第9回 続・続「農薬」について
ラウンドアップ規制の流れ
『にらめっこ』165号で、国際保健機関の下部組織、国際がん研究機関が除草剤ラウンドアップの有効成分グリホサートが人間で発がん物質である可能性が高いと分類したと書きました。グリホサートは除草剤ラウンドアップ以外に、多くの安価な除草剤の有効成分です。人間の調査や動物実験でがんが起こることが分かっています。
『にらめっこ』171号では、国際がん研究機関がグリホサートを発がん物質として分類した後の、世界の動きをお知らせしました。主な動きは次の通りです。英国領バミューダやスリランカではグリホサートを含む除草剤の輸入や販売の禁止し、コロンビア政府はコカインの原料となるコカ栽培を妨害するためにグリホサートを散布していましたが、中止しました。
錯綜した欧州連合の動き
グリホサートをめぐって米国やニュージーランド、コロンビアなど世界中に複雑な動きがあります。特に欧州連合の動きは注目されています。
欧州連合でグリホサートの免許は6月に切れます。欧州連合はグリホサートの免許を認可するか否かで、意見が鋭く分かれています。欧州連合の行政機関、欧州委員会はグリホサートの免許を15年間とすると提案しました。4月、欧州議会はグリホサートの免許再認可に関し、再認可期間を欧州委員会が提案した15年ではなく7年間とし、グリホサートを一般人が使えなくするなどの厳しい使用条件をつけると決議しました。その後、欧州委員会はグリホサートの免許期間を15年から9年と短くし、免許更新を再び提案しましたが、欧州委員会の常任委員会はグリホサートの認可更新を認めません。グリホサートの免許が失効する直前の6月、欧州委員会はグリホサートの免許を18ヶ月延長しました。欧州連合加盟国は7月に委員会決定を認めましたが、公園や運動場ではグリホサートを使用に厳しい条件がつきました。決定過程で環境グループが大きな影響を及ぼしました。
近くの農薬散布が不安な場合
世界中で問題になっているグリホサートを、化学業界は塩より安全と不謹慎な宣伝をしてきました。時と共に、グリホサートのように発がん性などの毒性が明らかになることがあります。これでは自分の周辺で農薬散布がされると不安になるでしょう。農水と環境の両省は「住宅地における農薬使用について」という通知を出し、不安に応えようとしています。不安な時は通知を良く読んで下さい。通知はインターネットで簡単に検索できます。その重要な内容の一部を示します。私の知っている方は、畑の蔓草に除草剤を塗布する時でさえ、周囲の方に声をかけています。
「公園、街路樹等における病害虫防除に当たっての遵守事項」
・草木を植える時は、病害虫が発生しにくい植物を選ぶ
・定期的農薬散布をやめ、早期発見により、捕殺(ほさつ:捕まえて 殺す)など物理的方法で 対応するように「最大 限努める」。
・やむを得ず農薬を 使う場合、農薬の塗布など散布以外の方法を活用する。
・やむを得ず散布する場合は最小限にし、健康に影響が少ない微 生物農薬などを選択する。
・散布農薬が飛散しないように努める。
・事前に周辺住民に農薬散布の日時や使用農薬などを、時間的余裕を持って広く知らせる。
・周辺に学校や通学路がある場合、散布時間を配慮し、学校や保護者に広く知らせる。
・農薬使用者以外の人が散布区域に立ち入らないようにする。
「住宅地周辺の農地における病害虫防除に当たっての遵守事項」
・病害虫に強い作物を栽培し、病害虫の発生しにくい環境を つくり、害虫の捕殺などの物理的防除の活用等により、農 薬使用を削減する。
・農薬が飛散しない剤形や散布方法を使い、飛散しにくい気候条件で散布する。
・事前に周辺住民に農薬の散布日時や使用農薬などを時間的余裕をもって広く知らせる。
・近辺に化学物質に敏感な人が居住していることを把握している場合には、十分配慮する。(公園なども同様)
・近隣に学校や通学路がある場合、散布時間に配慮し、学校や保護者に広く知らせる。
近くで農薬が使われる時、どうすれば良いでしょう?
・使っている人あるいは散布を依頼した人に事情を聞くか、中止を申し入れる。
・市町村の担当部署と相談する。相談にのってくれない場合は県の担当部署と相談する。
・にらめっこの編集室や反農薬東京グループと相談する。(反農薬東京グループの了承を得ております)。ホームページ の「メール・フォーム」から連絡できます。ホームページ は「反農薬東京グループ」を検索語としてインターネット で調べると分かります。
わたなべかずお:福島県生まれ。新潟大学卒。浜松医科大学勤務(脳研究と教育に従事)医学博士、各務原ワークショップ主宰(毎月第4木曜日13:00〜渡部宅(各務原市蘇原東栄町)主に健康と環境に関することの勉強会)参加希望者はbandaikw@sala.dti.ne.jpまで