VOL.169 特別連載寄稿 半農半Xという生き方

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まちづくり&自己探求 塩見直紀のエッセイ より

人はいつ変わるのか
3・11からもうすぐ5年。月日の流れは早いものです。今を生きている人は、さらなる意識の変化を求められていますが、人はなかなか変われない生き物だと感じています。1989年、バブルの頂点のころ、社会人になったのですが、そのとき出合ったのが、いわゆる環境問題でした。いまのままの暮らし方や生き方、働き方をしていては、次の時代はないと20代のころ、思ったものです。この約20数年間の自分のテーマは「人はいつ変わるのか」ということでした。病気か、リストラか、交通事故か。旅か、1冊の本か、師匠との出会いか。変わるチャンスはいっぱいありますが、それでもなかなか変われないのが人間です。3・11後、人の意識は大きく変わったといわれますが、そうだなあと思いつつも、3・11前に戻ってしまっているかもしれないとも感じています。後世に大きな大きな「負の遺産」を残してしまった私たち。あらためていま感じるのは、陰ひなたに小さな善行を積んでいき、山を動かすしかないように思うのです。

「自然の神秘さや不思議さに目を見張る感性」
bbd08e95ba2b189defa05b2d612d8abe-250x250米国の科学者レイチェル・カーソンが地球の悲鳴を聞き、『沈黙の春』を書いて、世に警鐘を鳴らしたのはいまから50年以上前のこと。この本は「世界を変えた1冊」と言われています。享年56歳で逝ったカーソンは死が迫るなか、最期のメッセージとして、力を注いだのが、『センス・オブ・ワンダー』という本です。「生まれつき備わっている子どものセンス・オブ・ワンダー(自然の神秘さや不思議さに目を見張る感性)をいつも新鮮に保ち続けるためには私たちが住んでいる世界の喜び、感激、神秘などを子どもと一緒に再発見し感動を分かち合ってくれる大人が少なくともひとりそばにいる必要があります」ということばに影響を受けている日本人もたくさんいます。日本一の環境イベントといわれる「アースデー東京」でこのセンス・オブ・ワンダーについて語る会があり、登壇させていただきました。東京でも「自然の神秘さや不思議さに目を見張る感性」を大事にする動きがあるのですね。この感性をみんなで磨いていくことはまちづくりや安心安全な地域づくりの基本のような気がしています。

※半農半Xとは・・・半農は環境問題、半Xは天職問題(どう生きるか)を背景とする。持続可能な農のある小さな暮らしをベースに、天与の才を社会に活かす生き方、暮らし方。ex.半農半漁、半農半大工、半農半看護師、半農半カフェ、半農半絵描き、半農半歌手、半農半鍼灸師、半農半カメラマンなどなど。

塩見直紀(しおみなおき)半農半X研究所代表
1965年、京都府綾部市生まれ。20年前から「半農半X(エックス=天職)」コンセプトを提唱。半農半X本は中国語訳され、台湾、中国にもひろがる。著書に『半農半Xという生き方 実践編』など。