記者雑感 From気仙沼-(Vol.7)

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01歌を忘れたカナリアは、後ろの山に棄てましょか。
この童謡が頭に浮かんだのは、仮設住まいの女性から「料理することを忘れてしまった」と聞いたからだ。支援物資で暮らした避難所生活からやっと仮設に移ったのに、台所が狭くてまな板を置く場所すらない。独居だと食材の消費量が知れており、腐らせるのが勿体ないという思いが働く。結果、送迎バスで行くスーパーの298円や398円の弁当で食事を済ませるのが習慣になってしまった。添加物に目をつぶれば、確かに、おかずが豊富な商品は多い。
私も一人暮らし。外食が多いが、さもなくば自炊だ。スーパーで異常なほどの総菜や弁当を買うお年寄りにレジでとても待たされるのが気になり、そんな生活があることが分かった。誤解だといけないので幾人かに聞くと、別の女性も「仮設の人は、本当に作らなくなった。皆ではないけれど」とのこと。
2千戸の災害公営住宅建設を進める市は、どんな家が望ましいか、建築家や仮設の住民と今年に入って4回話し合った。工事費や立地など民間が介入しにくい要素は別として、「気仙沼らしさ」について、市は積極的に意見を求めた。
「もらったカツオを処理できるシンクをつけて下さい」。ある仮設の代表が発言した。そうそう、カツオは買わずにもらう物。ワカメやサンマも。確かに「気仙沼らしい」と、その時は笑っていた。けれどその後、料理することを忘れた冒頭の女性に会い、包丁を握らなくなった人がカツオをもらってどうするのかと疑問がわいた。
加えて。公営住宅は、地形や防災の面から、ほとんどが山間・内陸部にできる。防災集団の移転先も、津波を避けるために引っ越すのだから同じだ。田舎の山を切り開いて集落を作ることは、過疎の集中化・固定化につながる。そういう指摘は以前からあり、菅原茂市長も分かっている。なのに、「まずは落ち着ける家を」と望む被災市民の願いを前に、問題に蓋をしているように見える。
裏山に、真新しい公営住宅ができました。入居したお年寄りは、出来合いの弁当で命をつないでいます。もしそうなるなら、山に棄てられたカナリアではないのか。ただ、仮設の人々の生活がおかしくなったのは、狭い台所しか提供できなかった行政の責任だけではない。自ら何かを作ることを半ば放棄した、被災者の心の持ちようも大きい。
童謡は、条件が整えばカナリアも歌を思い出すだろうと前向きに終わる。被災者の皆さんは人間で、鳥ではないでしょう。

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