虫食いの穴が開いたセーター、シミがとれない服、剥がれてしまった靴…。そんなものを発見すると、奥村さんはちょっとワクワク。それらをどんなふうに復活させようかアイディアをひねります。ただ元通りに修理するのではつまらない、自分の手を通してひと味加えて仕上げたい。セーターだったら、穴の大きさや形、素材の色やセーターのデザインなどを考慮し、フエルト、ビーズ、刺繍などを駆使します。見た人が一瞬「どうなってるの?」と考え、その後くすっと笑っちゃう、そんなデザインを考えるのが大好き。
好評だったのがフエルト、刺繍、ビーズで仕上げた蝿。「あれ?こんなとこに蝿がとまってるよ」「へへ、違うよん」なんて楽しい会話を想像しながら仕上げました。
奥村さんが最初にちくちくしたのは、虫食い穴がいくつも開いてしまったお気入りのウールのカーデガン。高かったし、とっても気に入ってたから捨てるという選択肢はなく、どうしようかと考えていました。友人がこんなのがあるよと、フエルトを使って穴を塞ぐやり方の存在を教えてくれて、早速やってみると意外と簡単で面白い! 穴の空いたところだけではなく、全体の様子を見てバランス良くフエルトをちくちく。もともと物は捨てずに大切にするタイプの奥村さん。大切なカーデガンを捨てずにすんでほっと一安心。そして、これなら簡単によりよい形で再生できるし、本体がいよいよダメになってもちくちくしたパーツだけ切り取って他のものに貼り付けて使うこともできる。以来セーター、靴下、洋服、靴と再生させ楽しい趣味が一つ増えた感じ。
家族や友人に頼まれると、服のデザインはもちろん、その人の雰囲気や体型、好きなものなどを考慮し、イメージを膨らますことから始める。その人らしさを大事にしたいから、ここが1番時間をかけるところ。完成形が定まれば後は仕上げに向けて全集中。「小さな直しでもすごく時間がかかることもあるんです。だから、直してってこの冬に頼まれてもできあがりは来年の冬だよって言うの」そんなのんびりしたスタンスは自分に合っていて、ストレスなく楽しめると奥村さんは笑います。
ちくちく再生は楽しいけれど、ただ楽しいだけじゃない。こうやって物に向き合うことで、自分自身を見つめることにも繋がっていきます。
「必要のない物はきちんと整理してサヨナラすべきだけど、誰にもひとつやふたつ『愛着や思い入れ』のある手放したくないものがあるはず。そんな物たちをもう一度甦らせることができたら、物ではなく自分自身を大切にできた気持ちになりますよ。ぜひ、試してみて下さい。」