vol.196 ボーダーレス社会をめざして vol.55

NPO法人オープンハウスCAN 理事長 伊藤佐代子

青年学級

 毎月1回、ボウリング、バス旅行、お茶会、博物館や美術館での鑑賞、飲み会、料理教室などを行っている障がい者で作る「青年学級」というものがあります。忘年会は毎年、岐阜グランドホテルで会食します。いつも静かに皆さんフォークとナイフを使い、昼食をいただきます。騒ぐ人は一人もいません。青年学級に来ているレベル(一人で公共交通機関を使える)の人は、ほんの少しの的確な支援で、理解し行動できます。本当に彼らの特徴を知っていれば、少しの支援で普通と呼ばれる人たちと何も変わらないくらいにできるのです。
 息子が、特別支援学校の高等部を卒業する時に、障がいのある人が社会に出てから孤立しないようにという趣旨に賛同して下さった人と青年学級を立ち上げました。当時、私はPTA会長をしていて、学校を卒業した後、障がいのある人が楽しく過ごせる時間を持つことができないか?25年前ですが、岐阜市にはすでに、青年学級というものがありましたので、各務原市にも作れないか考えていると校長先生にお話をしたら、先生方がボランティアでお手伝いをするから、始めましょうということになりました。
 息子が卒業した翌月の4月から、毎月1回何か行事をするということでスタートしましたが、当初は世話人2人、参加者2人というように人気のない青年学級でした。しかし、今では30名弱の登録者がいて、毎回5人以上の参加があります。年度初めに、開級式というものを行い年間計画を作ります。「ボウリングは年2回やりたいから減らさないで。」「旅行は京都などの観光より、○○狩りとか、遊園地がいい」など、年度末に皆さんの気持ちを聞き、世話人の集まりでそれを反映し年間計画を予め作っておきます。それをもとに開級式で、月毎の行事を進行する当番やバス旅行先を決めます。バス旅行の行き先は、3つの案から行程表や費用を考え挙手により多数決をします。
 今までユニバーサルスタジオ、長島スパーランド、志摩スペイン村、ラグーナテンボス、京都、奈良などいろいろな所へ行っています。できる限りご本人たちの意思を尊重するよう、世話人が前に出ないお手伝いを心掛けています。現在は青年学級を理解して下さっている人たちで「知的障がい者の余暇活動を支える会」というものを作り運営をしています。私は今、世話人の一人となり少しだけお手伝いをしています。
 2年前の忘年会の帰りのバスで「今日、楽しんだから、明日からまた頑張る!」と言った人がいて、青年学級を続けてきた意義は、この一言に尽きると思いました。今年は、残念ですが新型コロナウィルスの関係で、1年間お休みになりました。笑顔の皆さんにまた会えるのを楽しみにしています。