vol.211 ボーダーレス社会をめざしてvol.69

NPO法人オープンハウスCAN 理事長 伊藤佐代子

障がい者の展覧会

息子の展覧会をした時に、アンケートに「こんな絵でよく展覧会をやるな」と。また、障がいのある人の書道作品に対しても同様にネットで「障がい者だったら何でもありなんや」と書かれた事があります。ある人には「あっちゃんは、障がいがあるから新聞に取り上げられるんやね。」暗に、普通の人だったら取り上げられないよねというニュアンスで言われた事があります。
どの方も芸術的とは認めてもらえなかったからの言葉でしょう。しかし、そのような事があっても怒り、落胆など全くなく、世の中にはいろいろな意見があるのだなと事実として受け止めてきました。
普段、私が美術館に行き「これが作品?」と思うことが実際にあります。作品を見る側の問題で、芸術的と見るかそうでないと見るかはその人次第です。障がいのある人が描きたいと思い、一心に描く。言葉で表せない何かを絵として表現する。出来上がった作品を批判するのは自由です。作り手には、表現の自由があり、受け止め手には、言論の自由があります。
ただ、人を傷つけるような言論は、控えるべきであると思っています。現実問題、障がいのある人の発表の場は、健常者に比べて極めて少ないです。チャンスがあれば、おおいに展覧会をし、障がいのある人の作品を見せる努力をしていかなくてはいけないと考えています。そんな訳で、11月の初旬に、障がいがある息子が岐阜市で「伊藤淳司作品展」を開催しました。私の肩をトントンとたたき、「前の展覧会から4年が経ちました。いっぱい絵ができました。」と珍しく展覧会をやってほしいと言ってきました。20日ほど前からカウントダウンが始まり、「あと何日」と楽しみにしているのが分かりました。自分の好きな人が集まってくれることが何よりの楽しみのようでした。絵を媒体とし、コミュニケーションを取るという方法でしょうか?いいものを彼は見つけました。絵を描き、展覧会を開けば人が集まってくれると考えたのでしょう。
自閉症であっても決して自分の殻に閉じこもるのではなく、人が好きなんだと思います。ただ、どう接していいのか分からないのでしょう。知っている人が来て下されば、全部の絵の説明をし、最後に「終わり」と言い、その場所からさっさと離れてしまっていました。それが彼の人との接し方でした。土・日曜日は、1日5時間、展覧会場に詰めていたわけですから素晴らしい成長だと思います。息子の絵を最初に見出して下さった方がお祝いに来て下さり「今回の展覧会が今までの中で一番好き」と言って下さいました。多くの人に支えられ今があると感謝しております。
現在の息子になるまでには、楽な道のりではありませんでしたが、結果オーライです。展覧会場で、通りすがりの若い人たちの「ワ~かわいい!!」「何か癒されるのよね。この絵」という声が、何だか忘れられません。