vol.221 熱中人 山下 香里さん

 もともとお菓子を作ったり料理が好きだったので、みんなと共有したいなと思っていたら、たまたま家の近くに放課後等ディサービス(以後放ディ)が新規オープンしたので、そこでパートとして働き始めました。

ある講演会を聞きに行った時のこと。「発達障がいは、食で改善する」っていう話があって、すごく興味を持ちました。自分の好きな食のことと、放ディに来ている発達障がいのある子どもたちと、強い結びを感じて。もっと知りたくなって、京都まで月一回ですが一年間通い、学びました。学んだことを自分で体験したくなって放ディで実践してみたんです。すると何人かの子どもが改善してきて、これはすごい!と思いました。そこで関市の市民講座でもその話をしたり、お弁当を作る教室も開いたり、いい流れが出来てきたのですが、そのタイミングでコロナです。できることが何にもなくなってしまいました。
そんな中、知人が武芸川で放ディを始めるから、パートで来てくれない?って誘われて…で、引き受けることにしました。でも、オープニングからいろんなことが起きて、スタッフの何人かが出て行ってしまいました。その時すでに契約しているお子さんが2人いたので、私はやめるわけにはいかなかった。それから私が責任者となって3年が経ちました。今では利用者も増え、スタッフも充実してやっと軌道に乗り始めました。放ディでは色々な子どもたちが関わっています。なので福祉に関しては、さまざまな研修に参加して学んでいます。
でもその前に、ある母娘に出会うんです。お母さんはすごく娘さんと関わっているし、そのおかげなのか娘ちゃんは伸び伸びしている。そういう姿を見ていたのが、自分にとってとても大きかった。自分が楽しいと、子ども達も働く人も楽しいよなって。楽しいが一番ですね。周りも楽しくなってきますし。その母娘に出会ったから今があるって感じです。

食で改善、その手応えは?
講習に一年通った時に、宿題とか提出しなくちゃならなくて、放ディに来ている方にモニターになって頂いて、お子さんが朝昼晩、食べたもの、毎日の様子を書いてもらったんです。そのお子さんは当時6年生。支援学校に行っていて、発語がほとんどない子でした。意思表示もあまりできなくて、手先がうまく使えない。排泄もオムツでした。発達に障がいのある人たちは腸が弱い人が多く、浣腸の子が多いんです。モニターになって頂いた数日後、お母さんが、「初めて息子のオナラを聞きました」って。腸がちゃんと動いたんですね。また、あるお子さんは勉強嫌い。それまで全く勉強をしなかった子が、だんだんやり始めて、しまいには「鉛筆が勝手に動く!」って。なんか手応えというか、効果あるんだなって実感しました。

インプットすれば自然にアウトプットできる
子どもが改善していく様子を目の当たりにすると親さんが変わるんです。食事を変えるっていうのは、ハードルが高い気がするけど、ミネラルたっぷりのふりかけをみそ汁の中に混ぜるとか、今あるものに足すことは簡単です。我が子が改善していくのを見ると、食べる物に興味が湧いてきます。「こうやってご飯を作るといいよ」と食事を作ることに発展していきます。さらに「油はこのオリーブオイルを使うといいよ」とか、「次は調味料を変えてみて」とかね。普通のスーパーで買えるものでもちゃんと商品の裏を見て吟味して買うこと。と、伝えています。そういう選ぶ目を持つことは大事ですからね。
 あと、日記のように書いて記録することが実はとても重要です。一行でも一週間分でもいいので、最初にできないこととかを書いてもらいます。一ヶ月後にふりかえってみて、「あっこんなことできんかったんだね」って。そうするとよけいに「できた」という達成感を実感できるんですよ。
月に一回、味噌玉と、ふりかけを子どもたちと一緒に作っています。「このふりかけはミネラルがたっぷり。ミネラルってなんだと思う?」って聞いたりしてインプットします。すると自然にアウトプットができるんではないかと思って。子どもたちが喧嘩を始めたとき「ミネラル足りんやん」って言ったときは正直驚きました。とりあえず刷込み成功!ってスタッフみんなで喜びました。ミネラルが足りなくなると怒りっぽくなるという具体例を書いたものがあるんですが、喧嘩の場面でその言葉が出たときは「よっしゃ〜」と思わず声が出たくらいです。(笑)

「放課後等デイサービス ブルースカイ武芸川」は、子どもたちが「将来1人で生きていける心と体を持つこと」を目指して、「自然とのふれあい、食へのこだわり、体を動かす」の3つを大切にした支援をおこなっている施設です。