コミュニケーションは「意思の疎通」双方向で意思が伝わること。関係性の中でお互いの意思が伝わること、信頼関係を築くこと。インターネットが日常に根付いて、いつでもどこでも誰とでも「つながれる」ことが可能になっています。では人は果たしてどのような「つながり」を求めているのでしょうか。そして、ネットによって人と人とのつながりは深まったのでしょうか。
つながって、そこからコミュニケーションが生まれて関係性を築いていく。今号は「コミュニケーションする生き物たち」の特集です。
コミュニケーションは、言葉だけではなく身振り手振りといった動きを加えて自分の考えを相手に伝えたり、相手から伝えられたりすることで成り立ちます。互いを理解し合うために必要なことだといえるでしょう。しかし、言葉もなく身振り手振りもできない植物の世界には、こんなコミュニケーションが成り立っていました。
知られざる植物の驚異的な能力。
超進化論(NHKスペシャルより)
植物は言語を持たないと思っていたが、離れた相手とおしゃべりをしているという事実もわかってきたんだそうです。ある不思議な現象でそれが明らかになりました。
一部の木が虫や動物に食べられた時に、なぜかその周辺の木々はあまり食べられない。どうして、そんな不思議なことが起こるのでしょう。また、青虫のいる植物といない植物を並べて特殊な顕微鏡で観察すると、青虫のいる葉っぱでは、食べられたことを感じて防御反応として身を守る毒の物質を作りました。驚くのは虫のいない植物。虫に触れられてもいないのに同じ防御反応を起こしたのです。
虫に食べられた木からは10種類以上もの物質が発せられていました。これはいわば植物が発するメッセージ。それを食べられていない植物に送ることで、防御の遺伝子が働き始めます。虫に食べられた葉から出ていたのは、「食べられた」というメッセージを周りに伝えるための物質。すると、周りの植物は敵が来る前に防御することができます。つまり彼らは、敵が近くにいることを周りに知らせるコミュニケーションをしていたということになるのです。植物は物言わぬ寡黙な生き物ではない。コミュニケーションを取る生き物だったのです。
さらになんと、植物が植物以外の他の生き物にまで同じようにメッセージを送っているということもわかってきました。例えば、楡の木は葉に卵を産み付けられると、ハムシが卵を産んだというメッセージを発して、その天敵のハチを呼び寄せる。コミュニケーションを取る相手は虫だけではなく、赤松はマツバハチの幼虫に食べられると、その幼虫が大好物な鳥、シジュウカラを呼びます。
自然のカで虫や鳥は自分の力だけで食べ物を見つけているのではありません。人間の知らない膨大なコミュニケーションがこの地球には存在しているのです。
「植物は地下世界でも助け合って生きている!?
植物の根の先を見てください。これは「菌糸」と呼ばれる細い糸状の菌で、世界中の植物の80%がこのように菌と繋がって共に暮らしています。
菌というのはキノコを作ったりする地下の微生物のこと。菌糸は根の内部にまでに入り込み一体化しながら土の中にびっしりと張り巡らされていく。植物は窒素やリンなどの栄養の大部分を実は菌から得ています。
そして驚くことに菌と菌はつながり合うことで、森中の木々をつないでいることが突き止められたのです。なんと地下には木と木をつなぐ巨大なネットワークが存在していることがわかってきました。
私たちはこれまで植物は、隣の植物と競い合って、光や栄養分の取り合いをしている、競争していると考えてきた。しかし、実際は全く違い、むしろ彼らは、ネットワークを介して強い協力関係を築くことで、安定した生態系を作っていたのです。
森の地下に広がる 助け合いの世界
それこそが地球を覆い尽くす陸の王者、植物が大事に守り抜いてきた生きかただったのです。自然界の掟について、自然科学者チャールズ・ダーウィンが唱えた進化論。それから160年余り。当時の常識を超えて、最先端の科学はより広くより早く生き物たちの進化の仕組みを明らかにしようとしています。私たち人間に見えている世界とは異なる植物たちが生きているもう一つの世界。ここには私たちが暮らすこの地球の命の多様性を生み出していた、進化の本当の姿があるのかもしれません。
動物の世界ではどうでしょう。(TED Edより)
カニは仲間にハサミを振って自分の健康状態を知らせるそうです。
イカは色素胞と呼ばれる皮膚細胞の色素で皮膚の模様を変えてカモフラージュしたり、ライバルを威嚇したりします。ミツバチは自分の動き、角度、感覚、ダンスの激しさで、食べ物の場所や豊富さを表現し仲間に知らせます。プレーリードッグは何千もの仲間と共に暮らしていて、コヨーテやタカ、アナグマ、ヘビやヒトといった敵がいます。彼らは警戒音を出すとき、捕獲者の大きさや姿、スピードだけでなく敵がヒトの場合はどんな服装をしていて銃を持っているかも知らせるのです。チンパンジーやゴリラといった大型人類猿も巧みなコミュニケーション能力を持っています。巧みなコミュニケーションの例として年齢や場所、名前や性別を口笛で伝えるイルカのような生き物がいます。イルカは文法もいくらか理解でき研究者がイルカとのコミュニケーションに使用する身振りを理解します。
ヒトの脳は有限数の要素から無限のメッセージを作り出すことが可能です。私たちは複雑な文章だけでなく全く新しい言葉を作り出したり理解することができます。私たちは言語で限りないテーマを伝達でき、想像上の事柄について話し嘘をつくことさえできるのです。
ヒトの言語と動物のコミュニケ—ションは全く異なるものではなく、連続的な存在だと思われます。つまるところ誰もが動物なのですから。