vol.220 スローフード・スローライフ

 イギリスのことわざで、「食べることは生きるための手段であって、決して目的と取り違えてはいけない」という意。このことわざは、ギリシャの哲学者であるソクラテスの格言『Thou shouldst eat to live; not live to eat.』から由来したと言われています。
人間は生きることが最大の目的であり、食べることは手段にすぎません。このことわざは、「人間にとって本当に大切なものは何か」という問いを私たちに投げかけています。

「スローフード」運動がおこった1986年にどんなことがあったかというと…  実は大手ハンバーガーチェーンがイタリアに進出し、 ローマのスペイン広場に1号店を開店したことからはじまります。イタリア人のアメリカ資本のファストフード店に対する反発は、 私たち日本人の想像をはるかに大きく超えたもので、 この際に起こった反対運動が、 伝統的な食文化を評価する「スローフード」 運動に発展したそうなのです。食を根本から考え直すという深い意味合いがある、とても素敵な言葉ですね。

 

スローフードの発祥
スローフードは、1986年にイタリアのピエモンテ州ブラで提唱された草の根運動のことです。イタリアが発祥のこの運動は160以上の国に広まり、国際組織となっています。日本でも、スローフード国際本部から承認を受けた一般社団法人日本スローフード協会が2016年に発足されました。
大きな組織はありますが、スローフードはまず個人的に行うもの。住んでいる地域で作られた食材を使い、食生活や地域に根付いた文化を見直すこともスローフード運動になります。

ファストフードとスローフードの違い
調理時間が短いものや注文してすぐに食べられるファストフード。代表的な食べ物としてはハンバーガーやフライドチキンが挙げられます。また、一部のうどんや牛丼もファストフードに分類されています。
外国から入ってきた食事形態のように思われがちですが、日本でも古くから存在していました。江戸時代に屋台で市中を回っていた蕎麦屋、おでん屋、天ぷら屋は、注文してすぐに食べられるファストフード。寿司も立ったまま気軽につまんで食べるものでした。
ハンバーガーに代表されるアメリカ式のファストフードが日本に伝わったのは、1970年代の初めごろ。以後、日本で続々とハンバーガーチェーン、牛丼屋、うどん屋などが誕生しました。
一方のスローフードは「食べ物をじっくり見直し生活に豊かさを持ちましょう」という活動を表すもので、食べ物自体を指す言葉ではありません。

スローフードと地産地消は同じもの?
スローフードと似た言葉として地産地消がありますが、この二つの言葉(活動)は、まったく同じではないものの、一部では重なりもあります。
スローフードは、その土地で作られた食材を使い、食生活や地域に根付いた文化を見直すことが大きな目的なのに対して、地産地消はその土地で作られた食材を使うこと自体を目的としています。ですから、文化にまでは深入りしていないのですね。つまり、大きなくくりで捉えると、スローフードという大きな活動の一部分に地産地消の考え方がある、と理解しても構いません。

スローフードは、「たべ物ものをじっくり見直すことから、生活に豊さを持とう」という運動であることがわかりました。
ということは、食品添加物を使わない伝統的な食材、その土地ならではの素材を生かした食べ物のこと。日本なら、米や味噌、しょうゆといった伝統的な食材、それらを生かした郷土料理など。自然栽培された旬の野菜など、その時、その場でしか食べられないものなどの価値を見直していくことが、環境にもいい影響となっていく…そんな生活を取り入れた生活スタイルは「スローライフ」と呼ばれています。

日本から「おいしい」があふれる地球へ

毎日にある「おいしい」は、お腹だけでなく、心も満たしてくれます。地球の未来を守るための「おいしい」。7世代後の子どもたちに届けたい「おいしい」。食はいのちであり、未来です。私たちの「おいしい」が、これからもずっと続いていくために誰かや何かの存在でそれが成り立っていることを私たちは決して忘れてはいけません。それは、地球が織りなす大地や海、生態系のハーモニーと日々それに向き合い続ける作り手たちの存在。Slow Food Nipponは、草の根活動であり、国際的な組織として地球とすべてのいのちが生き生きとあるための「おいしい」を日本中、そして世界中の人たちと共に考え、選択し、実践していきます。

スローライフを生活に取り入れるポイント BoConceptより

スローライフとは「時間に追われることなく、自分のペースで日々の暮らしをのんびりと楽しむライフスタイル」のこと。私たちの生活は昔と比べて格段に便利になりました。その反面仕事でもプライベートでも効率を重視しすぎて時間に追われ、過度なストレスがかかっているのも事実です。
スマートフォンを通して大量に入ってくる情報や、いつでも誰とでもつながれる生活は、オンとオフの境目をあいまいにするため心身がなかなか休まりません。このような行き過ぎた情報化や効率化に疑問を抱く声が増え、スローライフが注目されるようになりました。

スローライフを実践することで得られる効果
第一にあげられるのは、ストレスの低減です。多忙な生活は心のゆとりを失わせストレスにつながりますが、スローライフを上手に取り入れれば時間的なゆとりが生まれ、ストレスを減らすことができます。
第二が健康面でプラスの効果を見込めることです。スローライフを実践して一日をできるだけ自分のペースで過ごせれば「忙しく追われている感覚」をなくすことができます。規則正しい生活や自然と触れ合う生活は身体の健康につながります。

自然光の活用とアウトドアリビング
アウトドアリビングとは、室内リビングとつながったテラスやウッドデッキなどの屋外リビング。部屋と外の自然がつながっているように感じられ、スローライフを体感できます。アウトドアリビングでガーデニングをすれば、植物の四季折々の美しさを部屋から日々愛でることができるでしょう。小さな読書コーナーを設けるのもおすすめです。