講演会レポートー② 11月17日
可児市文化創造センター 主催:未来のいのちをまもる会
猛烈な力・エネルギーを発揮させた原子力。人間は核実験をして何を思ったか。「この力を平和的に使えば人類に幸せをもたらすのではないか。」私もそう思いました。それで、工学部に進み自分の人生を原子力に賭けよう、そう思ったんです。さて、スライドの新聞の記事を読んでみましょう。これは1954年7月2日、毎日新聞です。
「さて原子力を潜在電力として考えると、まったくとてつもないものである。しかも石炭などの資源が今後、地球上から次第に少なくなっていくことを思えば、このエネルギーの持つ威力は人類生存に不可欠なものといってよいだろう。
(中略)電気料は2000分の1になる。※1
(中略)原子力発電には火力発電のように大工場を必要としない。大煙突も貯炭場もいらない。また毎日石炭を運びこみ、たきがらを捨てるための鉄道もトラックもいらない。密閉式のガスタービンが利用できれば、ボイラーの水すらいらないのである。もちろん山間へき地を選ぶこともない。ビルディングの地下室が発電所ということになる」※2 ※1…日本の電気料は世界一高い。 ※2…後半の文章は全くの嘘!
でも、そういう気持ちをかけて始まったのが原子力政策なんですね。原子力にかけた幻の夢です。
チェルノブイリ事故の時、たくさんのマスコミが僕の所に取材に来ました。まさか、「8100キロも離れている日本に放射能は飛んでこない」と言い切った。ですが、追跡調査をした結果、空気中に流せば全地球を汚染する(観測データ参照)ことが分かり、私自身の創造力のなさに愕然としました。この地図では一度放射能をばらまいてしまうと全地球に影響が出ることが判明しています。
私は40年間細心の注意をして放射線の研究を仕事としてきました。ところが、フクシマで事故は起きてしまった。時間は逆戻りはできません。
この日本という国で生きていくしかないのです。
重たい責任は国家、東電、マスコミに。しかし、みなさんにしたって無罪ですか?みなさん、原発は安全だとだまされたからと言って無罪ですか?本当に無罪ですか?
私のやりたいことは2つ。
1つは、子どもを被ばくさせないこと。子どもは感受性が高いので被ばくしやすいですから。2つめに、第一次産業をなんとしても守るべき。
いまフクシマの事故が問われています。戦争の時も同じように問われました。
これは私たち大人が問われていることです。きっと私たちは未来の子どもたちから聞かれるはずです。フクシマの事故が起きて私たち自身がどう生きるべきかを。
小出 浩章(こいでひろあき)
1949年生まれ 東北大学工学部原子核工学科卒、同大学院修了 74年から京大原子炉実験所助教 原子炉の安全性や放射能測定を研究 愛媛県伊方原発祭便、人形峠ウラン残土問題、JOC臨界事故から被害を受ける住民側に立って活動。著書に『隠される原子力核の真実』(創史社)『原発のウソ』(扶桑社新書)など