両基地が計画されていることが分かります。
地域の真ん中を車両基地が貫き、多くの家屋が移転対象となる谷戸地域の自治会は建設反対を決議し、「リニア車両基地絶対反対!」の看板を掲げています。一方で、どうしても建設が避けられないのなら地域全体で移転を、とJR東海に要請していますが、話は平行線のままです。

住民、法廷に立つ
沿線住民ら738人が昨年5月、国のリニア計画認可取り消しを求めて東京地裁に起こした行政訴訟。原告として参加した栗原さんは12月9日の第2回口頭弁論で法廷に立ち、意見陳述しました。
「真の文明は山を荒らさず、川を荒らさず、村を破らず、人を殺さざるべし」
日本初の公害問題となった足尾銅山鉱毒事件と闘った田中正造の言葉を引用して、リニア計画に疑問を投げかけました。

今回の取材を13分の映像にまとめた作品「リニアが来るまち」をOurPlanet-TVホームページ(http://www.ourplanet-tv.org)やYouTubeで公開しています。

JR東海が住民に示した車両基地鳥瞰図。飛行場のような巨大基地が計画されている

JR東海が住民に示した車両基地鳥瞰図。飛行場のような巨大基地が計画されている





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