vol.203 熱中人 江崎恵子さん

あずき本来の味を若い世代にも伝えたい

小豆は縄文時代からあり、邪気を払う赤い食物として、祝い事に食べられていた、すばらしい食材です。

「あんこカフェ」をオープン 江崎 恵子さん(関市在住)

 今年5月、関市の本町商店街に小さなテイクアウト専門店「あんこカフェ」が誕生した。店長は、元満月堂の二代目店主、江崎恵子さん。満月堂と聞けばあの満月焼き(大判焼き)の店、と思いあたる方も多いのではないだろうか。

 12年前、満月堂店主の義父が突然亡くなった。店は閉めるしかないと思ったが、義父が大切にし、多くの人達に親しまれてきた満月堂。惜しむ声も多く、閉めるのはしのびないと一念発起し、残されたレシピをもとに満月焼きを復活して店を再開した江崎さん。しかし、満月焼きのあんこの仕込みも焼くのも一人。満月焼きを焼く機械は癖があり、独特のコツが必要。それを何とか使いこなしながら、立ちっぱなしで焼くのは想像以上の重労働だった。時の流れにしたがい売り上げは下降して行った。
 「このままでは商売として成り立たないのではないか、その思いが頭から離れなくなって、それが怖くて怖くて」心身ともに疲れきっているときに、義母が発病した。ここが潮時と、7年間続けた店をたたんだのは5年前の事だった。

 もう商売はこりごり。二度と店を開くなんてあり得ない。そう思いながらハタカツ(畑活)をしたり、京都まで着物リメイクを習いに行ったりという日々が続いた。
 そんなある日、「え、満月堂をやっていたの?じゃあ収穫祭にはあんこを炊いて持って来てよ。」とハタカツ仲間に言われ持って行くと大好評。お世話になったお宅にも届けたら、「あんこは嫌いという夫が、これはうまいとたいらげたのよ。うちであんこのワークショップしてくれない?」とまで言われた。
 そういえば、美味しいと評判の和菓子をいただいても、市販のものを買ってもイマイチピンと来なかった江崎さん。「私が炊いたあんこの方が好きだな、という気持ちはずっとあって。」
 そんなとき、江崎さんのあんこの美味しさを知る仲間から、関市にできた施設「本町BASE(ベース)」で何かやらないかと声をかけられた。「何ができるというわけでもない自分だけど、あんこを炊く事だったら私にもできるって思ったんです」。

 出店が決まると、本町BASEの担当者の提案で、関商工の生徒とのコラボ商品を開発することに。まずはあんこを学生たちに試食してもらうことから始め、試行錯誤を重ねた末に完成した商品「春巻き五郎」は大好評で早々に完売した。
 イベントは好評のうちに終了したが、一過性に終わらせてはもったいないという思いが残った。「せっかくここまでやったのだから、仕事に結びつけたくなったんです。拠点を持ってやってみようって」。さいわい義父母の住んでいた家は空き家となっていたが、あんこの仕込み場も残されていた。取り外してあった水道を引き直し、素人ながら壁にペンキを塗って手作りで模様替えもした。
 得意のあんこを使った商品は「おはぎ」。てんさい糖と麦芽水飴を使ったあんこは、甘さは控えめで、小豆本来の味が活きる。ある程度寝かせた方が馴染んで美味しくなるため、江崎さんは真夜中にあんこを仕込むこともざらだ。
 関商工の学生たちにあんこを試食してもらった時の「おいしい!」という言葉も励みになっている。「今は設備的にできることが限られていますが、あんこを使った商品をもっと開発して、若い世代の方にも、あんこの美味しさ、良さをもっと知ってもらいたいんです。」
 もうひとつの主力商品「ヘルシー弁当」は低カロリー、低糖質で、調味料を厳選した体に優しいお弁当。これは、主婦が作ったお弁当っていいよね。という声を受けたもの。お母さんが家族の健康を願い、メニューや味付けに工夫する、そんな温かさが漂っている。
 「おはぎもお弁当も、みなさんが食べて健康になってもらえるものを作っていきたい。その気持ちは大きいですね。」
 江崎さんは今日も元気に店に立つ。
 
 





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