vol.191 大いなる循環

 地球上の人口が増えて、巨大なビルなど建造物を建てても、地球全体の重量は変わりません。人間も物も、地球上にもともとある物質の形を変えて作られていくからです。
 私たちが暮らすこと全てが自然のバランスに影響を与え、結局は、私たち自身の健康まで影響を与えているということを常に気にかけて暮らすことはとても大事なことです。では普段のくらしの中でどんなことに気を配り暮らしたらいいのでしょうか?

 この「循環」に大いにこだわって活動をしている人たちがいます。一つは、菌ちゃん野菜応援団/東海支部の方たち。本紙18ページに活動レポート掲載中です。にらめっこ編集室でも、循環にこだわって事務所裏の畑で野菜作りをしています。

どんな循環?

 まず、台所から出る生ごみをコンポストに入れて(にらめっこは段ボールコンポスト)堆肥にします。それを畑にすき込んで、野菜を作る。収穫した野菜をいただき、そこから出る野菜くずをまたコンポストに・・・いたってシンプル。
 これだけでも、ゴミの量がグンと減ります。しかも生ごみ堆肥で作られた野菜たちの美味しいこと!例えばニンジン嫌いな子でも、この菌ちゃん野菜なら食べられる!という報告は定番となっているほど。農薬は一切使用しないので安心なのはもちろんですが、「菌ちゃん」たちがとっても元気に生ごみを分解してくれて、そのまま生きて土に潜り込んでくれるから、土がすごくいい状態になリます。普段はあまり意識しないと思うけれど、土と私たちは切っても切れない関係にあります。人は土なくしては生きていけない。土は私たちと密接に関係しています。肥沃な土は豊かな食をもたらしてくれます。そこにも大いなる循環があるのですがその循環を断ち切ってしまう一つの要因は「農薬」「化学肥料」ではないかと思うのです。

ナショナルジオグラフィック5月号では

「トウモロコシや小麦、米など人間が主食にする農作物は、とりわけ多くの窒素を必要とするため、自然が与えてくれる窒素だけでは足りないのだ。
 大気中に大量に含まれる窒素ガスは、巨大な工場で化学反応によって水素ガスと結びつき、植物が利用しやすい窒素化合物に生まれ変わる。こうして生産された窒素肥料が、毎年、世界中で1億トンも使われている。今や、窒素肥料なくして70億人を養うことはできないのだ。現に、私たちの体に含まれる窒素の約半分は、元をたどれば化学肥料に由来している。

窒素肥料漬けになる農家

 1970~90年にかけて、中国では人口が3億人も増えた。農家もそれに合わせてさまざまな手を試みた。南京近郊に住むある農夫は、0.5ヘクタールの農地をなんとか肥沃にしようと、生ごみを堆肥にし、人や家畜の糞尿をまいたという。そうして農地1ヘクタール当たりの米の収穫量は3000キロを超えるほどになった。世界の水準を上回る立派な数字だ。
 だが現在、彼はさらにその倍以上の8100キロを収穫している。農夫が田畑にまく窒素は以前の約5倍に増えた。農地は固形肥料として与えられた尿素で飽和し、窒素の投与量は1ヘクタール当たり590キロに達している。

現れ始めた代償

 だが、窒素を使い過ぎた代償が、環境問題や地球温暖化という形で現れ始めた。田畑にまかれた窒素化合物は、じわじわと周囲に流出し、しばしば環境に悪影響を及ぼす。一部の窒素は、直接河川に流れこむか大気中へと蒸発する。そのほかは、農作物に吸収されて一旦は人間や家畜の体内に取り込まれるが、下水や家畜の糞尿を通して、再び自然界へと循環するのだ。
 近年、中国政府が国内40カ所の湖で実施した調査によると、半数以上の湖が大量の窒素やリンに汚染されていることがわかった。リンを含む肥料は、湖に生息する藻類の異常増殖の元凶とされている。最もよく知られるケースが、中国第3の淡水湖、太湖だ。太湖では有毒なシアノバクテリアが幾度となく異常発生し、2007年には近くの無錫市に暮らす約200万人の生活用水が汚染された。また、中国の沿岸部では現在、「デッドゾーン」と呼ばれる酸欠状態の海域が生じ、魚が窒息死して漁業関係者に打撃を与えている。中国だけでなく世界的にも、窒素肥料の使用は増えこそすれ、減ることはないだろう。」
と述べています。

また農薬問題の第一人者のロメオ・キハノ博士の講演では

 「人間とは生きている地球の一部であり、環境の一部をなしており、切り離すことはできません。ですから環境を破壊するということは人間を破壊することになります。健康な状態というのは現在の医学が定義するようなただ単に病気でないということに留まらず、個々人と環境の間の調和された状態であると定義すべきです。そして病気とはその関係の乱れとなります。


 これらの要素は互いに関係しあいます。ですからどれかひとつを切り離すことはできません。ひとつの要素が阻害されたら他の要素も影響を受けます。遺伝子組み換え作物の導入は人間と環境の関係において生物学的な破壊を与えます。鉱物資源の採掘では大きな物理的な環境破壊につながります。プランテーションや鉱山開発のために、土地から人びとを追い出すことは人びとの社会面や精神的な面でも健康に悪影響を及ぼします。これらすべてが相互に影響します。個別に考えるのではなく、相互につながっていることを指摘したいのです。

世界を覆う農薬

 さまざまな化学物質が環境に導入され環境を破壊しています。中でも農薬が私の懸念事項の中心となっています。私は食の中の毒について語ることを続けています。多くの人たちがこの問題に気がついていないことについて警告を発せざるをえません。まず、農薬が世界で非常に幅広く使われているかということです。農薬に汚染されていない地域は世界にはありません。どんなに離れた村に行っても、農薬は検出されるのです。
 もしここフィリピンで農薬を使えば、たとえばカナダ北部の先住民族の村を汚染します。ですからフィリピンで農薬を使うということはカナダの先住民族の人びとを汚染することになってしまうのです。カナダの氷に囲まれ、農薬など使っていない地域で高いレベルのDDTが検出されるのです。大気の移動によってカナダのようなところにも汚染物質はビザもいりませんから国境を越えて広がります。この農薬がこのような広い地域に広がっているということは驚くべきことです。

生態系に与える影響

 農薬の与える影響は人体に対する悪影響に留まりません。農薬によって生物多様性が失われます。農薬によって昆虫が殺される。それによって生物の生態系が狂ってしまうわけです。トンボ類がいなくなり、土壌の中にいる微生物も殺されてしまうことで、他の農薬がターゲットとしていない生物も死んでしまいます。

精神の破壊=土地の破壊

 霊的という時にはみなさんが信じていること、動機、心理的なものすべてを含みます。特に先住民族の間で、大事な要素となっています。これは科学者や医者ではわからない。でも私は感じることができます。なぜなら、私の祖母は純粋な先住民族でした。ですから私は実際、先住民族でもあります。先住民族にとって、この霊的なものを感じることはとても大事なことなのです。そして、それは先祖から受け継いでいる土地と結びついています。
 この土地を破壊することは、この人たちの霊的なもの、精神的なものを破壊することになるわけです。これは破壊される側だけでなく、破壊する側の人たちの精神も破壊していると思います。傲慢で無関心で鈍感な彼らの行動そのもの、これは精神が破壊されているということの兆候だと思います。」
と述べています。
(ATJ ひとからひとへ 手から手へ)では、農薬と健康被害について述べています。(一部抜粋)