前号は、本間真二郎医師の講演会より、健康であるには「自然に沿った生き方」がとても重要だとお伝えしました。でも、そもそも自然に沿った生き方ってどんな生き方?たとえば、大原に住まいを構えハーブを育てながら暮らしておられたベニシアさんとか?(ハーブ研究家。72歳で亡くなる)。それともアメリカの絵本作家、ターシャ・テューダさん?(子育てを終え、長年の夢を叶え、バーモント州の山中に1740年代風の家「コーギコテージ」を建て自給自足、手作りの暮らしを続けた。 2008年、92歳で亡くなる)。それともポツンと一軒家みたいなところで自給自足をするとか?そんなイメージを抱いてしまいます。今号では、自己軸と他者軸からメンタルの部分を考えてみました。
その前に腸内細菌について少しおさらいをします。講演は2時間でしたが、「腸内細菌」というワードが何回も出てきました。数百年前の腸内細菌は、1人あたり1600種と言われていますが、現代人は1000種と言われます。その1000種も、食事の変化や生活環境の変化、そして薬や抗生物質によって、以前のものとは大きく変化している。腸内細菌叢の変化が、現代の病気や健康状態に大きな影響を与えていると、先生はお話しされました。
そして、腸内細菌の働きに注目。アレルギー・免疫疾患・花粉症・大腸疾患・アルツハイマー・認知症・うつ・うつ病・パニック・過呼吸・肥満・痩身・肌疾患・喘息・膠原病・疲労感・焦燥感などなど、今まで考えられていた以上に、健康に大きな影響を持っているとも。腸内細菌を元気にすることが、健康の秘訣。はてさて?どうやって元気にするのか。それが「自然の沿った暮らし」なんですね。ここまでは前号。
ハッピーな“ちょうどいい暮らし”とは?
本間先生は、栃木県の那須烏山市に移住されました。大きな理由は、それまで「医師として漠然と抱いていた疑問」を解決するためには、専門の「医」だけではなく、もっと根本的なところから総合的に考える必要があると思ったからだそう。
移住先で調味料づくりを始めた理由
自然に沿った生き方の根本である「身土不二(しんどふじ)」という考え方を、自分の住む土地の麹菌を使うことにより、実践できるから。
身土不二とは、「私たちのからだと住んでいる土地は同じもの、切り離せない」という意味。だから暮らしの中で、私たちが住んでいる土地と一体になっていくことが非常に重要だということ。ということは、その土地でとれる旬のものを食べるのが、いちばん身体にいいということであり、その食べものをつくっているのが、その土地の微生物というわけです。
“自然に沿った生活”とは、“微生物と共生する”ということなんですね。
しかし、私たちが農業を始め、食べるものを自分で作ることを実践できるかといえば、なかなかに難しいと思います。現実問題として農業は肉体的にもとても厳しいし何より土地がなくてははじまらない。
だけど「~~しなければいけない」「~~するのが豊かである」といったいわゆる思い込み(他者軸)に寄りかかりすぎないことが大事。まずはどう生活を見直せば微生物を大切にした生活が可能か、考えて実践してみることが大切ではないでしょうか。
「自己軸」と「他者軸」という考え方
たとえば新型コロナウイルスで考えてみます。感染、発症、重症化、死亡という進行は、ウイルスという「他者」ではなく、自分の免疫力という「自己」の力により決まります。三密回避などでウイルスという他者に軸を置いた対策でも、効果は期待できるかもしれませんが、状況がどこまで進行するかは、自己の免疫力次第なんです。ここが重要です。
さらに、健康に限らず、あらゆる分野で「何かに頼る」「他者軸に依存する」ことが多すぎるのではないかと問いかけながら超早口で 内容はどんどん進みます。次ページと重複しますが、自己軸を高めるには「自分で考え」、「自分で行動し」、「自分の力で問題と向き合い」、「自分で責任をとる」こと。
また、自己軸を確立したうえで他者軸を取り込む「自他の統合」も大事だと言います。「精神的」にも「身体的」にも、他者を理解したうえで自分に生かすことで人間は成長するから。それを人間は体内で無意識のうちに行なっています。免疫力と菌がコミュニケーションを取り合い、身のまわりの菌やウイルスを取り込んで少しずつ完成し、維持される免疫系などは、そのいい例ですね。次ページに講演の抜粋を掲載します。
本間 真二郎(ほんま しんじろう)医師。那須烏山市国民健康保険七合診療所所長。1969年、北海道札幌市に生まれる。札幌医科大学医学部を卒業後、札幌医科大学附属病院、道立小児センター、旭川赤十字病院などに勤務。2001年より3年間、アメリカのNIH(アメリカ国立衛生研究所)にてウイルス学、ワクチン学の研究に携わる。帰国後、札幌医科大学新生児集中治療室(NICU)室長に就任。2009年、栃木県に移住し、現在は那須烏山市にある「七合診療所」の所長として地域医療に従事しながら、自然に沿った暮らしを実践している。