VOL.163 平和のつどい「今こそ求められる憲法の力」伊藤 真

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この国はアクセルだけで進んで来ちゃった。でも幸い大事故を起こさないでここまで来ました。しかし、ブレーキ役を果たしてくれる政治家や政党がいなくなった。それでも自由民主党の中にもリベラル派保守の人たちが、「憲法9条は大切なんだ!戦争だけはやっちゃいけない!」と叫んだり、社民党や共産党など、いわゆる野党がブレーキ役を果たしてくれてはいます。が、現実はどうでしょうか。押さえきれている野党がいるとはいいにくいですね。 法律は国が国民の自由を制限した社会の秩序を守るための道具ですが、憲法は国民が、国家権力の乱用に歯止めをかけるための道具です。憲法は、国民の権利(人権)・自由を守る法で、あくまでも人権保障が目的。近代の国家みんな共通です。そこに日本は、「戦争させない」という目的も追加しました。 人権を守るために、憲法の中に人権規制ばかりあるのはあたりまえですね。憲法を守らなければいけないのは、国の政治家や官僚や裁判官や自治体の首長さんや、職員のみなさんたち、公務員のみなさんたちです。ですから憲法を尊重し擁護する義務を負うとして、99条※にあえて、国民を入れなかった。国民には憲法を守る義務なんてこれっぽちもないんです。

02

私たちが政治家たちに憲法を守らせるというのが国民主権。私たちが主体となって憲法をつくり、憲法どおりの仕事をさせることなんです。

03

強い力は何も権力だけではありません。暴力や腕力、お金の力、会社関係、社会的地位、専門知識、いろんな強い力をもっている人が、それを理不尽に行使しようとするときに、ちょっと待ってください!これはおかしいぞ、弱い者いじめじゃないかって声をあげる。さまざまな強弱の関係がある中で、強い立場の人を縛り、弱い立場の人をまもっていく、というのが、今日の憲法の役割なんですね。 誰もが強い面もあれば弱い面もあります。多数派と少数派は入れ替わることもありますよね。他者への共感というのは単純だけど一番難しい。ではどうしたらいいか。イマジネーション・想像力を働かせることなんです。私は本土の東京の人間で、今の安倍政権になってから、政府はなにやっているんだ!とただ「政府」と言いますが、沖縄新聞を見ると、この政府がやっていることに対して「日本政府は・・・」というんですね。「日本政府vs琉球」。沖縄のみなさんたちは今どんな思いでいるんでしょう。そういう想像力、他者への共感・配慮、それが、憲法の最も大切な価値である個人の尊重ということに他ならないんですね。(憲法13条「すべての国民は個人として尊重される。」) 自分が他者と違っていい、ということを認めあえることは、自分が自分らしく生きればいいんだ、そう思えると心に余裕ができて自信がうまれます。そうすると、自分と違う他者の存在、いろんな違う考え、自分と違う宗教や国籍の人を認める心の余裕がうまれてきて、多様性を受け入れることができる。そういう社会ができていくんじゃないかと思うんです。 個人のレベルで人と同じ、人と違う、それと同じように、国のレベルでも他国と同じ、他国と違う、があっていいはずです。この他国と違うところ、日本だけ集団的自衛権が行使できない、日本だけ軍隊を持ってない、それは情けない、と思う人もいると思います。しかし、それこそ「誇り」なんです。

04

憲法はもともと理想なんです。理想と現実は食い違う・・・むしろ、理想と食い違うからこそ、憲法という理想を掲げるんです。なにも9条だけではありません。14条の「法の元の平等」という理想。それから25条の生存権「すべて国民は健康的で文化的な最低限度の生活をする権利を有する」。いかにその理想に現実を近づけていけるか、それが、今を生きる私たちの責任です。さきの先輩たちが、自由で平和な世界を創って下さいました、それを、守るのは先輩たちへの責任なんです。そしてもちろん、次の世代へ引き継ぐ責任がある。両方への責任があるんです。そして憲法を知ってしまった者の責任。 話題にして下さい、声をあげて下さい、こうした集会に参加するのもいい、署名運動もそうです、パレードに参加するのもいいでしょう、新聞やテレビに投稿するのもいいでしょう、電話をかけてみるとか、地元の議員にファックスを流すだとか、とにかく声をあげ続けるということがとても大切なんです。 安倍政権が集団的自衛権を閣議決定したことを国民は忘れていませんからね!国民の知らないうちに憲法が変わってたなんて絶対に許しませんからね!というかたちで、私たちが声をあげ続ける、それが何よりも大切なことと思います。そして最後に私の好きな言葉で締めくくります。 Festina Lente(ゆっくりいそげ)

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伊藤さんのお話は90分でしたが内容は200分以上!!・・・日本国憲法の成り立ちの解説も含め、本当にわかりやすい!!!。紙面にはほんの一部の掲載となりましたが、全文をご希望の方は編集部までご連絡下さい。

 

 





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