記者雑感 From気仙沼-(Vol.9)

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01 話が古くて恐縮だが、あの妄言を、安倍首相は絶対に口にしてはいけなかった。東京五輪開催が決まったIOC総会でのことだ。「福島第一原発の汚染水はコントロールされている」。

総会には、昨年のロンドン五輪フェンシング団体で銀メダルを取った気仙沼市出身の千田健太選手が参加した。決定の朝、市内に住む家族に会いに行った。父親の健一さんも、フェンシングのオリンピアン。しかし、モスクワ五輪の代表だったため、競技場には立てなかった。
だから「国内開催は非常に喜ばしいが」と、現職の県立高校長でもある健一さんは語った。「安倍さんのスピーチを福島の人はどう聞いたでしょう。五輪より復興を、と願う人たちが反対運動をせず、じっと我慢したことを考えて欲しい」。
極めて真っ当な感覚だと思う。

01 その5日前、村井嘉浩・宮城県知事が気仙沼を訪れた。市中心部の防潮堤について、住民らと話し合うためだ。テレビカメラを退場させた後、「港町はムテイも実現可能です」。ムテイ?「ああ、無堤(堤防なし)か」と気づくのに数秒かかった。

次に、なぜ今頃、という思いに見舞われた。建設計画を出してから約2年。景観を損ねないよう低く作ることも、頑なに拒んだ。譲歩は一切なかった。だから住民と折り合いがつかず、中心部の復興が最も遅れている。無堤OK? じゃあ、これまでの時間は何?
住民も当然同じ疑問を、知事にぶつけた。「高さを変えないと言ってきたはずだ」「誤解を招く表現だった。(比較的頻度の高い津波を防ぐ)基準を変えない、という意味だった」。何じゃそりゃ。国の、自治体の、トップの発言が軽すぎる。

01 それから11日後。気仙沼から避難して仙台市で暮らす人たちの親睦会があった。約80人が出席。出身地区ごとに席を設けたので、そこらじゅうで再会を喜び合っていた。その後は、菅原茂市長との懇談会。
市長は、五輪が開かれる2020年までに、気仙沼でも変化があると説明。新病院ができる、大島との橋が架かる、などなど。持ち時間の40分はたちまち過ぎ、予定していた質疑応答は流れた。言いたいことをぶちまけて終わり、はよくない。言葉と時間、どちらも意識するのが政治家だろう。

間違っていれば指摘していただきたい。フォード元米大統領が「私はフォード(大衆車)であり、リンカーン(高級車)ではない」とスピーチして人気を取ろうとしたそうだ。面白くないが、それなりかな、と思える。気仙沼で聞く安倍首相や村井知事の言葉は、クスリとも笑えない。

 

現役新聞記者(宮城県・気仙沼在住)

私の居る事務所県住居は、1階の浸水のみですみましたが、3軒隣の警察署も、少し離れた小学校も解体です。節電といわずと、家の周辺は真っ暗。人がいないから…街灯もいらないわけで……これから、気仙沼で自分の視たまま感じたままをお届けします。





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