ボーダレス社会をめざして 33
大人になったきょうだい 伊藤 佐代子
息子が8月に熊本へ一人で旅行に行ってきました。2度目の飛行機での旅行です。今回は6月、7月と熊本のホテルを予約しながらも雨にたたられ延期、延期でやっと実現したものです。熊本城、市の美術館など楽しんできたようです。お土産をいっぱい買ってきてくれました。数日後に娘が我が家に遊びに帰ってくるのを気に留め、最高級の馬刺し、和菓子のおいしいものが買ってありました。特別扱いのような気がしました。なんと娘の子どもにもお土産が買ってあり、帰ってきた娘に自分の部屋から”くまモンのTシャツ”を持ってきて「Kくん着てください」と渡していました。不思議なことにサイズがぴったりでした。「どうして大きさわかったの?」「年齢から買いました」・・・すごい! 娘とびっくりしていたら今度は22センチの靴下をKくんにと・・・。これは大きすぎる??「私が履くから。ありがとう」と娘がちゃっかりもらっていました。そして「Kくんの靴下の大きさはこれやよ」と言って実物を見せていました。すると後日、障がいのある人の集まりの青年学級でナガシマスパーランドに行って、Kくんの足にぴったりのワンピース(漫画)の絵柄の靴下、アンパンマンのお菓子、アンパンマンの小さな扇風機など好きそうなものをいっぱい買ってきてくれました。とってもいい伯父さんをしています。自閉症の息子は赤ちゃんの泣き声が苦手だからどうしよう?なんて不安に思っていた頃が嘘のような日々を過ごしています。大人になった時の「きょうだい」まで思い描くことは全然できていなかったのですが、子どもたちはとてもいい関係になってきています。随分前に、障がいのある息子の妹にあたる娘に私自身負い目があるというようなことをこの欄で書いた記憶があるのですが、今ではそんな思いは払拭され「人生うまくできているな」と思っています。娘の出産の時に、娘の事を今まで十分見てやれなかったという思いはすっかり消えました。娘が私と主人を独り占めし思いっきり甘えている姿を見て本当に長い人生、凹凸がありながらも自分の子どもに平等に愛情は注げるものだなと実感しています。最近娘が「お兄ちゃんがいるから岐阜に帰らないとね」なんて思いがけないことを言いました。「大丈夫だよ。お兄ちゃんは」と言いつつもちょっと嬉しい言葉でした。