子どもの野菜嫌いには理由がある
子どもたちが野菜の「緑色、におい、苦み」という3つの特徴を避けることは、生き抜くためにできるだけ安全な物を選ぶという「自己防衛力」の表れだと思います。
ピーマンを筆頭に子どもが苦手とする野菜とは、子どもが「食べるべき物」なのでしょうか。ピーマンは「βカロチンやビタミンCが豊富」という情報から、子どもに食べさせなくてはと思っている大人が多いのも事実。しかし、その反面、ピーマンはアルカロイドという食物毒を含むのも事実。未熟なトマトもそうですが、緑が濃くて苦みのある野菜には、微量の食物毒を含んでいるものがいくつもあるのです。これは食物にとっては、今から熟す種子を鳥や人間が食べないように、守っているのです。熟せば、なくなります。植物毒というと怖い印象ですが、あくまで微量。ただここで伝えたいのは、子どもにとって、それらは優先的に食べるべきものではない、ということです。
では、子どもが「食べるべきもの」とはどんな食べ物でしょうか。実は、子どもが一番よくわかっているんですよ。このランキングでは野菜の中に入れられていますが、「いも類」や「穀物」、つまり人間が主食としてきた食べ物です。子どもの好き嫌いで困っているという場合も、「ご飯ばかり食べておかずを食べない」ということがほとんど。子どもたちは、主食になるものが大好きなのです。それは、穀物やいも類が、こどもが生きるために「食べるべき物」だからです。
子どもたちは日々ぐんぐん成長しています。でも胃袋は大人よりうんと小さい。効率よくエネルギーが取れる物を最優先で食べなきゃいけない。ビタミン、ミネラルが豊富とはいえ、野菜の優先度は主食より低くなります。特に苦みの強い野菜は、小さな胃袋に無理に入れる必要はないんです。
穀物、いも類には甘みがあるでしょう?それは高カロリーのでんぷんを含むからです。ピーマンやネギなど、苦みのある野菜は低カロリーですよ。でんぷんは消化されたらブドウ糖になり、ブドウ糖は、脳や筋肉などのエネルギーになる物で、生きるために必要なんです。
「苦手な野菜は無理やり食べさせないで」と言いました。子どもは、まずご飯でお腹を満たすことが大切だからです。が、食卓に野菜や海藻のおかずを並べることは大切です。必要なことは、親がそれを食べる姿を見せることです。
子どもは、緑の野菜を本能的に避けます。でも、親が食べる姿を見ていれば、それが安全な食べ物だと学習できます。そして、大人になれば食べるようになります。家族の食卓は、子どもの未来への“種蒔き”です。ぜひ、煮物、あえ物、おひたしなどを、食卓に並べることも目指してください。
大切なのは、野菜を食べることよりも…
無理せず、70点の食事をキープできたらそれでOK!
そのための6つの基本
1.しっかり外遊びをさせよう
しっかり体を動かして遊ばない日が続けば、食欲が落ち、油や砂糖、化学調味料たっぷりのパンやスナック菓子のようなものしか食べない状態になりかねない。空腹は健全な食欲の源です。
2.子どものための食事は作らない
子どものためにお子様ランチを作ると、結局油脂と砂糖ばかりになってしまう。
3.飲み物は「水・麦茶・番茶」
子どもにとっての飲み物の目的は、純粋に水分摂取。栄養もカロリーも噛んで食べる食べ物で摂るべき。子どもの飲み物は、水か麦茶、番茶、ほうじ茶にしましょう。
4.朝ごはんをしっかり食べさせる
朝食は、「ご飯・味噌汁・漬物」で。前日の夕食で多めに作り、朝は残りを温めるだけ。これに納豆や佃煮などのご飯のお供を並べるだけ!。パンには砂糖や油が使ってあり、お菓子と同じ。食事の根幹である主食を選びましょう。
5.子どものおやつは「食事」
成長期の子どもたちが欲しいのは「胃袋の栄養」、つまり食事です。(オススメはおにぎり、サツマイモ、とうもろこし、うどん、もち、じゃがいもなど)
スナック菓子とジュースは「×」です。中学生にでもなれば自分で買うでしょう。せめて家庭では、親から子どもに与えないでほしいです。お母さんお父さんがお菓子好きなら、子どもがいない時間や場所で食べること。大人には「心の栄養」も必要ですからね。
6.カタカナ主食は日曜日に
パン、パスタ、シリアル、ピザ、ハンバーガー、ラーメンといったカタカナ食は、油や砂糖、化学調味料の“親友”。カタカナ食は日曜日、家族のお楽しみにして、平日はシンプルに。
『なぜ、子どもはピーマンが嫌いなのか?―まくうち流70点の食育講座』幕内秀夫 西日本新聞社 より
100点満点のママでなくても
今回は「なぜ子どもはピーマンが嫌いなのか?」というお話をさせていただきました。
後日、ワークに参加してくれたママのご家庭で面白い光景が見られましたよ。
(1)幼稚園に通う男の子が「なぜ子どもはピーマンが嫌いなのか?」の本を一生懸命読んでいました。ぼくがピーマンを食べなくても良い理由を頭に叩き込んでいたのでしょうか?この本はそのくらい簡単に分かりやすく書いてあります。
(2)小学生の女の子のママ。まずママが笑顔になりました。テーブルマナー以外で怒る必要がなくなったので食事の用意をするのが楽しくなりました。と報告を受けた後…娘に「ピーマンを食べなくても良いよ」と言ったら娘がピーマンを食べるようになりました。ですって(笑)。ピーマンをモリモリ食べている写真が届きました。
子どもに好き嫌いがあっても良いですよ。必要な栄養素は他の物で摂ることができますし、子どもは必要なものを本能で感じて食べています。わが子も、何を隠そう私も嫌いな食べ物いっぱいです。でも左にある70点の食事をキープしていたら病気になることもなくなりました。娘たちが保育園に通っていた頃、毎週のように小児科へ行っていた生活が嘘のようです。
ただし、好き嫌いを認めることは好きなものを好きなだけ与えることとは全く違うので気をつけてくださいね。後者は子どもの成長の妨げになりますよ。
渡邉雅美 (健康管理士・食育アドバイザー・マザーグース主宰)