食は文化・食は芸術 緊急特集part-3 子どもを守れない国は滅びる 放射線による健康への影響 まず「知る」

放射線による健康への影響 まず「知る」

なんとなく、不安…放射線による健康への影響
まず「知る」ことから始めませんか?

知られざる内部被曝についてー25年たったチェルノブイリから福島を考えるー
講師:松井英介(岐阜環境医学研究所所長・医師)

生体系の中で生きる

今回の原発事故による放射線の放出を、みなさんはどのように受け止められたでしょうか。

私たちは空気なしでは生きていけません。また、私たちの身体は水でできていると言っても過言ではありません。私たちの祖先である小さな生き物は、海で生まれたといわれています。私たちの身体の7割、乳児の場合は8割が水に近い組成をもった水です。ナトリウムやカリウムなど塩分がバランスよく保たれた環境=内部環境の中で私たちの細胞は生きています。ホルモンの変動にあわせて微調整しながら、体温は一定に保たれています。心臓は私たちが生まれてからずっと一定のリズムを刻み続けています。

このような”いのち”の恒常性に支えられて、私たちは今ここにいます。そして、私たちは植物とは違って、ほかの生き物のいのちを自らの身体に取り込むことなしに、生きていくことができないのです。今回の事故は、あらためて私に、自分自身のいのちを、まわりのいのちとの関わりを考えさせてくれました。

大量の放射性物質を海に放出するとき、あるひとはこういいました。「海の水で薄まるから大丈夫!」。そのひとには、海に生き物がいっぱいいることを忘れていたのかもしれません。放射性物質をプランクトンが取り込み、それを小さな魚が食べ、その小さな魚を大きな魚が食べる。生態系の中でこのような食物連鎖を繰り返すうちに、放射性物質がだんだん濃くなることをご存知なかったのでしょう。

陸上でも同じです。乳牛は空気を吸っています。空気が汚染されれば、汚染物質を空気と共に肺に取り込みます。できるだけ自然な条件で育てようとされている畜産農家の乳牛は、アメリカ産の配合飼料ばかり食べているわけではありません。外に出て草を食べます。土も食べます。草や土が汚染されていれば、それも一緒に身体に取り込みます。

茨城の牛乳からセシウムが検出されたのはそのためでした。今回の事故の後、放射性物質は風の向きによっては数百キロ離れたところまで運ばれました。群馬県産の野菜からセシウム137が検出されたのは、風や雲と一緒に運ばれ、土の上に降り積もり、地下水に浸透していたセシウムの小さな粒を野菜が自らの体内に取り込んだ結果でした。

「放射線は距離の二乗に反比例して弱くなる」から、福島から200キロも離れた東京は大丈夫といったひとがいましたが、雨雲とともに運ばれてきた放射性物質は雨に混じって地上に降り注ぎ、その雨水を含んだ水道水は東京に暮らす人々の生活の中に入り込んできたのです。

放射性物質を含んだ水を飲んだ場合、一部は体内に残り、細胞の間にとどまった放射性物質の小さな粒子は、その周辺の細胞を照射します。放射性物質と細胞との距離が近いだけに、まわりの細胞に照射される放射線の強さは半端ではないのです。内部被曝の怖いところはここです。

胎児や小さな子どもは大人に比べ体重あたりでみると、甲状腺に取り込むヨウ素131の量もずっと多いのです。また、カリウムはナトリウムなどと共に、重要な塩分(電解質)ですが、カリウムと似た化学的性質をもったセシウム137は体内に取り込まれやすく、その影響は子どもにとってずっと深刻だと考えなければなりません。

放射線から身を守る

放射性物質を身体に取り込まないことにつきます。授乳中のお母さんには特別の配慮が必要です。体内で何回も繰り返し長時間にわたって、ごく近いところから放射線を浴びることを”内部被曝”といい、体外からごく短い時間放射線を浴びる胸部エックス線検査や胃透視検査などの外部被曝から区別しています。放射性物質は小さな粒ですが、そのまわりの細胞にとって、内部被曝の影響は、外部被曝と比べるとケタ違いに大きいのです。このことを大人も理解し、子どもにも教えないといけません。01

『見えない恐怖 放射線内部被曝』より
松井英介・著 旬報社 1,400円

今回の福島原発事故で自然界に放出された放射性物質の量は、人類史上例を見ないものであると考えられます。その意味でも世界中から注目されています。これから気の遠くなるほど長く続く放射線による健康影響をどうするのか、どのように生きていけばいいのか、子どもたちを交えて、私たち一人ひとりの生き方の問題として議論を深めていきたいものです。

 

国と自治体に次のような要求をしましょう。

1-国は、放射性物質に関する検査点と検査項目を時間的空間的にできるだけ細かく定め、全放射線核種に関する検査結果をreal timeで各自治体に通知すると共に、マスメディアおよびインターネット・メディアを通じて公開すること。

2-国は、数千キロメートル圏内をカバーするWSPEEDIの広域汚染状況予測値を誰でもわかりやすいアニメーションとして、1と同様、いつでもどこでもアクセスできるように、リアルタイムで公開すること。

3-水道水、野菜や肉、海藻や魚介類、牛乳などの飲食用農水産物の汚染状況に関しては、放射性核種と放射線量(基準値以下であってもその値を)明記すること。生産地も、できるだけ詳細に記載すること。

4-次のような内容の要求を、友だちや家族、職場の仲間と相談して、都道府県・区市町村議会を通じて、首長に要望してもらう形で、政府と東京電力にくり返し提出しましょう。

当面個人でできること

1-内部被ばくを常に意識し、子どもに発症してくるであろう晩発障がいを予防するための、子どもの安全最優先の日常行動計画を立てる。

2-妊産婦、乳児、14歳以下の子どもは、優先的に避難させるべく、学校・幼稚園・保育所や地域で知恵を集める。

3-野菜や肉、海藻や魚介類、牛乳などの飲食用農水産物は、汚染の極力少ないものを入手する。便利さと安価なものに頼っていた生活スタイルと価値観を転換させ、バランスよく食べ、運動し、身体の恒常性・免疫力を高める。

4-WSPEEDIの広域汚染状況予測値に目を光らせ、風下になることが予想されるときには、とくに降り始めの雨に濡れないようにする。

5-子どもの基準値を定めるように首相に手紙を書く。ICRPなどの基準値を鵜呑みにしない。

『見えない恐怖 放射線内部被曝』より

プロフィール

松井英介(まついえいすけ)
岐阜大学医学部付属病院勤務、放射線医学講座助教授。退任後、岐阜環境医学研究所を開設。日本呼吸器学会専門医。廃棄物、アスベスト問題などにも関わる。

そして、ぜひ心がけて欲しいこと。

自己防衛。やはりなんといっても「食」が大事。内部被ばくを防ぐ5つの食べ方を紹介します。

01「水で洗う」
まずは表面についた放射性物質を洗い流す。15分ほど水につけてから洗えば、表面の汚染がとれやすくなりさらに効果的。

 

01「酢漬け」
酢はセシウムやストロンチウムなどの金属イオンと結びついて抽出しやすい性質がある。クエン酸も同じような効果が。

 

01「ゆがく」
細切れにしてからゆがくと、さらに細菌膜が壊れやすくなり、取り込まれた汚染水分を効果的に搾り出すことができる。

 

01「塩もみ」
浸透圧により、放射性物質を含む水分を内側からしみ出させる。漬け物や和え物の下ごしらえとしてもおすすめ。

 

01「煮込む」
下ごしらえしてから素早く煮て、うまみを逃さないように。汁物料理の場合は味付けの汁は別に作って、あとで具を入れる。

 

基本は水洗いから。

まず、しっかり土を取り除き、皮を剥くこと。キャベツやほうれん草など複数の葉が重なり合っている野菜は、外側の葉を数枚捨てることで、大幅に放射性物質をカットできます。次に、水洗い。野菜の表面に傷がついている場合は、傷んだ部分を大きめに取り除く。問題は、食材の内側に入り込んだ放射性物質。セシウム、ストロンチウムは水に溶けやすいので洗ってからさらにゆがく、煮るという方法で細胞壁を軟らかくし、野菜内の水分を搾り出すのもおすすめ。塩を使って浸透圧でしみ出させる塩もみや塩漬けも効果的。また、この2物質が持つ金属イオンは酢と結びついて溶け出しやすいので、酢に浸すのもよい。その際、ゆで汁や煮汁、付け汁は飲まずに捨てます。





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