vol.204 熱中人 延広 亜希子さん

子どもたちが自分らしく輝くために

フリースクール「らすくの家」を始めた 延広 亜希子さん (各務原市在住)

 「目標は、学校に行けるようになることではなくて、いつか大人になった時、イキイキとその人らしく社会と関われるようになることです」。今年6月に「フリースクールらすくの家」を立ち上げた延広さんは語る。
 自宅で学習教室を17年間続けながら、小学校での読み聞かせボランティア、通信制高校サポート校での勤務などを続け、常に子ども達とふれあう日々を過ごして来た延広さん。
 学習教室にやってくる子の中には、学校を休みがちの子もいたり、それとなく子どもの心配事を話すお母さんもいる。通信制高校では、もっと話しができたら、と心配になる子もいる。そんな子ども達の姿を間近で見てきた。

 フリースクールを始めた直接のきっかけは、「そろそろ自分が本当にやりたいことをやってみたら?」というある人のアドバイスだった。
 その言葉を聞いた時、何かが心にストンと落ちた。今までの子どもとの関わり方でも意義を感じてはいたが、「もう一歩踏み込んで子どもたちと関われたら」と感じる場面がたびたびあったことが思い浮かび、自分の中で埋もれていた気持ちが見えてきた。
 「私は長年子ども達と関わっていますが、専門的な資格を持っている訳ではないです。でも、だからこそできる接し方もあるのでは。こうしなさいと教えるのではなく、その子のためにはどうすることがいいのか、親さんと一緒に考えるというスタイルでやっていきたいんです」。それにはまず、子ども、お母さん、時にはお父さんの話を時間をかけてしっかり聞くことから始める。

 子ども達に家庭的な雰囲気で過ごしてほしいとの思いに家族も協力的で、「らすくの家」は自宅の一部を開放。音楽が趣味の延広さんの家には楽器も多い。「ここでは、ドラムを叩いてもいいし、ウクレレやピアノを弾くのも楽しいと思うし、絵を描いていてもいい。今後やりたいと思っているのは、お昼ごはんをみんなで材料の買い出しから、調理し、食べて、片付けまでをしたいなってこと。 いろんな楽しみを知ってほしくて」。自然の中に出かけて、季節を感じる活動もしたい。学習面でのサポートもするし、らすくの家で過ごしながら、自分の好きなことを見つけ、そこから自分に自信を持ってくれたら。「家でずっとゲームしているのもなんだから、らすくの家に行こうか、そんな感じでいいんです」。
 家でも学校でもない、第3の場所が子どもには必要なのでは、と延広さんは考える。
 「学校に行けなくなったきっかけは、友達に嫌なことを言われた、授業についていけなくてつまらないなどさまざま。大人からみたら些細なこともあるけど、そこからどう抜け出したらいいのかわからずに苦しんでいる親子の姿をたくさん見てきました。学校にいくことが、全てではないけど、それがその子の希望なら少しでもその手助けをしたいですし、学校に行かない選択をとるのであれば、その子の最善となる道を一緒に探したいです」
 子ども達が自分らしく羽ばたくその行き先は、ひとりひとり違う。その場所にたどり着くための足がかりに「らすくの家」がなれたら、と思っている。「フリースクールらすくの家」は、まだ始まったばかり。
 「のんびりやの私ですからね、気負わず、ゆるーくやっていこうと思うんです」。
 淡々と語りながら延広さんは微笑んだ。


「らすくの家」は、看板犬ラスク(ミニチュアダックス)からつけた名前。不登校に限らず、子育ての悩みや、家庭での問題なども相談にのる。対象は小学校1年生から中学校3年生まで。詳細はホームページをご参照ください。「フリースクール らすくの家」で検索


のぶひろ あきこ
3人の子どもを育てながら、17年間学研教室で小・中学生の学習指導。地域の鵜沼第一小学校で読み聞かせボランティアや、英語ボランティアを行ってきました。学習指導、カウンセリング経験あり。教員免許所有。