山田征さんに「にらめっこ」を毎号送らせていただいています。征さんからは「菜の花つうしん」が送られてきます。今回、送っていただいた中にとても気になるメッセージが同封されていました。征さんの同意を得てにらめっこに掲載させてもらうことに。
菜の花つうしんには、「人間世界の歪みは、そっくりそのまま自然界の姿になって私たちの前に立ちはだかっています。生きるもの全てにとって必要不可欠の生態系そのものをもう決して取り返しのつかない限界点まで追い詰めてしまいました。生きるもの全てにとっての赤信号です。このようなことを書いたり、話している私は少しおかしいのかもしれませんね。でも私は書かずには、言わずにはいられない思いでいっぱいです。暑い夏、ご自愛ください」。と結ばれていました。
環境活動家・山田征さんからのメッセージ
文・山田征(菜の花つうしんより転載)
種の消滅が加速化
この地球上にある生態系の種は、約三千万ほどあった、といわれます。
ところが、2022年に行われたある大きな国際会議の場で、「今この地球上の生態系の約69%が失われてしまった。我々は残りの30%を切らないようにしなければならない。そのためにはあらゆる努力が必要である」という声明が出されました。
少し古いのですが、私が2007年初頭に書いたものに次のような数字があります。
「一万年前には100年に1種、千年前には10年に1種、百年前には1年に1種、そして現在は
1日に約100種が絶滅している。地球上に約三千万種はいたはずの中の、ただ一種の人間の生活のために凄じい勢いで種の姿が消えています」
これを書いてから約20年近くになりますが、昨年にはとうとう「生態系の限界点を超えようとしている。超えるのは時間の問題である」ということになってしまいました。つまり超えてしまった、ということだと思います。人間の生活の在り方がより便利に明るく速くなればなるほど消滅の速度は加速され、いずれゼロになってしまうのかもしれません。
最大の原因は電波
その大きな原因は様々な資源を地下から取り出し、20世紀初頭から使われ始めた電気を動力として使うことで、ありとあらゆる物が大量生産、そして同じ速度でゴミになっていく生活。大量に使われ始めた農薬や化学肥料他の数々。それによってどれほど多くの種が消えてしまったことかと思います。
そして決定打は、今となってはほとんど多くの人々がけっして手放すことのできなくなってしまったIT機器使用により、人間だけではなく、ありとあらゆる動植物全般に影響を与えてしまう「電波」というものではないかと思います。
ある昆虫学者が書いた「サイレント・アース」というぶ厚い本が、昨年日本でも出版されましたが、「約400万種はいたはずの昆虫の約84%が消えてしまった」と書かれています。「たかが昆虫」などと言ってはいられません。私たちが生命をつなぐ食料のかなりの物が、この小さな昆虫たちの助けがないと得られません。食料としていない他の多くの物も、昆虫によって新しい命を繋いでいます。その大切な小さな生き物たちが9割近くもいなくなってしまった、ということの恐ろしさを、人はどう受け止めていくのでしょうか。人々が電波による便利なものを使えば使うほど、私たちは生命をつなぐ大切なものを失って行きます。
ところで私たち肺呼吸する生き物にとって、酸素は必要不可欠です。一般的にその酸素をつくり出しているのは陸上の緑の植物、と言われていますが、日が隠れるため、陸のものは夜になるとその逆になります。
水の中の魚介類が激滅
ところが水の中の水草、海草、さまざまな藻類、植物性プランクトン、サンゴ虫などは昼夜関係なく二酸化炭素を吸収し、酸素を放出し続ける存在です。
最近のニュースでは、養殖の収穫量がガタ落ちしているそうですが、そういう物が減っていくことは、新しい酸素の供給源がなくなる、ということでもあります。
結果、今何が起きているかといえば、水の中の魚介類が激減しています。それだけではありません。水の中の植物たちが消えると魚介類の餌がなくなり、産卵の場がなくなる、ということです。
数年前、国連本部が「2050年までに、東アジア諸国の沿岸漁業の漁獲高はゼロになるだろう」という大変ショッキングな警告を出しましたが、今現在の各地各国の状況をみますと、もしかしたらそれはもっと早まるのでは、と思えてなりません。もちろん電波は水の中のものたちにも大きく影響することはよく知られています。
つまり、電波が私たち人間や大きな体の動植物以上に、昆虫のような小さな体の生物により大きなダメージを与え、絶滅を早めてしまうようです。
生活の在り方を見直す
たまたま私は、全国各地に出かける動きをしていますので、行く先々での生の声、生の現状を見たり聴いたりする機会が多いものですから、想像や憶測の話ではない、あまりにも生々しい現実に息を呑む思いです。その具体的な事実をひとつひとつ書くことはやめますが、半世紀余りも前、レイチェル・カーソンは『沈黙の春』で警告しましたが、今ひたひたと迫ってくる「サイレントアース」「沈黙の地球」のことをぜひ知っていただき、今日このときから、各々の方々の生活の在り方をお考えいただけたら、と私は思っております。
2024年7月5日
山田 征(やまだ せい):東京武蔵野市在住。 4人の娘たちの子育てと共に、農家と直接関わりながら共同購入グループ「かかしの会」を約20年、地元の学校給食に有機農産物他、食材全般を約17年にわたり搬入。 仲間と共にレストラン「みたか・たべもの村」をつくる。反原発運動、沖縄県石垣島白保の空港問題他さまざまな活動を経、現在は、日本国内だけではなく地球規模で設置拡大され続けている風力や太陽光による発電設備の持つ深刻な諸問題についての講演活動を精力的に続けている。1988年4月9日から自動書記によるノートを取り始める。2002年1月より「隠された真実を知るために」のタイトルで、ひと月に1回の小さな勉強会「菜の花の会」を続けている。
『サイレント アース』 デイヴ・グールソン 著
昆虫がいなくなれば、世界は動きを止める。危機を食い止める具体的な行動指針を示す、現代人必読の書!
レイチェル・カーソンが、『沈黙の春』で「鳥の鳴き声が聞こえない春が来る」とDDTの危険性を訴えたことにより、その使用が禁止されて半世紀。私たち人間は、さらに地球環境を悪化させてきた。本書はまさしく「昆虫たちの羽音が聞こえない沈黙の春」への警告だ。
カーソンの時代の農薬よりはるかに毒性の強い農薬によって、最初に犠牲となるのは小さな無脊椎動物、昆虫だ。
土壌は劣化し、河川は化学物質に汚染されているばかりか、集約農業や森林伐採によって昆虫のすみかは縮小し、加えて急激な気候変動で虫たちの生態環境は悪化し、減少スピードが加速している。
この現象は、虫好きの人の耐え難い悲しみであるだけでなく、虫嫌いの人を含む全人類の豊かな暮らしをも脅かす。なぜか?それは、作物の授粉、他の生物の栄養源、枯葉や死骸、糞の分解、土壌の維持、害虫防除など、様々な目的で人間は昆虫を必要としているからだ。昆虫をこよなく愛する昆虫学者は訴える。「今、昆虫たちはあなたの助けを必要としている」と。
EU 全域にネオニコチノイド系殺虫剤の使用禁止を決断させた運動の立役者であり、気鋭の生物学者である著者が、多様な昆虫と共存することの重要性を訴える渾身の一冊。
「生態学者と昆虫学者は、昆虫がきわめて重要な存在だということをこれまで一般の人々にきちんと説明してこなかったことを深刻に受け止めるべきだ。昆虫は地球上で知られている種の大部分を占めるから、昆虫の多くを失えば、地球全体の生物多様性は当然ながら大幅に乏しくなる。さらに、その多様性と膨大な個体数を考えると、昆虫が陸上と淡水環境のあらゆる食物連鎖と食物網に密接にかかわっているのは明らかだ……
私は、ほかの人たちが昆虫を好きになって大切にしてくれるように、そこまでいかなくても、昆虫を尊重してほしくてこの本を書いた。私が昆虫を見る目で、あなたにも昆虫を見てもらいたい」(本文より)